本日は、貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
日弁連で高齢者・障害者権利支援センター成年後見制度利用促進法対応プロジェクトチームで座長を務めており、さきの法制審議会民法(成年後見等関係)部会におきまして幹事を務めておりました弁護士の根本と申します。
私からは、今後の課題を中心に意見を申し上げさせていただきたいと思います。
今回の改正は、国の第二期成年後見制度利用促進基本計画に基づく成年後見制度見直しの提起及び国連の障害者の権利に関する条約第十二条の求める完全な法的能力の保障の要請による代理、代行決定から意思決定支援への理念の転換の要請を踏まえたものであり、これらは二〇〇〇年から施行された現行制度の実務運用の実情からも求められてきたものであります。
日弁連は、かねてよりその方向性について賛同し、具体的な制度改正の方策について検討を深めてまいりました。今般の改正により、成年後見制度が、本人の意思を十分に踏まえ、適切な時機に適切な範囲と期間で利用することのできる柔軟な制度へと見直されたものと考えております。
具体的には、本人の意思を十分に踏まえ、適切な時機に必要な範囲と期間で利用できる制度に向けて、必要性の原則を採用することにより、包括的代理権等の付与を廃止して補助制度への一元化を図ったこと、必要性がなくなれば終わることができる制度としたこと、これまでの実務において指摘をされてきました課題を解消するために、本人の利益のため特に必要があるという事由を新たに設けて補助人の交代をしやすくしたこと、また、本人の意向を把握するようにしなければならないことを定め、本人の意向尊重義務をより重視することを明らかにし、そのプロセスを明示したことなどが挙げられます。
その上で、今後の課題について大きく三つの視点から申し上げます。
まず第一に、民法等の改正に伴い、関連法制や諸制度の整備が求められるということです。
本改正では、例外的に、事理弁識能力を欠く常況にある者を対象に、必要性がある場合に限り、類型的な取消権を有する特定補助人を付する処分を設けました。この点、部会において審議の最終段階まで導入の是非については意見が分かれたところでありまして、限定的かつ厳格な実務運用及び同枠組みの将来的な規定の要否についても、今後、その運用状況や利用実績などを踏まえた政府における検証が求められるものと思います。
次に、消費者保護法制についてです。
包括的取消権が廃止されたことに伴って、高齢者の脆弱性等につけ込む消費者被害が広がることのないように、消費者保護法制の整備は欠かせません。民法等の改正は、行為能力制限を減縮させるものではありますが、本人意思の尊重を脅かす存在となり得る脆弱性ゆえの本人意思への不当な介入に歯止めをかけていくことと何ら矛盾するものではなく、むしろ、取引の場面で本人の意思決定をゆがめるような、若しくは不当に影響を及ぼすような事業者による勧誘に対しては、消費者保護法制による規制、救済はむしろ強化されるべきことが要請されるものと考えます。
次に、整備法における後見概念の転用についてです。
精神保健福祉法の医療保護入院に係る同意権者や心神喪失者等医療観察法の保護者に後見人等を含める規定などについて、後見制度における事理弁識能力についての類型的、定型的な認定を制度趣旨の異なる他の制度に転用する規定が整備法においてはそのまま残されることとなりました。各制度の改正時において、この転用する規定の廃止を含めた見直しが求められるものと思います。
次に、大きく第二としまして、制度の運用や地域福祉との連携について申し上げます。
地域共生社会実現に向けた成年後見制度を含む総合的な権利支援制度の整備のためには、民法等の改正のみで十分ではなく、意思決定支援に基づく日常的な金銭管理や生活支援を担う新たな地域福祉の仕組みが必要となります。
第二期成年後見制度利用促進基本計画が想定する民法等と社会福祉法の一体的改革として、本国会で改正が見込まれております社会福祉法の一部を改正する法律につきましても、中核機関の法定化、新たな権利擁護の支援策の事業化が図られるところ、これらについて各市町村等において具体的な体制整備が図られるために必要な人材や財源が確保されること及び地域権利擁護の地域連携ネットワークにおいて関係機関、関係団体がそれぞれ期待された役割を果たすための推進体制を設けることが必要だと考えます。
法改正の趣旨を実務において実現していくために、施行に向けた様々な運用体制の整備も重要です。例えば、福祉情報の取得の方法ですとかその内容、若しくは医療情報の取得についても同様ですし、審理における市区町村との連携等について、家事事件手続法の新たな規律を設けたところではありますが、これらの規律が有効に活用されるよう、家庭裁判所や弁護士会、司法書士会、リーガルサポート、社会福祉士会等を含めた各地域の関係機関を挙げて適切に取り組んでいかなければなりません。
法改正との関係で、具体的に更に取組が必要な点について申し上げたいと思います。
今回、補助に一元化されたことに伴いまして、経過規定を含めた制度の周知、広報は欠かせません。
本日午前中の先生方の御審議におかれてもこの点の御指摘はあったところではありますが、引き続き、関係機関若しくは士業団体含め、この周知、広報に努めてまいる必要があるかと思います。
次に、包括的な類型、代理権が廃止されることとの関係です。
特定の法律行為ごとに代理権若しくは同意権、取消権を付与していく仕組みとなりますことから、申立てにおける関係機関における支援の充実も欠かせません。特に、本人の課題の抽出ですとか本人に対する課題のアセスメントを充実させるということなくして、特定の法律行為に関する付与というのはあり得ないからです。
あわせて、三点目として、終われる制度になることとの関係です。
終わるための法制上の要件として、必要性がなくなるということが、今回規律を設けたことになりますけれども、この必要性の始まり若しくは終了における認定のための実務運用の整理ないしその内容に関してのコンセンサスを得ていくということが今後の課題となります。
また、終わることで御本人に対する支援が途切れることがないように、家庭裁判所が適切に判断するための、家事事件手続法に基づく自治体や中核機関との連携も求められますし、また、補助人が御本人支援を適切に御本人のチーム支援に引き継ぐことができるように、補助の制度利用中からチーム支援の拡充、充実が図られることが必要となります。また、実際に終われるようにするための選択肢の整備も求められます。地域福祉や金融包摂の観点からの様々な取組が要請されるところです。
また、交代が認められやすくなるということに伴いまして、市民後見人や法人後見などの充実を図ることも必要です。
後任者の適切な選任のためには、中核機関における受任者調整機能の拡充と、いまだ中核機関が未設置の地域や、若しくは十分に中核機関の機能が果たせていない地域への支援のための人的若しくは財政的支援の措置を講じていくことも欠かせません。
また、本人同意についても、実務の中でどのように本人同意を認定していくのか、本人の意思をどのように家庭裁判所が捉まえていくのかというようなことについても整備が必要です。チーム支援の充実と浸透、また意思尊重義務の実現のために、更なる意思決定支援の取組の継続も欠かせません。
今回の改正では、補助人による年一回の定期報告を法制上定めることとしております。必要性に関する定期的な司法審査が行われることになりますが、この司法審査が実効的に行われ、形骸化することがないようにしなければなりません。
また、補助人がしっかりと御本人の支援を行うことができるように、報酬助成制度の抜本的な見直しや、必要性に応じた柔軟な運用を可能とする家庭裁判所の体制整備も求められます。
任意後見契約に関する法律の改正との関係では、現在、日本公証人連合会において定められているモデル条項の見直しなど、法改正がなされた後にはこれらの見直しの作業にも直ちに着手しなければなりません。
最後に、改正後の理念について少し申し上げたいと思います。
第二期基本計画においては、地域共生社会の実現という目的に向け、本人を中心とした支援、活動における共通基盤となる考え方として権利擁護支援を位置づけた上で、地域連携ネットワークによる権利擁護支援策の一層の充実など成年後見制度利用促進の取組を更に進めていくものとされました。
新たな制度に掲げられるべき基本理念として、地域福祉における権利擁護支援全体の中における成年後見制度を目指すという目標にふさわしいものであることがこの成年後見制度には引き続き求められることになります。
そこで掲げられている理念として、代理、代行決定の廃止の方向性及びあらゆる場面における意思決定支援の仕組みの設置が勧告されていることに鑑みますと、引き続き不断の取組を継続させていくことが必要であると考えます。
自律の保障というのは、意思を本人一人ではなかなか形成できない方も含めて、本人が自分のことは自分で考え、選択して決めていけることができるように、必要な支援を受けて生活することを社会によって保障されなければならないという理念です。ここでは、自己決定の尊重に加えて、それを可能にするための支援付意思決定の保障が含まれ、それにより、本人を中心として、本人の意思をできるだけ反映した生活を実現していくことが自律の保障であると考えられます。
現行制度及び改正の理念とされる自己決定の尊重や残存能力の活用に比べますと、病気や障害の有無にかかわらず、あらゆる人が自分の意思を有していることを前提に社会が支援していくことにより、できるだけ本人の意思を形成、表明して実現していくことを引き続き政策目標とするべきであります。この間の権利擁護の支援の考え方の発展を踏まえ、本人中心の生活をより徹底していこうという取組を進めていく必要があります。
また、地域社会におけるインクルージョンについては、障害のある人が障害のない人と同じように暮らすという両者の区別を前提とした考え方ではなく、様々な困難を抱えている方がお互いの多様性を認め合いながら、支え合って、包摂された社会をつくっていくという考え方に発展してきており、これをノーマライゼーションからインクルーシブな社会へと捉え直した理念として引き続き取り組んでいくことが必要であります。
これらの理念は、自己決定の尊重、残存能力の活用、ノーマライゼーションの理念、本人保護との調和とされた平成十一年の民法改正の制度理念を、現在まで、障害者の人権保障の概念と実践、社会的要請を踏まえて大きく発展させてきたものです。これらの理念は、障害者基本法第三条の理念ですとか、認知症基本法の基本理念でも目指されているところです。
今回の改正は、第二期基本計画の基本的な考え方と目標に基づき、総合的な施策の項目として掲げられています、成年後見制度等の改正に向けた検討と総合的な権利擁護支援策の充実が掲げられていたこれらの見直しを図るものですが、もう一つ重要な視点として設けられていました社会福祉制度における総合的な権利擁護政策の充実が、重要な柱とされていました。
これらの成年後見制度等の改正とともに、総合的な権利擁護政策の充実において、成年後見制度と日常生活自立支援事業との連携の推進及び同事業の実施体制の強化、新たな連携協力体制の構築による生活支援、意思決定支援の検討、都道府県単位での新たな取組の検討については、来年度から予定をされております第三期基本計画での取組で引き続き進められることが期待されます。
第三期計画が閣議決定された後においては、本改正を踏まえた、引き続き、本人にとって必要かつ望ましい支援、保護という、民事基本法制としての成年後見制度のみによって実現されるものではないこと、本人を支える他の制度との連携の上で構築され、具体的に実現されていくものであることを念頭に置きつつ、第三期計画の検討が進められることが望まれます。
今後、御本人、家族、親族、政府、家庭裁判所、各地方自治体、社会福祉協議会、各支援者、専門職団体が連携して、引き続き本人の権利擁護が図られるように取組を進めてまいりたいと存じます。
ありがとうございました。(拍手)
118井井上英孝(維新)
休憩前に引き続き会議を開きます。
午前に引き続き、内閣提出、民法等の一部を改正する法律案及び民法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
本日は、両案審査のため、参考人として、日本司法書士会連合会会長小澤吉徳君、日本弁護士連合会日弁連高齢者・障害者権利支援センター成年後見制度利用促進法対応プロジェクトチーム座長、弁護士根本雄司君、早稲田大学法学学術院教授山野目章夫君、以上三名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙…
この発言のページ
119小小澤吉徳日本司法書士会連合会会長
皆様、こんにちは。日本司法書士会連合会会長の小澤吉徳と申します。
本日は、このような貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。
成年後見制度の改正に関しましては、令和四年六月から公益社団法人商事法務研究会で行われました成年後見制度の在り方に関する研究会に委員として参加させていただき、研究会で報告書がまとめられた後には、法制審議会民法(成年後見等関係)部会の委員として審議に関わってまいりました。
司法書士は、平成十一年の民法改正により禁治産制度が成年後見制度に改正されることとなった際、日本司法書士会連合会及び全国各地の司法書士会が中心となり、制…
この発言のページ
120井井上英孝(維新)
ありがとうございました。
次に、根本参考人にお願いいたします。
この発言のページ
- (上の発言)
121根根本雄司日本弁護士連合会日弁連高齢者・障害者権利支援センター成年後見制度利用促進法対応プロジェクトチーム座長/弁護士
本日は、貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
日弁連で高齢者・障害者権利支援センター成年後見制度利用促進法対応プロジェクトチームで座長を務めており、さきの法制審議会民法(成年後見等関係)部会におきまして幹事を務めておりました弁護士の根本と申します。
私からは、今後の課題を中心に意見を申し上げさせていただきたいと思います。
今回の改正は、国の第二期成年後見制度利用促進基本計画に基づく成年後見制度見直しの提起及び国連の障害者の権利に関する条約第十二条の求める完全な法的能力の保障の要請による代理、代行決定から意思決定支援への理念の転換の要請を踏まえたものであり、これらは二〇〇〇年から施行された現行制度の実務運用の実情からも求められてきたものであります。
日弁連は、かねてよりその方向性について賛同し、具体的な制度改正の方策について検討を深めてまいりました。今般の改正により、成年後見制度が、本人の意思を十分に踏まえ、適切な時機に適切な範囲と期間で利用することのできる柔軟な制度へと見直されたものと考えております。
具体的には、本人の意思を十分に踏まえ、適切な時機に必要な範囲と期間で利用できる制度に向けて、必要性の原則を採用することにより、包括的代理権等の付与を廃止して補助制度への一元化を図ったこと、必要性がなくなれば終わることができる制度としたこと、これまでの実務において指摘をされてきました課題を解消するために、本人の利益のため特に必要があるという事由を新たに設けて補助人の交代をしやすくしたこと、また、本人の意向を把握するようにしなければならないことを定め、本人の意向尊重義務をより重視することを明らかにし、そのプロセスを明示したことなどが挙げられます。
その上で、今後の課題について大きく三つの視点から申し上げます。
まず第一に、民法等の改正に伴い、関連法制や諸制度の整備が求められるということです。
本改正では、例外的に、事理弁識能力を欠く常況にある者を対象に、必要性がある場合に限り、類型的な取消権を有する特定補助人を付する処分を設けました。この点、部会において審議の最終段階まで導入の是非については意見が分かれたところでありまして、限定的かつ厳格な実務運用及び同枠組みの将来的な規定の要否についても、今後、その運用状況や利用実績などを踏まえた政府における検証が求められるものと思います。
次に、消費者保護法制についてです。
包括的取消権が廃止されたことに伴って、高齢者の脆弱性等につけ込む消費者被害が広がることのないように、消費者保護法制の整備は欠かせません。民法等の改正は、行為能力制限を減縮させるものではありますが、本人意思の尊重を脅かす存在となり得る脆弱性ゆえの本人意思への不当な介入に歯止めをかけていくことと何ら矛盾するものではなく、むしろ、取引の場面で本人の意思決定をゆがめるような、若しくは不当に影響を及ぼすような事業者による勧誘に対しては、消費者保護法制による規制、救済はむしろ強化されるべきことが要請されるものと考えます。
次に、整備法における後見概念の転用についてです。
精神保健福祉法の医療保護入院に係る同意権者や心神喪失者等医療観察法の保護者に後見人等を含める規定などについて、後見制度における事理弁識能力についての類型的、定型的な認定を制度趣旨の異なる他の制度に転用する規定が整備法においてはそのまま残されることとなりました。各制度の改正時において、この転用する規定の廃止を含めた見直しが求められるものと思います。
次に、大きく第二としまして、制度の運用や地域福祉との連携について申し上げます。
地域共生社会実現に向けた成年後見制度を含む総合的な権利支援制度の整備のためには、民法等の改正のみで十分ではなく、意思決定支援に基づく日常的な金銭管理や生活支援を担う新たな地域福祉の仕組みが必要となります。
第二期成年後見制度利用促進基本計画が想定する民法等と社会福祉法の一体的改革として、本国会で改正が見込まれております社会福祉法の一部を改正する法律につきましても、中核機関の法定化、新たな権利擁護の支援策の事業化が図られるところ、これらについて各市町村等において具体的な体制整備が図られるために必要な人材や財源が確保されること及び地域権利擁護の地域連携ネットワークにおいて関係機関、関係団体がそれぞれ期待された役割を果たすための推進体制を設けることが必要だと考えます。
法改正の趣旨を実務において実現していくために、施行に向けた様々な運用体制の整備も重要です。例えば、福祉情報の取得の方法ですとかその内容、若しくは医療情報の取得についても同様ですし、審理における市区町村との連携等について、家事事件手続法の新たな規律を設けたところではありますが、これらの規律が有効に活用されるよう、家庭裁判所や弁護士会、司法書士会、リーガルサポート、社会福祉士会等を含めた各地域の関係機関を挙げて適切に取り組んでいかなければなりません。
法改正との関係で、具体的に更に取組が必要な点について申し上げたいと思います。
今回、補助に一元化されたことに伴いまして、経過規定を含めた制度の周知、広報は欠かせません。
本日午前中の先生方の御審議におかれてもこの点の御指摘はあったところではありますが、引き続き、関係機関若しくは士業団体含め、この周知、広報に努めてまいる必要があるかと思います。
次に、包括的な類型、代理権が廃止されることとの関係です。
特定の法律行為ごとに代理権若しくは同意権、取消権を付与していく仕組みとなりますことから、申立てにおける関係機関における支援の充実も欠かせません。特に、本人の課題の抽出ですとか本人に対する課題のアセスメントを充実させるということなくして、特定の法律行為に関する付与というのはあり得ないからです。
あわせて、三点目として、終われる制度になることとの関係です。
終わるための法制上の要件として、必要性がなくなるということが、今回規律を設けたことになりますけれども、この必要性の始まり若しくは終了における認定のための実務運用の整理ないしその内容に関してのコンセンサスを得ていくということが今後の課題となります。
また、終わることで御本人に対する支援が途切れることがないように、家庭裁判所が適切に判断するための、家事事件手続法に基づく自治体や中核機関との連携も求められますし、また、補助人が御本人支援を適切に御本人のチーム支援に引き継ぐことができるように、補助の制度利用中からチーム支援の拡充、充実が図られることが必要となります。また、実際に終われるようにするための選択肢の整備も求められます。地域福祉や金融包摂の観点からの様々な取組が要請されるところです。
また、交代が認められやすくなるということに伴いまして、市民後見人や法人後見などの充実を図ることも必要です。
後任者の適切な選任のためには、中核機関における受任者調整機能の拡充と、いまだ中核機関が未設置の地域や、若しくは十分に中核機関の機能が果たせていない地域への支援のための人的若しくは財政的支援の措置を講じていくことも欠かせません。
また、本人同意についても、実務の中でどのように本人同意を認定していくのか、本人の意思をどのように家庭裁判所が捉まえていくのかというようなことについても整備が必要です。チーム支援の充実と浸透、また意思尊重義務の実現のために、更なる意思決定支援の取組の継続も欠かせません。
今回の改正では、補助人による年一回の定期報告を法制上定めることとしております。必要性に関する定期的な司法審査が行われることになりますが、この司法審査が実効的に行われ、形骸化することがないようにしなければなりません。
また、補助人がしっかりと御本人の支援を行うことができるように、報酬助成制度の抜本的な見直しや、必要性に応じた柔軟な運用を可能とする家庭裁判所の体制整備も求められます。
任意後見契約に関する法律の改正との関係では、現在、日本公証人連合会において定められているモデル条項の見直しなど、法改正がなされた後にはこれらの見直しの作業にも直ちに着手しなければなりません。
最後に、改正後の理念について少し申し上げたいと思います。
第二期基本計画においては、地域共生社会の実現という目的に向け、本人を中心とした支援、活動における共通基盤となる考え方として権利擁護支援を位置づけた上で、地域連携ネットワークによる権利擁護支援策の一層の充実など成年後見制度利用促進の取組を更に進めていくものとされました。
新たな制度に掲げられるべき基本理念として、地域福祉における権利擁護支援全体の中における成年後見制度を目指すという目標にふさわしいものであることがこの成年後見制度には引き続き求められることになります。
そこで掲げられている理念として、代理、代行決定の廃止の方向性及びあらゆる場面における意思決定支援の仕組みの設置が勧告されていることに鑑みますと、引き続き不断の取組を継続させていくことが必要であると考えます。
自律の保障というのは、意思を本人一人ではなかなか形成できない方も含めて、本人が自分のことは自分で考え、選択して決めていけることができるように、必要な支援を受けて生活することを社会によって保障されなければならないという理念です。ここでは、自己決定の尊重に加えて、それを可能にするための支援付意思決定の保障が含まれ、それにより、本人を中心として、本人の意思をできるだけ反映した生活を実現していくことが自律の保障であると考えられます。
現行制度及び改正の理念とされる自己決定の尊重や残存能力の活用に比べますと、病気や障害の有無にかかわらず、あらゆる人が自分の意思を有していることを前提に社会が支援していくことにより、できるだけ本人の意思を形成、表明して実現していくことを引き続き政策目標とするべきであります。この間の権利擁護の支援の考え方の発展を踏まえ、本人中心の生活をより徹底していこうという取組を進めていく必要があります。
また、地域社会におけるインクルージョンについては、障害のある人が障害のない人と同じように暮らすという両者の区別を前提とした考え方ではなく、様々な困難を抱えている方がお互いの多様性を認め合いながら、支え合って、包摂された社会をつくっていくという考え方に発展してきており、これをノーマライゼーションからインクルーシブな社会へと捉え直した理念として引き続き取り組んでいくことが必要であります。
これらの理念は、自己決定の尊重、残存能力の活用、ノーマライゼーションの理念、本人保護との調和とされた平成十一年の民法改正の制度理念を、現在まで、障害者の人権保障の概念と実践、社会的要請を踏まえて大きく発展させてきたものです。これらの理念は、障害者基本法第三条の理念ですとか、認知症基本法の基本理念でも目指されているところです。
今回の改正は、第二期基本計画の基本的な考え方と目標に基づき、総合的な施策の項目として掲げられています、成年後見制度等の改正に向けた検討と総合的な権利擁護支援策の充実が掲げられていたこれらの見直しを図るものですが、もう一つ重要な視点として設けられていました社会福祉制度における総合的な権利擁護政策の充実が、重要な柱とされていました。
これらの成年後見制度等の改正とともに、総合的な権利擁護政策の充実において、成年後見制度と日常生活自立支援事業との連携の推進及び同事業の実施体制の強化、新たな連携協力体制の構築による生活支援、意思決定支援の検討、都道府県単位での新たな取組の検討については、来年度から予定をされております第三期基本計画での取組で引き続き進められることが期待されます。
第三期計画が閣議決定された後においては、本改正を踏まえた、引き続き、本人にとって必要かつ望ましい支援、保護という、民事基本法制としての成年後見制度のみによって実現されるものではないこと、本人を支える他の制度との連携の上で構築され、具体的に実現されていくものであることを念頭に置きつつ、第三期計画の検討が進められることが望まれます。
今後、御本人、家族、親族、政府、家庭裁判所、各地方自治体、社会福祉協議会、各支援者、専門職団体が連携して、引き続き本人の権利擁護が図られるように取組を進めてまいりたいと存じます。
ありがとうございました。(拍手)
122井井上英孝(維新)
ありがとうございました。
次に、山野目参考人にお願いいたします。
この発言のページ
123山山野目章夫早稲田大学法学学術院教授
本日は、意見陳述の機会を与えていただき、誠にありがとうございます。早稲田大学の山野目と申します。
本日の議題であります内閣提出、民法等の一部を改正する法律案は、法制審議会における調査審議を経て、政府において法律案を作成し、御院に提出されたものと承知しております。その調査審議にいささか関わりました際などの経験、知見を踏まえ、この法律案に関する所見を申し述べます。
法制審議会は、法務大臣から受けた二つの諮問、すなわち、諮問第百二十五号及び諮問第百二十六号に基づき調査審議をいたしました。本日の法律案は、これらの諮問に係る調査審議の趣旨を踏まえるものでござい…
この発言のページ
124井井上英孝(維新)
ありがとうございました。
以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
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この発言のページ