原田大二郎 (公明党)

2026年5月29日・第221回国会 参議院 本会議 第17号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 35 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 69 発言)

公明党の原田大二郎です。

私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案に対し、反対の立場で討論を行います。

まず、本法律案には評価すべき内容が含まれていることを申し上げます。後期高齢者医療制度において、金融所得により公平に反映させる見直しは、負担能力に応じた制度設計という観点から重要です。また、妊娠、出産に対する支援の強化、子育て世帯の保険料負担軽減についても、公明党が全力で取り組んできたものであり、少子化が進む我が国において意義ある施策です。

しかし、どれほど有意義な項目が含まれていたとしても、本法案には看過できない重大な問題があります。それは、高額療養費制度の見直しをめぐり、患者の命と生活に直結する負担増が、十分な実態把握も、十分な影響検証も、十分な当事者参加もないまま進められようとしていることです。大変残念でなりません。

高額療養費制度は、単なる医療を要する経費を調整する中で決まっていく仕組みでしょうか。そうではありません。がん、難病、慢性疾患など、重い病気と闘う方々が、経済的理由によって治療を諦めることがないように支える命綱ともいうべき医療の中核的制度であります。

病気になるということは、医療費だけが増えるということではありません。治療のために仕事を休まざるを得ない、収入が減る、通院交通費が掛かる、副作用で働き方を変えざるを得ない、子供の教育費や家族の生活費と治療費の間で苦しむ。患者さんと御家族は、こうした現実の中で、日々、命と暮らしを守るために必死で闘っておられます。

その患者さんたちに対して国が示すべきものは、不安ではありません。治療を続けてよいのだという安心であり、病気になっても人生を諦めなくてよいという希望であります。にもかかわらず、今回の高額療養費制度の見直しは、その希望を揺るがしかねない内容になっております。

第一の問題は、制度見直しのプロセスが余りにも不十分であったことです。

政府は、専門委員会で丁寧に議論をしたと説明をしてきました。しかし、制度の核心である具体的な自己負担額の引上げ額が示されたのは、専門委員会の最終回の十二月二十五日でした。この日は大臣折衝を終えた翌日、すなわち今年度予算案の閣議決定の前日でした。これでは、患者団体や当事者が十分に検討し、意見を述べ、制度設計に反映させる時間など最初からなかったとしか言えません。これで意見を聞いたというのは詭弁です。決定事項を示しただけではないですか。

全国がん患者団体連合会副理事長の桜井なおみ参考人は、専門委員会での議論について全く納得できないと述べられました。また、政府資料についても、負担減となる一部のケースを取り出した議論に偏り、がん治療による収入の変動、子供の有無、生活実態が十分に考慮されていないと訴えられました。これは、治療と生活の現場からの極めて重い警鐘です。

第二の問題は、令和八年度と令和九年度の二段階の見直しを政府がパッケージとして既定路線化していることです。

令和九年度については、まだ予算編成も予算審議も行われていません。本来であれば、令和八年度の見直しによって患者の受診行動、家計、治療継続にどのような影響が出るのかを精緻に検証し、その結果を踏まえて次の段階に進むのかどうかを判断すべきであります。

ところが、政府は、二年間を一体として評価する、パッケージであると繰り返して答弁しております。これは国会軽視であり、財政民主主義に反します。影響を検証する前に結論を固定し、患者負担の増加を将来年度分まで既成事実化するものではありませんか。

政府は、制度を不断に見直していくと言います。しかし、見直し全体の本格的な評価には、令和十年七月までの数字を整理する必要があるとも説明をしております。そうであるならば、令和九年八月の第二段階の見直しの前に十分な検証結果を反映することは困難です。検証すると言いながら、その検証が次の負担増の判断に間に合わないのであれば、患者を守る実効性などありません。

第三の問題は、年々、年間上限額の設定をセーフティーネットと説明しながら、実際には、当面償還払いであり、患者の月々の支払を直ちに軽減する仕組みになっていないことです。

患者さんにとって切実なのは、今月の治療費が払えるのか、来月も治療を続けられるのか、生活費を削らずに済むのかという現実であります。一年以上後に払い戻される仕組みを十分な救済策であるかのように説明をすることは、患者の生活実感から余りにも遠いと言わざるを得ません。

第四の問題は、一部保険外療養の創設に当たり、市販薬で対応できない患者にまで特別料金の負担を強いる可能性を否定しないことです。

公明党は、政府が制度創設の前提としている医療用医薬品の給付を受ける患者とOTC医薬品で対応している患者との公平性について、妊婦がOTC薬を服用できない場合を取り上げ、特別の負担を求めるべきではない、ではないと主張しました。

しかし、政府は、なぜ市販薬を使えない妊婦に別途の料金を求めることが公平なのか全く答えることができないまま、四度の質疑を経てようやく、例示した場合に限り、負担を求めない形で整理するとしました。しかし、これは法改正の前提が条文に反映されていません。本来なら法案を出し直すべき瑕疵であると申し上げます。

また、七十歳未満の患者における、いわゆる二万一千円の壁も残されたままです。複数の医療機関にかかる患者の場合、一つ一つの自己負担が二万一千円未満であれば合算の対象にならず、合計すれば大きな負担であっても、高額療養費制度の救済を十分に受けられません。負担の実際、実態は、医療機関ごとではなく、患者の家計全体で見るべきであります。

さらに、保険者が変わった場合に多数回該当のカウントがリセットされる問題も残されています。闘病中に仕事を変えざるを得ず、加入する保険を変更せざるを得ない方もおられます。病気と生活の二重の困難を抱える方への支援を今こそ行うべきではないでしょうか。

これらの問題を是正するため、公明党は立憲民主党とともに修正案を提出いたしました。高額療養費制度が国民の生命と生活を守る上で欠くことのできない中核的役割を果たす制度であることを明確にし、患者団体を始めとする当事者の意見を制度設計に実質的に反映させ、負担増の影響を精緻に検証し、必要な見直しを行うための修正でありました。しかし、この修正案は委員会において否決されました。患者さんと御家族の切実な不安に応えるための修正であっただけに、誠に残念でなりません。

政府に申し上げたい。

社会保障制度の持続可能性は重要です。しかし、制度の持続可能性とは、患者が治療を続けられる持続可能性でなければなりません。家族の暮らしが守られる持続可能性でなければなりません。病気になっても希望を失わずに生きていける社会の持続可能性でなければなりません。

がんや難病と闘う患者さんが求めていることは、ただ、治療を続けたい、家族とともに暮らしたい、子供の将来を守りたい、仕事や社会とのつながりを保ちたい。その当たり前の願いを政治が支えなくてどうするのですか。

私は、医師として多くのがん患者さんを診てきました。つらい告知を乗り越え、治療に希望を見出し、御家族とともに必死で前に進もうとする患者さんの姿を見てきました。そういう方々を守れる国こそ、真に強く豊かな国なのではないでしょうか。

患者の命と生活を守る高額療養費制度の見直し、一部保険外療養の創設の二点については、これほど重大な問題点を抱えたままの本法案を私たちは賛成することはできません。

がんや難病と闘う患者さん、そして支える御家族の治療への希望を失わせ、生活を破綻させるようなことがあってはならない。その一点において、公明党は本法案に反対します。それが、生命、生活、生存を最大に尊重する人間主義の政党、公明党の考えです。

以上、健康保険法等の一部を改正する法律案に対する私の反対討論といたします。

御清聴ありがとうございました。(拍手)

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