藤井敏明日本大学大学院法務研究科教授

2025年3月26日・第217回国会 衆議院 法務委員会 第5号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 37 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 110 発言)

詳しく御説明するには三十分ほどいただければと思うんですが、そういうわけにもいきませんので端的に言いますと、罪証隠滅のおそれの判断はいろいろな要素で裁判官は従来から考えてきたんですが、その中の一つとして、罪証隠滅行為をしたら裁判所の終局的な判断が誤ったものになる可能性ということを考えます。その可能性の検討が、従来、可能性があるかどうか分からないから、分からないときはあるものとするという、ちょっと平たく言うと、そういうことが裁判官がよく参照する文献に書かれておりまして、それによって、実務はこういうものだという頭で処理してきた時代があったと思います。さすがに現在はそこの部分の表現は変えられておりますけれども。

では、具体的にどういう場合に罪証隠滅のおそれが残るかということで、一つだけ例を挙げますと、捜査の段階で、参考人を検察官が取り調べて、供述調書を作っている。供述調書ができていれば、では、罪証隠滅のおそれがなくなるかというところの事例として、その文献では、いや、公判廷で供述を覆すかもしれないから、罪証隠滅のおそれがあるんだ、そういう例が挙げられているんですけれども。あるいは公判廷で証人尋問しても、更にもう一回証人尋問するかもしれないから、罪証隠滅のおそれが残るとまで書いている場所もあります。

ところが、日本の刑事訴訟法では、検察官が捜査段階で供述調書を作っているときには、供述した人が法廷で証人となって違った意見を言っても、元の供述の方が信用ができれば、その元の供述調書が証拠として使えるという、かなり検察官の作成した調書についての高い証拠能力が認められております。

したがって、罪証隠滅行為、働きかけをして、公判廷で、仮に罪証隠滅に向けて偽証したとしても、裁判所はどっちが信用できるかを判断するわけですし、そもそも、被告人が保釈されて、その人に働きかけようとしても、それは保釈の条件として禁じられておりますから。もう接触しただけで保釈は取り消されるし、元々冤罪と主張しているというか、実際にそうだとしても、そうじゃないとしても、そういう行為が発覚すれば、保釈は取り消されるし、もう有罪も決まってしまいます。しかも、更に進めば、偽証まで教唆したということで、より重い罪になる可能性もある。

だから、そんな簡単に罪証隠滅行為はしづらいし、仮にあったとしたって、裁判所が、その法廷で出てきた新たな証言を元の供述と比べて、どっちが信用できるか判断するわけですから、裁判所の終局的な判断が間違えるおそれがあるというのは、裁判所がそういう判断がちゃんとできないという前提の議論になるわけで、そんなことまで心配して、罪証隠滅のおそれがあるという判断を裁判官自身がするのは私はおかしいのではないか、そういうふうに考えている次第でございます。

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