西村智奈美 (中道改革連合)

2026年5月26日・第221回国会 衆議院 本会議 第20号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 52 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 67 発言)

平林晃議員の御質問にお答えします。

まず、議員立法の再提出に至った認識と思いについてお尋ねがありました。

令和五年三月に袴田事件の再審開始が決定されたことを受け、冤罪被害者の適切かつ迅速な救済が急務であるとの思いから、超党派による、えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟が設立され、その場において、関係者からのヒアリングや議員間での真摯な議論を積み重ね、再審開始決定に対する検察官の不服申立てを全面的に禁止し、再審請求審における証拠開示を幅広く認める内容の法律案を策定しました。

その法律案は、議員連盟の主要メンバーが所属する自民党において党内手続を進めることができなかったため、昨年の通常国会で、立憲民主党、国民民主党、れいわ新選組、日本共産党、参政党の野党五会派で共同提出したところでありますが、審議されることなく、高市総理による衆議院解散のため廃案となってしまいました。

その一方で、この議員連盟の法律案策定の取組をきっかけに、政府においては、法制審議会に対し再審法改正に関する諮問がなされ、その答申を踏まえ、また自民党内での議論も踏まえ、今般、政府案が提出されたものと承知しています。

しかし、その政府案は、再審開始決定に対する検察官の不服申立てができる余地を残していること、証拠開示の範囲が現行の実務運用よりも後退するおそれがあること、証拠の目的外使用について一律禁止とした上で罰則を設けていることなど、問題点が多くあり、これをこのまま成立させてしまったら、冤罪被害者の適正かつ迅速な救済は遠のくと言わざるを得ません。

そこで、冤罪被害者の救済に資する真の再審法改正を実現させるために、昨年提出した法律案を一部修正した上で、今国会に再び提出しました。

次に、検察官の不服申立ての禁止についてお尋ねがありました。

現行法上、裁判所の再審開始決定に対しては検察官が不服申立てを行うことができるとされています。そして、法制審の議論においては、検察官は十分に慎重な検討をした上で不服申立てをしているとの御発言もあったと承知しています。

しかし、実際には、裁判所の再審開始決定に対する検察官の不服申立てが一般化し、再審手続が長期化する主たる原因になっている場合があることは、大きな問題として指摘されなければなりません。

例えば袴田事件では、静岡地裁で再審開始決定がされてから検察官の即時抗告を経て確定に至るまで約九年の、また、日野町事件では、大津地裁で再審開始決定がされてから検察官の即時抗告及び特別抗告を経て確定に至るまで約七年半の、それぞれ長い年月を要しており、これが冤罪被害者に多大な労苦と負担をかけたことは想像に難くありません。

このような現状を踏まえれば、冤罪被害者の迅速な救済を図るためにも、裁判所の再審開始決定に対する検察官の不服申立てを例外なく禁止する必要があると考えました。

検察官の不服申立てを禁止することについては、法制審の議論の中でも様々御指摘や御批判があったと承知していますが、第一に、再審請求審において検察官が公益の代表者として追求すべき公益というのは無辜の救済であり、検察官にはこれに資する形での関与が求められ、第二に、検察官が再審開始決定に不服があるとしても、再審公判の中で主張すれば足りるのであり、確定判決の法的安定性を著しく損なうことにはならず、第三に、再審請求審は、通常審と異なり、再審請求人の請求に理由があるか否かを裁判所が主体となって審理する二面構造になっており、検察官は当事者としての地位を有していないため、通常審における上訴制度と必ずしも整合性を取る必要はないといったことを踏まえれば、十分に合理性あるものとして説明可能であると考えます。

次に、開示される証拠の範囲及び裁判所の職権による証拠開示制度の在り方、あわせて、送致書類等目録を開示命令の対象とする理由についてお尋ねがありました。

冤罪被害者の救済のためには、再審請求審における証拠の開示、特に、通常審の段階から存在していたものの裁判所には提出されなかった無罪方向の証拠の開示が極めて重要な役割を果たすものであることは、近年相次ぐ再審無罪事件を見ても明らかであると思います。

そこで、本法律案では、適切かつ迅速な証拠開示を実現するため、まず、再審請求人側に証拠開示の請求権を認めることとしています。その対象となる証拠の範囲について、再審の請求の理由に関連すると認められるとの条件を付しているところですが、これは、再審請求審が再審の請求の理由の有無を裁判所が判断する手続であることを踏まえ、およそ関連しない証拠について除外する趣旨であり、再審請求理由に直接間接に関連すると認められる証拠であれば、広くその対象とし得るものであると考えております。

また、その証拠開示請求の対象は、検察官等が保管する証拠だけに限られず、警察から検察官に事件が送致されるときに作成、送付される証拠物や書類の目録である送致書類等目録にも及ぶこととしています。これは、再審請求人側が再審請求理由について的確に主張を組み立てるためには、開示を求める証拠がその全体像においてどのような位置づけと重大性を有しているかを適切に把握することが重要であると考えたからです。

なお、この趣旨をより徹底させる観点から、本法案の附則で、捜査段階における証拠物や書類の目録の作成及び保存の在り方や、再審請求準備段階における送致書類等目録の開示の在り方について、検討条項を設けております。

さらに、本法律案では、裁判所の職権による証拠開示制度を設けています。そして、その対象となる証拠の範囲については、再審の請求の理由に関連すると認められるとの条件は付していません。これは、裁判所が必要と考える証拠を幅広く開示させたことが再審無罪につながった事件も少なくないことから、このような実務運用を制度化して、冤罪被害者の適正かつ迅速な救済につなげていく必要があると考えたからです。

次に、検察による意図的な証拠隠しを防ぐための措置についてのお尋ねがありました。

本法律案では、証拠開示請求の対象に、警察から検察官に事件が送致されるときに作成、送付される書類や証拠物の目録も含むこととしています。これが開示されることによって、再審請求人側は、仮に検察官が証拠隠しをするようなことがあれば、その目録と照らし合わせることができるようになると考えられます。

ただし、その目録は、警察から検察官へ送致されなかった書類や証拠物は当然記録されてはいないので、全てをカバーするものではありません。

そこで、本法律案では、附則第二条において、政府に対し、この法律の施行後三年を目途として、捜査段階における書類及び証拠物の目録の作成及び保存の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて必要な法制上の措置その他の措置を講ずるよう求めています。この検討を経て、適切な目録の作成及び保存が実現することとなれば、検察官による証拠隠しはできなくなるものと考えます。(拍手)

〔議長退席、副議長着席〕

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