大黒宏司一般社団法人日本難病・疾病団体協議会代表理事

2026年4月21日・第221回国会 衆議院 厚生労働委員会 第5号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 9 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 104 発言)

よろしくお願いします。

ただいま御紹介賜りました一般社団法人日本難病・疾病団体協議会代表理事の大黒宏司と申します。

本日はこのような意見陳述の機会をいただきましたことに、心より感謝申し上げます。

資料をおめくりいただいて、二ページ目をお願いいたします。

私ども日本難病・疾病団体協議会は、難病や長期慢性疾患、小児慢性疾患の患者会及び各都道府県を中心に地域で活動する地域難病連から成る、計百五団体、延べ十七万人で構成される全国組織です。私自身も、膠原病という患者の本人です。

私は、社会保障審議会医療保険部会の下に設置された高額療養費制度の在り方に関する専門委員会の委員を務めましたので、本日は、高額療養費制度の見直しについて意見を述べさせていただきます。

資料をおめくりいただいて、三ページ目を御覧ください。

高額療養費制度の見直しについて、二〇二五年十二月二十四日、当会と全国がん患者団体連合会は共同声明を公表いたしました。そこでは、多数回該当の据置きと年間上限の新設により、長期にわたり継続して治療を受ける患者の年間負担軽減を着実に実行する一方で、月ごとの限度額については十分に抑制されていないため、仮に月ごとの限度額を引き上げる場合であっても、治療断念や生活破綻につながることがないよう、更なる抑制を検討すること、また、高額療養費制度は我が国の公的医療保険制度の根幹を成し、大きなリスクに備える重要なセーフティーネットであることから、医療費節減に資するほかの代替手段について、引き続き優先的かつ十分な検討を行うことなどを要望しております。

高額療養費の対象となる水準の医療費の負担を伴う医療においては、たとえ一度の治療であっても、受診を控えることが身体的な危険につながる可能性があります。そのため、治療の断念が生じないよう、制度設計には最大限に慎重さが求められると考えます。

資料をおめくりいただき、四ページ目を御覧ください。

図のとおり、高額療養費は医療費総額の約六・八%にすぎません。本当に高額療養費の急増が医療保険財政を圧迫しているのか、私は疑問に思います。この六・八%の中には重篤な病態にある方々の医療が含まれており、また、保険制度の根幹である重要なセーフティーネット機能があります。そう考えると、今直ちに高額療養費の自己負担上限の引上げを行うことには大きな疑問があります。

資料をおめくりいただいて、五ページ目を御覧ください。

医療費の増加は被保険者の保険料にも影響し、とりわけ現役世代の負担増が深刻化されていると言われます。しかし、高額療養費は、先ほど述べたように医療費総額の六・八%程度にとどまるため、見直しによる医療費抑制効果は限定的です。また、保険料への影響も小さく、今回の見直しによる一人当たりの保険料軽減額は平均で月百二十円程度にとどまるとされています。

その一方で、医療費総額の六・八%程度しかない高額療養費を見直して給付費を減額しようとすれば、患者の自己負担は大きく増え、身体的な危険を伴うおそれがあります。

つまり、高額療養費制度の見直しは、その性格上、得られる効果が小さい一方で、患者にとっては極めて大きなリスクを伴う改革であると言えます。

資料をおめくりいただいて、六ページ目を御覧ください。

政府は、子ども・子育て支援金制度について、医療分野の歳出削減などにより、実質的な負担は生じないと説明しています。そして、その医療分野の歳出削減の一つに、今回の高額療養費制度の見直しが含まれているとの報道もあります。

私たちは、子供、子育て支援の重要性を否定するものではありませんが、けれども、その支え方が患者の自己負担増によって成り立ってよいのでしょうか。

資料をおめくりいただいて、七ページ目を御覧ください。

たとえ間接的であるとしても、高額療養費制度を子育て支援の財源確保のために用いることは、大きな違和感があります。病気のときに十分に支えられない社会で、安心して子供を産み育てることができるのでしょうか。子供も患者もどちらも守る社会こそが、本当の意味で持続可能な社会だと考えます。

子供、子育て支援も、高額療養費制度も、いずれも極めて重要な制度です。重要な制度だからこそ、抱き合わせるようなことはせず、それぞれを正面から真剣に議論すべきだと思います。このままでは、本来直ちに改革を要するとは言えない高額療養費制度が、子ども・子育て支援金制度の財源確保のために見直されてしまうのではないかとの懸念を抱かざるを得ません。

資料をおめくりいただいて、八ページ目を御覧ください。

高額療養費制度の議論の中では、医療の高度化による医療費の増大も取り上げられています。この点について、希少疾患患者の立場から心配する声が上がっています。一言で申し上げれば、高額療養費制度の見直しに関する議論が、希少疾患治療薬の開発に影響を及ぼすのではないかという懸念です。

希少疾患は約七千種類もあるとされ、その九五%にはいまだ治療法が存在しないと言われています。ようやく、ここ数年、一部の疾患で新薬が生まれ始めた段階です。

資料をおめくりいただいて、九ページ目を御覧ください。

希少疾患のための薬剤は、これまで救えなかった命を救うものであり、医療の進歩を象徴する成果でもあります。ようやく開発された高額な新薬が唯一の選択肢となる希少疾患の患者にとって、医療の受益は選べるものではなく、病気になった人が必要に迫られて利用するものです。

医薬品の価格や保険制度の在り方は、社会全体で支えるべき課題であり、必要な医療を受けている患者に負担を押しつけることで解決してよい問題ではありません。誰もが経済的理由で治療を諦めることのない社会、そして、治療法を待つ人々の希望が失われることのない社会を求めます。

専門委員会でも紹介しました特定非営利活動法人アスリッドが行った高額療養費に関するアンケートでは、仮に自己負担額の上限が引き上げられた場合には、治療面への影響のほかにも、生活費を切り詰める必要が出てくる、また、進学、結婚、出産などを諦めるしかない、治療制限の結果、仕事を辞めざるを得なくなる、医療費が高額になると自分は生きていない方がいいのではという思いになる、あるいは、親の治療費の増加が子供の養育費や教育費も切り詰めざるを得ないというところでも影響するという御意見を頂戴しております。

難病にかかわらず、多くの疾患は予防が難しく、突然発症します。高額療養費制度は誰にとっても不可欠なセーフティーネットであり、その自己負担上限の引上げは、国民の安心と安全を支える社会の基盤を揺るがしかねません。たとえ一度の治療であっても、受診を控えることが身体的な危険につながる可能性があります。どうか、治療の断念が生じることのないよう、更なる慎重な制度設計をお願い申し上げます。

以上で発言を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

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