郷野智砂子一般社団法人全国消費者団体連絡会事務局長

2026年6月19日・第221回国会 参議院 デジタル社会の形成及び人工知能の活用等に関する特別委員会 第6号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 21 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 123 発言)

御質問ありがとうございます。

まず一点目、課徴金制度についてお答えいたします。

課徴金制度の見直しが重要である理由としましては、単に違反を罰するだけではなくて、不適切な個人情報の取扱いによって得られる経済的利益を剥奪して違反を抑止する制度的基盤であるためです。まず、個人情報の漏えい事故の多くは、必ずしも意図的な悪質行為ではなく、安全管理措置への投資不足やコスト回避といった構造的な問題から起こっていると考えます。企業にとっては、本来行うべきセキュリティー対策や人員配置を行わないことでコスト削減という利得が発生している場合があり、その意味では経済合理性に基づく意思決定の結果とも言えます。このため、課徴金制度の趣旨は、本来、悪質性の有無ではなく、違反によって不当に得た利益を回収することに置かれるべきと考えております。

しかし、改正案では、課徴金の対象が悪質な事業者に限定され、安全管理措置義務違反などは対象外とされています。この結果、実際に多くの漏えいの原因となっている領域が制度の射程から外れてしまうという問題が考えられます。その場合、企業側から見ると、安全対策にコストを掛けるよりも、万一漏えいが起きても課徴金の対象にならないのであれば、安全対策にコストを掛けるよりも、失礼いたしました、であれば、結果としてリスクを許容する誘因が生じかねず、制度としての抑止効果が十分に働かないと考えます。したがって、課徴金制度は、悪質性ではなく、不当利得の有無を基準として、安全管理措置義務違反も含めて対象とすることで企業のインセンティブ構造そのものを是正し、未然防止を促す仕組みとして機能させることが不可欠です。

もう一点、済みません、差止め請求制度についてですが、差止め請求制度が必要である理由は、個人情報の問題が持つ特性として、被害の未然防止が極めて重要であり、事後的な救済では対応し切れないという点にあります。

まず、個人情報は、一度漏えい、不適切利用がなされると、インターネット等を通じて瞬時に拡散し、回収や利用停止が実質的に不可能になる場合が多いという性質がございます。その結果、被害は長期にわたり継続し、成り済ましや不利益なプロファイリングなど、二次的、三次的な被害を引き起こすおそれもあります。

また、こうした被害は必ずしも明確な金銭的損害として表れるものばかりではなく、プライバシー侵害や不安、不信といった形で表れることも多く、事後的な損害賠償によって十分に救済できないという課題がございます。さらに、個人情報の不適正利用は特定の個人に限定されるのではなく、不特定多数の消費者に広がる構造を持っています。

しかし、個々の消費者が自ら違法利用を認識して事業者に対して利用停止を求めたり訴訟を提起したりすることは、時間、費用、情報面の制約から現実的ではありません。このため、差止め請求制度は必要だと考えております。

以上です。

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