司隆史 (公明党)

2026年7月10日・第221回国会 参議院 本会議 第27号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 8 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 39 発言)

公明党の司隆史です。

会派を代表し、情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律及び情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律案に賛成、個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案に反対の立場から討論をいたします。

まず申し上げますが、デジタル技術の急速な進展に伴い、個人情報を含むデータ利活用に対する需要が高まっており、AI活用にも資する円滑なデータ連携を促進する必要性があるということは十分に理解し、また賛同するものです。

しかし、デジタル技術は国民一人一人の幸福と安心のために活用されるものであり、技術の進歩のために個人の権利利益が犠牲になってはなりません。私たちが目指すべきは、データ利活用か個人情報保護かの二者択一ではなく、国民の信頼を礎として、その両立を実現するデジタル社会であります。

その上で、個人情報の適切な保護を図るという観点から、今般の個人情報保護法改正案には看過できない問題があるということがこれまでの国会審議の中で明らかとなりました。それが、統計作成等の特例に基づく個人データの第三者提供によって、民間企業、行政機関、個人事業主の全てが本人の同意なしに氏名や病歴等を含む要配慮個人情報の取得が可能となるということです。

この特例が引き起こす問題を踏まえ、以下、反対の理由を三点述べます。

第一に、人権、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴等、本来最も守られるべき要配慮個人情報が、漏えいや不適正利用等によって本人の知らないところで拡散し、社会生活において回復困難な不利益をもたらすおそれがあるにもかかわらず、十分なガバナンス体制が構築されるような制度設計になっていないことです。

政府は、安全管理措置義務が課されるので問題ない、答弁をしておりますが、行政機関であっても、これまで数々の漏えい事案が発生をしています。中小企業や個人事業主も含め、安全管理措置義務をどうやって徹底させることができるのでしょうか。個人情報保護委員会が事前に審査をしたり確認をするわけでもなく、その実施は当事者に委ねられている中で、実効性が担保される根拠は示されておりません。これでは、入口を広げておきながら出口規制は機能しない、極めて脆弱な制度と言わざるを得ません。

第二に、次世代医療基盤法との関係がきちんと整理されていないことです。

医療情報は、患者が医師や医療機関を信頼をして提供をする極めて機微な情報であり、その利活用については、個人情報保護法の特別法である次世代医療基盤法において、国が認定した事業者が医療情報から氏名等を削除、加工するなど、厳格な仕組みが整備されてきました。それは、自分の情報は適切に守られるという患者一人一人の安心と信頼を何よりも大切にしながら、丁寧かつ慎重に築き上げられてきた制度だからであります。

それにもかかわらず、今回の統計特例に基づいて、本人の同意なく氏名や病歴等を含む要配慮個人情報の第三者提供が可能となるという、より簡単な方法が併存することとなれば、現行制度と不整合が生じ、医療現場に混乱を生じさせ、さらには医師と患者の信頼関係をも損ねることになりかねません。

この点について、六月十九日、参考人として委員会に出席した京都大学の黒田知宏教授も、統計特例を設けることで現行制度よりも確実に安全性は下がる、次世代医療基盤法との平仄も取れない、何よりも、データ提供してくださる国民の皆様や医療機関等の不信感を招きかねない、結果として我が国の医療データ利活用は停滞をし、AI開発等の点でかえって諸外国に大きな後れを取ってしまうことが予想されると警鐘を鳴らしておられます。

さらに、刑法第百三十四条、医師の守秘義務の違法性が阻却されないとの指摘もいまだ解消をされておりません。

今後の医療データの利活用の在り方については、包括的な制度設計や情報連携基盤を含むグランドデザインを取りまとめるべく、今まさに内閣府の検討会において議論されているところです。その結論を待たずに統計特例だけを先行させることは、余りにも拙速と言わざるを得ません。なぜ今、この制度改正を急がなければならないのか。政府からの納得できる答えは最後まで示されませんでした。

第三に、政府が十分な説明責任を果たしていないことです。

統計特例によって要配慮個人情報の第三者提供を可能とするという重大な制度変更がもたらすリスクについて、高市総理は個人情報保護委員会から法律案の閣議決定前に説明を受けていなかったことが明らかとなりました。参議院の委員会においても、その後、総理に説明をしたのか、改めて確認をいたしましたが、説明をしたとの明確な答弁はもらえておりません。総理にさえ懸念を説明しようとしない個人情報保護委員会に、国民に対する説明責任を果たすことができるのでしょうか。

国会での審議を通じて、世論のこの問題に対する関心も大きく高まっています。参議院での審議の中にあっても、関係団体からは緊急の意見書が個人情報保護委員会に提出をされ、到底信頼を得られない、データ利活用に急激なブレーキが掛かるとの強い懸念が示されました。

データ利活用を進めるのであれば、政府は、そのリスクも含めて真正面から説明を尽くすべきです。このまま法律案を成立させれば、データ利活用どころか、これまで築いてきた国の諸制度への国民の信頼そのものを揺るがしかねません。

以上、反対の理由を踏まえ、公明党は立憲民主・無所属及び沖縄の風と共同で、統計特例であっても、現に公開されている要配慮個人情報以外の要配慮個人情報については本人の同意を得ないで第三者に提供することはできないこととする修正案を提出をいたしました。少なくとも、医療情報については利活用のグランドデザインが示されてから進めるべきです。しかし、委員会採決では否決となりました。誠に残念でなりません。

最後に申し上げます。

我が国のAI開発の遅れを取り戻す、その必要性は十分に理解をしております。しかし、病歴や障害、精神疾患の治療歴、不妊治療歴、犯罪被害歴など、要配慮個人情報はその人の人生の尊厳に深く関わる情報であり、一たび漏えいや不適正利用が起これば、就職や結婚など人生の様々な場面に深刻な影響を及ぼしかねません。

障害を抱える方、難病を向き合う方、精神疾患の治療を続ける方、不妊治療に取り組む御夫婦、犯罪被害から立ち直ろうとしている方々を更に苦しめることがあってはなりません。誰もが安心して情報を託すことができる制度でならなければならないのであります。

AIの開発やデータ利活用は、国民の幸福と豊かな暮らしを実現するための手段であり、目的ではありません。人権と個人の尊厳を守ってこそ、国民の信頼が生まれ、データ利活用も着実に進展をいたします。誰一人取り残さず、誰一人傷つけないデジタル社会を築くため、良識の府参議院の賢明なる御判断を心からお願いを申し上げ、私の討論といたします。

御清聴ありがとうございました。(拍手)

前後のやりとり

4の発言を見る

12の発言を見る