それでは、具体的な当てはめについて、立法事実である福井事件における検察官抗告についてお伺いをいたします。
女子中学生が殺害された福井事件では、事件から一年後に逮捕、起訴された冤罪被害者の前川さんは、自白もない、物証もない、犯行目撃証人もいないのに、犯行当日、血のついたトレーナーを着た前川さんを見たという複数の証言が証拠となり、高裁で有罪が確定していました。しかし、その血のついたトレーナーすら発見されていない。前川さんをかくまったという重要証人の証言に基づいて三回も血染めのトレーナーの大々的な捜索をしたのに発見されませんでした。
福井事件の第一審、福井地裁は、前川さんは無罪です。検察官が控訴し、高裁で有罪が確定して、刑期を終えた前川さんは、二〇〇四年、第一次再審請求をし、二〇一一年に再審開始決定、つまり裁判のやり直しが決まりましたが、検察官が抗告して、再審開始決定は取り消されました。その後、第二次再審請求が認められ、昨年、再審無罪が確定しましたが、第一次再審開始決定から再審公判まで十二年もかかっています。
問題なのは、確定審第一審の途中から、検察官が無実の証拠、つまり、犯行当日に血のついたトレーナーを着た前川さんを見たという最重要証言を根本から覆す証拠、犯行日に見たというテレビ番組が実は一週間後だったという捜査報告書を新たに取得したにもかかわらず、従前のうその証拠で立証活動をし、うその証拠で弁護側の立証活動を邪魔し、正しい証拠に基づく裁判所の判断をできなくし、それでもなお下された無罪判決に対して、証拠を隠したまま控訴をし、控訴審でも無罪の証拠を隠し、いわば有罪判決をだまし取ったんです。さらに、前川さんが刑期を終えてからの第一次再審開始決定に対しても、無罪の証拠を隠して抗告をしていたということなのです。
このような検察官の訴訟活動については、再審開始決定においても、無罪判決においても、手続保障に反する、公益の代表者としてあるまじき不正の所為、刑事司法の信頼を揺らがせかねない深刻な事態などと厳しく批判されています。
ところが、五月七日に法務省が法務部会に提出した、令和八年四月、法務省刑事局の「いわゆる福井女子中学生殺人事件における検察当局の対応について」と題する法務省の検証では、第一次再審開始決定に対する異議申立ては当時の判断として相応の理由があったとしています。無罪の証拠を隠しながら抗告することは相応ではなかったということを私は認めるべきだと思いますよ。
公益の代表者とは何かということなのです。特に、再審請求審において、検察は、当事者ではなく、公益の代表者としてのみ振る舞うことを求められております。だとすれば、一般論として、無罪の証拠を持ったまま抗告することは、公益の代表者として許されますか。
17佐佐藤淳法務省刑事局長
お答えいたします。
再審開始決定が取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠がある場合、これが例外の部分ですけれども、この意味は、不服申立てにより再審開始決定等が取り消される蓋然性が高いことを裏づける合理的な根拠がある場合を意味するものでございまして、再審開始決定に重大な事実誤認や重大な法令適用の誤り、重大な手続違反等があると考える場合であって、なおかつ、これらの誤り等に関する主張が上級審において受け入れられて、再審開始決定が覆ることになる蓋然性が高い場合がこれに当たると考えられるところでございます。
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稲田朋美(自民)
今までも、法制審の議論などを見ますと、検察の委員は、抗告は十分に慎重に検討して抗告していたとおっしゃっていたのですが、具体的にどこが変わるのかを明確にしていただきたいんです。
今おっしゃった重大な事実誤認、重大な法適用違反、重大な手続違反であり、なおかつ、再審開始決定が棄却されると認められる高度な蓋然性がある場合、つまり、これは質も量も十分ということでよろしいでしょうか。さらに、この規定は、即時抗告も特別抗告も、両方とも、質も量も十分ということで縛るということでよろしいか。
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19佐佐藤淳法務省刑事局長
お答えいたします。
御指摘の質という意味が、再審開始決定にあると考える誤り等が当該決定の結論に影響を与える程度のことを指すことを意味し、かつ、御指摘の量が、当該誤り等に関する主張が上級審に受け入れられて、当該決定が覆ることとなる蓋然性の程度のことを意味するということであれば、御指摘のとおり、その双方が存在する必要があると考えているところでございます。
また、改正後の刑事訴訟法第四百五十条の二第一項及び第二項につきましては、再審開始決定に対する即時抗告、それから再審開始決定に対する即時抗告を棄却する決定に対する特別抗告、さらには、再審請求棄却決定を取り…
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- (上の発言)
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稲田朋美(自民)
それでは、具体的な当てはめについて、立法事実である福井事件における検察官抗告についてお伺いをいたします。
女子中学生が殺害された福井事件では、事件から一年後に逮捕、起訴された冤罪被害者の前川さんは、自白もない、物証もない、犯行目撃証人もいないのに、犯行当日、血のついたトレーナーを着た前川さんを見たという複数の証言が証拠となり、高裁で有罪が確定していました。しかし、その血のついたトレーナーすら発見されていない。前川さんをかくまったという重要証人の証言に基づいて三回も血染めのトレーナーの大々的な捜索をしたのに発見されませんでした。
福井事件の第一審、福井地裁は、前川さんは無罪です。検察官が控訴し、高裁で有罪が確定して、刑期を終えた前川さんは、二〇〇四年、第一次再審請求をし、二〇一一年に再審開始決定、つまり裁判のやり直しが決まりましたが、検察官が抗告して、再審開始決定は取り消されました。その後、第二次再審請求が認められ、昨年、再審無罪が確定しましたが、第一次再審開始決定から再審公判まで十二年もかかっています。
問題なのは、確定審第一審の途中から、検察官が無実の証拠、つまり、犯行当日に血のついたトレーナーを着た前川さんを見たという最重要証言を根本から覆す証拠、犯行日に見たというテレビ番組が実は一週間後だったという捜査報告書を新たに取得したにもかかわらず、従前のうその証拠で立証活動をし、うその証拠で弁護側の立証活動を邪魔し、正しい証拠に基づく裁判所の判断をできなくし、それでもなお下された無罪判決に対して、証拠を隠したまま控訴をし、控訴審でも無罪の証拠を隠し、いわば有罪判決をだまし取ったんです。さらに、前川さんが刑期を終えてからの第一次再審開始決定に対しても、無罪の証拠を隠して抗告をしていたということなのです。
このような検察官の訴訟活動については、再審開始決定においても、無罪判決においても、手続保障に反する、公益の代表者としてあるまじき不正の所為、刑事司法の信頼を揺らがせかねない深刻な事態などと厳しく批判されています。
ところが、五月七日に法務省が法務部会に提出した、令和八年四月、法務省刑事局の「いわゆる福井女子中学生殺人事件における検察当局の対応について」と題する法務省の検証では、第一次再審開始決定に対する異議申立ては当時の判断として相応の理由があったとしています。無罪の証拠を隠しながら抗告することは相応ではなかったということを私は認めるべきだと思いますよ。
公益の代表者とは何かということなのです。特に、再審請求審において、検察は、当事者ではなく、公益の代表者としてのみ振る舞うことを求められております。だとすれば、一般論として、無罪の証拠を持ったまま抗告することは、公益の代表者として許されますか。
21佐佐藤淳法務省刑事局長
お答えいたします。
御質問の中で、無罪の証拠というものが何を指すかということになるかと思うんですけれども、それが無罪を示すものか、あるいは、推認力の程度というのはやはり個別事案に応じて判断されるということになると思うんですけれども、その上で、検察官が、再審請求審におきまして、例えば、犯人のDNA型が再審請求者以外の者と一致することを示すようなもの、はっきりしたものがあるのに、再審請求者が罪を犯していないことを明らかに示すという証拠があるのに、収集、把握したにもかかわらず、これを裁判所に顕出することなく再審開始に反対し、あるいは再審開始決定に対して不服申…
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稲田朋美(自民)
無罪の証拠が何であるかに関わるということなんですけれども、報告書の中で、確定審検察官がこの誤りを適切に是正していれば、そもそも再審請求以前に確定審において原審の無罪判決が確定した可能性も十分考えられるとの指摘を厳粛に受け止めていると言っているんです。
要するに、一審で出していれば無罪になったし、控訴もできなかったと言われているような無罪の証拠なんですから、これを隠したことは、隠して抗告したことは私は相応ではないと思います。
仮に、第一次再審開始決定当時、今回の法律が成立していたとして、検察官の抗告は十分な根拠がある場合に当たりますか。
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23佐佐藤淳法務省刑事局長
十分な根拠の有無といいますのは、再審開始決定が示した再審開始理由との関係で判断することとなると思います。
御指摘の事件の第一次再審請求審におきましては、客観的証拠とその評価が主な争点となりまして、再審開始決定におきましては、当該客観証拠や主要な関係者の供述等を総合的に評価した結果、関係者供述の信用性に疑問が抱かれ、請求人が犯人であると認めるには合理的な疑いが生じたなどと判示されたものでございます。
この点、御指摘の事件の第一次再審請求審の段階におきましては、主要関係者の一人の供述の裏づけとして位置づけられるテレビ番組の放送日に係る捜査報告書につきまし…
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