高知県黒潮町長の大西と申します。
今回、このような貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。また、これまで防災庁設置に向けて積極的な御議論をいただいております先生方を始め関係者の皆様に、現場を預かる者として、また一国民として深く敬意を表するところです。
本町は高知県西部の沿岸部に位置しまして、県内あるいは他県の沿岸自治体と同様に、地震、津波におきまして、歴史上これまで、宝永、安政、昭和を始め、発災その都度被害を被ってまいりました。しかしながら、直近の一定規模の被害となりますと昭和二十一年の昭和南海ということになりまして、現在の本町の状況を語弊を恐れずに申し上げますと、未災地とカテゴライズすることができようかと思います。
したがいまして、発災時の対応や復旧復興については未経験という立場でございますが、御承知のとおり、未曽有の被害となりました東北地方太平洋沖地震から一年後に南海トラフの巨大地震モデル検討会から公表されましたいわゆる当時の新想定におきまして、本町に対し国内最大の三十四・四メートルという最大津波想定高が示され、その後、国、県から大きな支援をいただきながら、今日まで官民一体となって各種防災対策を講じてきたところです。
行政も全力で防災対策を推進し、住民におきましても、行政のみの防災の限界に対する認識をしっかりと持つこと、並びに他者に過度に自らの命を委ねることのないよう、事前の備えと併せて、つまり、そのときそれぞれがしっかりと避難行動が取れる、とにかく命を確保する、それが災害に対する主体性を持つ取組を進めてきたということでございます。
去る四月の衆議院の災害対策特別委員会におきまして、御自身も被災され、後の対応、また復旧復興の陣頭指揮を執ってこられました菅原気仙沼市長も繰り返し訴えておられたように、とにかく直接的な犠牲者を出さないこと、本町が進めてまいりました各種防災施策、対策、活動はほぼここに主眼を置いて進めてきたと言っても過言ではございません。
防災庁の設置に向けた御議論で、スフィア基準などを踏まえ生活環境の抜本的な改善に向けた取組を推進するとされたことは大きな前進であると評価をいたしますが、何よりもまず命を守る取組が進むよう期待をするところです。
その上で、三点意見を申し上げます。
まず、防災立国推進基本方針における防災庁の担う具体的な事務として挙げられております大規模災害に対する事前防災の推進について、今後、地域レベルで具体的なシミュレーションに基づく災害評価を通じて社会や地域の弱部の抽出が進んでこようかと思います。
本町におきましては、せんだって内閣府に医療分野の救急搬送等における弱部分析を実施いただきました。ここでは詳細について申し上げる時間はございませんが、分析による現状及びリソースの不足等の把握というのは非常に有益でございまして、今後、各分野で弱部の洗い出しに取り組む際、積極的な国の関与を期待するところです。
今後、弱部が洗い出されることになりますと、不足するリソースをどうカバーしていくのかということになりますけれども、その際、非常時対応のためのリソースを平時から配置しておくことのこのコストに対する議論、これを避けて通ることができないということになろうかと思います。これを地方の責務においてとされますと、現在の地方財政の状況、少なくとも本町におきましては相当程度限定的な対応にならざるを得ず、弱部の洗い出しにつきましては、分析から、それにしっかりと対応するための国の積極的、強力な財政措置がなくては絵に描いた餅にならざるを得ないと、そのように認識をしています。
加えて、非常時におきましては、平時と違いまして、インフラの寸断や情報収集の遅延、一定リソースの毀損等も覚悟しなければならず、ニーズに的確に、的確かつ迅速に応えるためには、ニーズ総量を上回るリソースの確保が必要である上、災害対応のためのリソースは多岐にわたりまして、防災庁に付与されるとされております勧告権は財政当局に対しても実効力を伴うものでなければならないと思っています。また、各府省庁と連携した災害対応の強化につきましても是非御留意をいただきたいと考えています。
次に、二点目、国民の行動変容を促す普及啓発、防災教育について申し上げます。
二〇一二年に本町に示されましたいわゆる浸水想定が余りにも衝撃的であったため、想定公表直後から町内では、逃げても無駄、あるいは逃げないといった声が聞かれるようになり、発言が本心のものかどうかは別としまして、そのような雰囲気が町内に蔓延しそうになったことは事実でございます。ゆえに、本町が最初に掲げた目標は、避難放棄者を出さないとせざるを得ませんでした。以降、住民対応を土台に各種防災対策を推進してまいりました。
資料、表紙おめくりいただきまして、一ページを御覧ください。このグラフは、想定公表時からずっと防災活動履歴を整理してきたものでございます。
現在ではもう学校や地区の防災活動というのは完全に自走しておりまして、全ての活動を現在把握できているわけではございませんが、行政が把握できているだけでもこのようなボリュームとなっております。本町の津波防災が一定評価をいただけるとしたら、この地域とのコミュニケーションのボリュームと、その対話の推進エンジンとなりました行政の、行政全職員による防災地域担当制であろうかと思っています。
このように、官民一体となって防災を進めてきた結果、避難を放棄する声は聞かれなくなりまして、地域での自主的な防災活動の充実など、一定主体性の醸成は進みまして、想定公表当時と比較した場合、いわゆる行動変容の一例と言ってよろしいかと思います。
振り返ってみますと、この地域との対話を始めた頃は、私も含めまして職員も災害事象や防災に対して十分な知識を持っていたとは到底言えず、それでも試行錯誤で進めてきたというのが実際のところでございます。語弊を恐れずに申し上げますと、正しい知識や理論はもちろん重要でございますけれども、それを発信するだけで国民の主体性の醸成や行動変容が起こるとは到底思えません。したがいまして、補完要因が必ず必要でございます。
本町における主体性の醸成の要因として、幾つか考えられようかと思いますが、まず本町では、県の強力な財政支援を基に避難インフラの整備を進めてまいりました。主なものを申し上げますと、一時避難場所につきましては約百五十か所、これ町内でございます。避難道は約二百五十本、避難タワーは六基、これら設置箇所や構造を含めて全て地域とのワークショップを繰り返しながら官民一体で整備を進めてまいりました。その後、世帯別の状況把握のために戸別避難カルテというものを策定させていただきましたが、こちらにつきましても相当程度住民の皆様の御参加をいただき、このグラフで分かるように、相当のボリュームでコミュニケーションを図ってきたということになってございます。
このように、自分たちが整備計画策定に参画した、実際にその避難インフラの整備が目に付き始めますと、過程と結果が結び付く、あるいは防災対策が少しずつ前に進んでいることの実感を持っていただけた、こういったことも一つ大きな要因であろうかと思います。これらは本町のような小規模自治体であればこその手法だと思っていまして、大規模な自治体でこれがそのまま実施可能とは思いませんけれども、申し上げたように、単なる防災情報や、こうあるべきだというべき論の発信による啓発だけでは、その効果は限定的であると考えています。
総合的、戦略的なコミュニケーションデザインの検討がうたわれていますように、国民の行動変容を促すに至るには相当程度の工夫と労力が必要でございます。そう考えますと、いわゆる防災教育、これは非常に高い優位性があると思われます。
本町では、二〇一三年より、現東京大学の片田先生に御参画をいただき、命の教育と称する防災教育を進めてまいりました。
ここでは全てを説明する時間ございませんが、まずこの優位性につきまして、義務教育期間ということで悉皆性が高いということ、それから一定長期間、防災教育について、防災について学ぶことができる。そして、その効果につきましては、座学だけではなく積極的にフィールドワークで地域に入りますと、彼らは地域の防災を動かす力がございます。彼らというのは生徒のことでございます。その効果は、防災のみならず、過疎の進む地域に暮らす住民にとっては本当に心強いものでございますし、生徒にとっては地域から頼られることによる自己有用感、これが更なる取組につながったといった好循環が生み出されました。これはほんの一部の紹介でございます。
また、防災教育を始めた当時中学生だった生徒はもう既に社会に出ておりまして、防災について深い理解を持ちながら、社会でも活動し、そろそろ人の親になろうかという時期を迎えております。
防災は単なる学問ではなくて、防災を日常に溶け込ませ、社会実装されなければならないものです。
資料をおめくりいただきまして、三ページを御覧ください。こちらのイメージ図でございますけれども、この社会実装されなければならない防災資源として最たるものの一つがこの人材であろうかと思っています。
あと十年もいたしますと、黒潮町で防災教育を受けた世代が二十数年という分厚い世代層を構成いたします。国民の行動変容を促すと同時に、人材育成としての防災教育も、単なる知識の詰め込みではなくて、命と向き合い、防災分野に限らず、主体性を持った人間を育成することに主眼が置かれるべきでありまして、決して容易ではございませんけれども、息の長い取組であるからこそ、その効果は絶大でございます。
最後に三点目でございますけれども、御議論いただいております災害対策基本法の改正において、現行でも災害に備えるための措置の適切な組合せがうたわれておりますように、災害大国である以上、十分な備えを講ずることは責務であります。加えて、今回の改正により、災害が国民の安全、国民生活及び国民経済に及ぼす影響について、科学的知見に基づき調査、予測及び評価が進んでまいりますと、弱部が洗い出しをされ、その対応を推進していくということになろうかと思います。
その際、私たちも、基礎自治体として、当然のことながら、これまで以上に創意工夫を重ねながら、労力を掛け、防災対策に邁進してまいりますけれども、私たちのような小規模自治体ではなかなか手の届かない対策もございます。その一つが、例えば広域インフラの整備についてでございます。
資料をもう一枚おめくりいただきまして、四ページを御覧ください。上段にあります図が四国全図でございまして、左下の方に少し黒っぽいところがあろうかと思いますが、ここが黒潮町でございます。
本町は、いわゆる平成の大合併におきまして二町が合併して誕生した町です。当然、旧町単位に役所がございまして、非常時には本庁舎に災害対策本部を立ち上げることとしており、こちらは十年ほど前に浸水区域から浸水区域外に移転をいたしました。もう一つの庁舎は深刻な浸水区域にあることから、五キロほど内陸部に入った森林組合のスペースをお借りして災害対策支部を立ち上げる計画としております。
この災害対策支部を立ち上げなければならないのは、インフラの脆弱性によるものでございます。現在、この旧両町を結ぶ道路としては国道一本しかございませんで、かつ海岸部を通っており、大規模災害時における評価は非常に脆弱であると言わざるを得ない状況です。
現在、下段にあります県の道路啓開計画では、国道は三日で啓開されるということになっておりますけれども、写真御覧になって御理解いただけようかと思いますが、本町といたしましては、その脆弱性によって、もう三日で啓開されるという楽観主義に立った防災計画をしっかりと今後見直しに着手をしていくと、このような予定としております。
現在、災害対策本部を設置する本庁舎から災害対策支部を設置する森林組合までは、距離にして二十六キロ、通常時でございますと車で約三十分程度の時間でございますが、国道寸断ということになりますと、信頼性の高い迂回路は、図、四国全図の図で示させていただいております赤いライン、距離にして三百九十五キロ、車で約五時間半ということになります。この赤いラインのほぼ全ての区間では、一部違いますけれども、ほぼ全てが高規格道路ということになってございます。
このような環境下ではございますけれども、現在、この旧両町を接続する方針で高規格道路の建設が進んでおりまして、災害時の移動や流通を支えていただけるだけでなく、沿岸部走ることから、浸水区域内では道路構造物そのものが避難インフラとしての機能を果たすということに地域住民も大きく期待をしているところです。
もう一度資料四ページにお戻りいただきまして、左下段、黒く塗られた黒潮町域内に緑色のラインが見えようかと思います。こちらは、重機等の不足により啓開作業の開始にめどすら立っていないとされている路線でございます。いわゆる国道から中山間地域につながるフィーダー路線ということでございまして、この啓開のめどすら立っていないというのは、救急搬送機能ばかりでなく、発災後七十二時間、いわゆるゴールデンタイムと言われる人命確保のフェーズにおきましても、人命捜索活動を大きく阻害する要因となってございます。
インフラ、もうこのように脆弱なインフラや人的、機械的リソースの不足というのは、人命確保及びその後の復旧復興を円滑に進めるための事業者の人命確保及びその後の対応に大きく影響を及ぼすことになります。加えて、災害時の即応能力、その後の復旧復興を円滑に進めるための事業者並びに建設作業従事者をどう維持確保していくのか、平時の事業量の確保や仕組みづくりというのは喫緊の課題でございます。
我が国は、災害大国である以上、防災にはひるむことなくインフラや人材に投資をする姿勢が必要でございます。災害大国にありながらその備えを怠りますと、多大な被害を余儀なくされ、中でも人命は取り返しが付きません。
本町はこれまで、国、県の支援を受け、住家の耐震化や避難インフラの整備を進めるとともに、人命に大きく作用する避難、早期避難率の向上、つまり避難行動に寄与する災害に対する住民の主体性を醸成するため、あらゆる施策を講じてまいりました。
次ページ、五ページをよろしくお願いいたします。こちらは、二〇一二年に県から公表されました被害想定でございます。二〇一二年当初。
もう一枚おめくりいただきまして、六ページお願いします。最上段に二〇一二年の想定で津波二千百人とございますが、こちらは死者数の想定、二千百人でございます。先般見直しをされまして、二〇二六年に見直しをされまして、その想定で四百六十人まで圧縮、約八割の減ということでございまして、まだ道半ばではございますけれども、これまでの取組の効果が一定出ていると捉えております。
しかしながら、地震、津波のみならず、それよりはるかに頻度の高い、発生頻度の高い豪雨、土砂災害等、国を俯瞰すると、各種防災インフラの整備はまだまだ加速する必要がございます。全てが防災庁の直接的な所管する事業ではございませんけれども、防災庁に付与されるとされている総合調整権限並びに勧告権などをしっかり有効に運用いただき、防災庁の強大な、強力なリーダーシップの下、国土強靱化の取組と併せて、防災大国、防災立国実現に向け、各種防災施策の推進を強力にお願い、強力に推進していただくことをお願いいたしまして、意見とさせていただきます。
2
下野六太(公明)
防災庁設置法案及び防災庁設置法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
本日は、両案の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。
御出席いただいております参考人は、東京大学生産技術研究所附属災害対策トレーニングセンター副センター長・准教授沼田宗純君、高知県黒潮町長大西勝也君及び特定非営利活動法人全国災害ボランティア支援団体ネットワーク代表理事栗田暢之君でございます。
この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。
皆様から忌憚のない御意見…
この発言のページ
3沼沼田宗純東京大学生産技術研究所附属災害対策トレーニングセンター副センター長・准教授
よろしくお願いいたします。
では、東京大学の沼田宗純から、少し防災庁についてお話しできればと思います。
資料なんですけれども、ちょっと自転車の絵が描いてある資料と、あと、私がずっとやっていて、主に市町村の現場でいろいろ対応する中で、いろんな意見を聞いて、何かしらノウハウとしてまとめようというので、(資料提示)こういう、皆様にもお配りしておりますけれども、こういう黄色い本にいろんなエッセンスを詰め込もうというので、こういうものを作りました。どうにか行政の現場に何かしら私自身が貢献できないかなという思いで、こういう活動をずっとしております。
では、資料…
この発言のページ
4
下野六太(公明)
ありがとうございました。
次に、大西参考人にお願いいたします。大西参考人。
この発言のページ
- (上の発言)
5大大西勝也高知県黒潮町長
高知県黒潮町長の大西と申します。
今回、このような貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。また、これまで防災庁設置に向けて積極的な御議論をいただいております先生方を始め関係者の皆様に、現場を預かる者として、また一国民として深く敬意を表するところです。
本町は高知県西部の沿岸部に位置しまして、県内あるいは他県の沿岸自治体と同様に、地震、津波におきまして、歴史上これまで、宝永、安政、昭和を始め、発災その都度被害を被ってまいりました。しかしながら、直近の一定規模の被害となりますと昭和二十一年の昭和南海ということになりまして、現在の本町の状況を語弊を恐れずに申し上げますと、未災地とカテゴライズすることができようかと思います。
したがいまして、発災時の対応や復旧復興については未経験という立場でございますが、御承知のとおり、未曽有の被害となりました東北地方太平洋沖地震から一年後に南海トラフの巨大地震モデル検討会から公表されましたいわゆる当時の新想定におきまして、本町に対し国内最大の三十四・四メートルという最大津波想定高が示され、その後、国、県から大きな支援をいただきながら、今日まで官民一体となって各種防災対策を講じてきたところです。
行政も全力で防災対策を推進し、住民におきましても、行政のみの防災の限界に対する認識をしっかりと持つこと、並びに他者に過度に自らの命を委ねることのないよう、事前の備えと併せて、つまり、そのときそれぞれがしっかりと避難行動が取れる、とにかく命を確保する、それが災害に対する主体性を持つ取組を進めてきたということでございます。
去る四月の衆議院の災害対策特別委員会におきまして、御自身も被災され、後の対応、また復旧復興の陣頭指揮を執ってこられました菅原気仙沼市長も繰り返し訴えておられたように、とにかく直接的な犠牲者を出さないこと、本町が進めてまいりました各種防災施策、対策、活動はほぼここに主眼を置いて進めてきたと言っても過言ではございません。
防災庁の設置に向けた御議論で、スフィア基準などを踏まえ生活環境の抜本的な改善に向けた取組を推進するとされたことは大きな前進であると評価をいたしますが、何よりもまず命を守る取組が進むよう期待をするところです。
その上で、三点意見を申し上げます。
まず、防災立国推進基本方針における防災庁の担う具体的な事務として挙げられております大規模災害に対する事前防災の推進について、今後、地域レベルで具体的なシミュレーションに基づく災害評価を通じて社会や地域の弱部の抽出が進んでこようかと思います。
本町におきましては、せんだって内閣府に医療分野の救急搬送等における弱部分析を実施いただきました。ここでは詳細について申し上げる時間はございませんが、分析による現状及びリソースの不足等の把握というのは非常に有益でございまして、今後、各分野で弱部の洗い出しに取り組む際、積極的な国の関与を期待するところです。
今後、弱部が洗い出されることになりますと、不足するリソースをどうカバーしていくのかということになりますけれども、その際、非常時対応のためのリソースを平時から配置しておくことのこのコストに対する議論、これを避けて通ることができないということになろうかと思います。これを地方の責務においてとされますと、現在の地方財政の状況、少なくとも本町におきましては相当程度限定的な対応にならざるを得ず、弱部の洗い出しにつきましては、分析から、それにしっかりと対応するための国の積極的、強力な財政措置がなくては絵に描いた餅にならざるを得ないと、そのように認識をしています。
加えて、非常時におきましては、平時と違いまして、インフラの寸断や情報収集の遅延、一定リソースの毀損等も覚悟しなければならず、ニーズに的確に、的確かつ迅速に応えるためには、ニーズ総量を上回るリソースの確保が必要である上、災害対応のためのリソースは多岐にわたりまして、防災庁に付与されるとされております勧告権は財政当局に対しても実効力を伴うものでなければならないと思っています。また、各府省庁と連携した災害対応の強化につきましても是非御留意をいただきたいと考えています。
次に、二点目、国民の行動変容を促す普及啓発、防災教育について申し上げます。
二〇一二年に本町に示されましたいわゆる浸水想定が余りにも衝撃的であったため、想定公表直後から町内では、逃げても無駄、あるいは逃げないといった声が聞かれるようになり、発言が本心のものかどうかは別としまして、そのような雰囲気が町内に蔓延しそうになったことは事実でございます。ゆえに、本町が最初に掲げた目標は、避難放棄者を出さないとせざるを得ませんでした。以降、住民対応を土台に各種防災対策を推進してまいりました。
資料、表紙おめくりいただきまして、一ページを御覧ください。このグラフは、想定公表時からずっと防災活動履歴を整理してきたものでございます。
現在ではもう学校や地区の防災活動というのは完全に自走しておりまして、全ての活動を現在把握できているわけではございませんが、行政が把握できているだけでもこのようなボリュームとなっております。本町の津波防災が一定評価をいただけるとしたら、この地域とのコミュニケーションのボリュームと、その対話の推進エンジンとなりました行政の、行政全職員による防災地域担当制であろうかと思っています。
このように、官民一体となって防災を進めてきた結果、避難を放棄する声は聞かれなくなりまして、地域での自主的な防災活動の充実など、一定主体性の醸成は進みまして、想定公表当時と比較した場合、いわゆる行動変容の一例と言ってよろしいかと思います。
振り返ってみますと、この地域との対話を始めた頃は、私も含めまして職員も災害事象や防災に対して十分な知識を持っていたとは到底言えず、それでも試行錯誤で進めてきたというのが実際のところでございます。語弊を恐れずに申し上げますと、正しい知識や理論はもちろん重要でございますけれども、それを発信するだけで国民の主体性の醸成や行動変容が起こるとは到底思えません。したがいまして、補完要因が必ず必要でございます。
本町における主体性の醸成の要因として、幾つか考えられようかと思いますが、まず本町では、県の強力な財政支援を基に避難インフラの整備を進めてまいりました。主なものを申し上げますと、一時避難場所につきましては約百五十か所、これ町内でございます。避難道は約二百五十本、避難タワーは六基、これら設置箇所や構造を含めて全て地域とのワークショップを繰り返しながら官民一体で整備を進めてまいりました。その後、世帯別の状況把握のために戸別避難カルテというものを策定させていただきましたが、こちらにつきましても相当程度住民の皆様の御参加をいただき、このグラフで分かるように、相当のボリュームでコミュニケーションを図ってきたということになってございます。
このように、自分たちが整備計画策定に参画した、実際にその避難インフラの整備が目に付き始めますと、過程と結果が結び付く、あるいは防災対策が少しずつ前に進んでいることの実感を持っていただけた、こういったことも一つ大きな要因であろうかと思います。これらは本町のような小規模自治体であればこその手法だと思っていまして、大規模な自治体でこれがそのまま実施可能とは思いませんけれども、申し上げたように、単なる防災情報や、こうあるべきだというべき論の発信による啓発だけでは、その効果は限定的であると考えています。
総合的、戦略的なコミュニケーションデザインの検討がうたわれていますように、国民の行動変容を促すに至るには相当程度の工夫と労力が必要でございます。そう考えますと、いわゆる防災教育、これは非常に高い優位性があると思われます。
本町では、二〇一三年より、現東京大学の片田先生に御参画をいただき、命の教育と称する防災教育を進めてまいりました。
ここでは全てを説明する時間ございませんが、まずこの優位性につきまして、義務教育期間ということで悉皆性が高いということ、それから一定長期間、防災教育について、防災について学ぶことができる。そして、その効果につきましては、座学だけではなく積極的にフィールドワークで地域に入りますと、彼らは地域の防災を動かす力がございます。彼らというのは生徒のことでございます。その効果は、防災のみならず、過疎の進む地域に暮らす住民にとっては本当に心強いものでございますし、生徒にとっては地域から頼られることによる自己有用感、これが更なる取組につながったといった好循環が生み出されました。これはほんの一部の紹介でございます。
また、防災教育を始めた当時中学生だった生徒はもう既に社会に出ておりまして、防災について深い理解を持ちながら、社会でも活動し、そろそろ人の親になろうかという時期を迎えております。
防災は単なる学問ではなくて、防災を日常に溶け込ませ、社会実装されなければならないものです。
資料をおめくりいただきまして、三ページを御覧ください。こちらのイメージ図でございますけれども、この社会実装されなければならない防災資源として最たるものの一つがこの人材であろうかと思っています。
あと十年もいたしますと、黒潮町で防災教育を受けた世代が二十数年という分厚い世代層を構成いたします。国民の行動変容を促すと同時に、人材育成としての防災教育も、単なる知識の詰め込みではなくて、命と向き合い、防災分野に限らず、主体性を持った人間を育成することに主眼が置かれるべきでありまして、決して容易ではございませんけれども、息の長い取組であるからこそ、その効果は絶大でございます。
最後に三点目でございますけれども、御議論いただいております災害対策基本法の改正において、現行でも災害に備えるための措置の適切な組合せがうたわれておりますように、災害大国である以上、十分な備えを講ずることは責務であります。加えて、今回の改正により、災害が国民の安全、国民生活及び国民経済に及ぼす影響について、科学的知見に基づき調査、予測及び評価が進んでまいりますと、弱部が洗い出しをされ、その対応を推進していくということになろうかと思います。
その際、私たちも、基礎自治体として、当然のことながら、これまで以上に創意工夫を重ねながら、労力を掛け、防災対策に邁進してまいりますけれども、私たちのような小規模自治体ではなかなか手の届かない対策もございます。その一つが、例えば広域インフラの整備についてでございます。
資料をもう一枚おめくりいただきまして、四ページを御覧ください。上段にあります図が四国全図でございまして、左下の方に少し黒っぽいところがあろうかと思いますが、ここが黒潮町でございます。
本町は、いわゆる平成の大合併におきまして二町が合併して誕生した町です。当然、旧町単位に役所がございまして、非常時には本庁舎に災害対策本部を立ち上げることとしており、こちらは十年ほど前に浸水区域から浸水区域外に移転をいたしました。もう一つの庁舎は深刻な浸水区域にあることから、五キロほど内陸部に入った森林組合のスペースをお借りして災害対策支部を立ち上げる計画としております。
この災害対策支部を立ち上げなければならないのは、インフラの脆弱性によるものでございます。現在、この旧両町を結ぶ道路としては国道一本しかございませんで、かつ海岸部を通っており、大規模災害時における評価は非常に脆弱であると言わざるを得ない状況です。
現在、下段にあります県の道路啓開計画では、国道は三日で啓開されるということになっておりますけれども、写真御覧になって御理解いただけようかと思いますが、本町といたしましては、その脆弱性によって、もう三日で啓開されるという楽観主義に立った防災計画をしっかりと今後見直しに着手をしていくと、このような予定としております。
現在、災害対策本部を設置する本庁舎から災害対策支部を設置する森林組合までは、距離にして二十六キロ、通常時でございますと車で約三十分程度の時間でございますが、国道寸断ということになりますと、信頼性の高い迂回路は、図、四国全図の図で示させていただいております赤いライン、距離にして三百九十五キロ、車で約五時間半ということになります。この赤いラインのほぼ全ての区間では、一部違いますけれども、ほぼ全てが高規格道路ということになってございます。
このような環境下ではございますけれども、現在、この旧両町を接続する方針で高規格道路の建設が進んでおりまして、災害時の移動や流通を支えていただけるだけでなく、沿岸部走ることから、浸水区域内では道路構造物そのものが避難インフラとしての機能を果たすということに地域住民も大きく期待をしているところです。
もう一度資料四ページにお戻りいただきまして、左下段、黒く塗られた黒潮町域内に緑色のラインが見えようかと思います。こちらは、重機等の不足により啓開作業の開始にめどすら立っていないとされている路線でございます。いわゆる国道から中山間地域につながるフィーダー路線ということでございまして、この啓開のめどすら立っていないというのは、救急搬送機能ばかりでなく、発災後七十二時間、いわゆるゴールデンタイムと言われる人命確保のフェーズにおきましても、人命捜索活動を大きく阻害する要因となってございます。
インフラ、もうこのように脆弱なインフラや人的、機械的リソースの不足というのは、人命確保及びその後の復旧復興を円滑に進めるための事業者の人命確保及びその後の対応に大きく影響を及ぼすことになります。加えて、災害時の即応能力、その後の復旧復興を円滑に進めるための事業者並びに建設作業従事者をどう維持確保していくのか、平時の事業量の確保や仕組みづくりというのは喫緊の課題でございます。
我が国は、災害大国である以上、防災にはひるむことなくインフラや人材に投資をする姿勢が必要でございます。災害大国にありながらその備えを怠りますと、多大な被害を余儀なくされ、中でも人命は取り返しが付きません。
本町はこれまで、国、県の支援を受け、住家の耐震化や避難インフラの整備を進めるとともに、人命に大きく作用する避難、早期避難率の向上、つまり避難行動に寄与する災害に対する住民の主体性を醸成するため、あらゆる施策を講じてまいりました。
次ページ、五ページをよろしくお願いいたします。こちらは、二〇一二年に県から公表されました被害想定でございます。二〇一二年当初。
もう一枚おめくりいただきまして、六ページお願いします。最上段に二〇一二年の想定で津波二千百人とございますが、こちらは死者数の想定、二千百人でございます。先般見直しをされまして、二〇二六年に見直しをされまして、その想定で四百六十人まで圧縮、約八割の減ということでございまして、まだ道半ばではございますけれども、これまでの取組の効果が一定出ていると捉えております。
しかしながら、地震、津波のみならず、それよりはるかに頻度の高い、発生頻度の高い豪雨、土砂災害等、国を俯瞰すると、各種防災インフラの整備はまだまだ加速する必要がございます。全てが防災庁の直接的な所管する事業ではございませんけれども、防災庁に付与されるとされている総合調整権限並びに勧告権などをしっかり有効に運用いただき、防災庁の強大な、強力なリーダーシップの下、国土強靱化の取組と併せて、防災大国、防災立国実現に向け、各種防災施策の推進を強力にお願い、強力に推進していただくことをお願いいたしまして、意見とさせていただきます。
6
下野六太(公明)
ありがとうございました。
次に、栗田参考人にお願いいたします。栗田参考人。
この発言のページ
7栗栗田暢之特定非営利活動法人全国災害ボランティア支援団体ネットワーク代表理事
私のような者をお招きいただきまして、大変恐縮です。
全国災害ボランティア支援団体ネットワーク、通称JVOADと呼んでいますが、その代表理事を仰せ付かっています栗田と申します。
その下にNPO法人のレスキューストックヤードとありますが、これは私が母体とする一NPOでございまして、名古屋に拠点を設けて、それこそ阪神大震災以降三十年、この活動に取り組んでまいっております。まあ言ってみれば、レスキューストックヤードが一NPOということで虫の目。ただ、俯瞰をしてしっかりと連携体制を整える、そういう機能が必要じゃないかと。東日本大震災も推計三千団体ぐらいがNPO…
この発言のページ
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下野六太(公明)
栗田参考人、恐縮ですが、大変恐縮なんですけれども、時間の関係もございますので、おまとめください。
この発言のページ