下野六太 (公明党)

2026年5月29日・第221回国会 参議院 本会議 第17号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 13 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 69 発言)

公明党の下野六太です。

私は、会派を代表して、ただいま議題となりました学校教育法等の一部を改正する法律案について質問いたします。

初めに、教育の意義について申し上げます。

国家百年の計は教育にありと言われます。なぜ教育がそれほど重要なのか。それは、国の未来を決めるのが人だからです。私は、本当に強い国とは、国民一人一人が夢や希望を持ち、幸福を実感できる国だと考えています。

経済や安全保障など、制度を整えることは重要です。しかし、幸福そのものは誰かから与えられるものではありません。自ら目標を定め、努力し、達成する、その積み重ねの中にこそ幸福があるのではないでしょうか。学校はその土台を育む場所であるべきです。

私は中学校の保健体育教師時代、子供たちに本物の達成感を味わわせたいと考え、最も苦手意識を持つ子が多かった水泳指導に挑みました。五年間の研究と実践を積み重ねた結果、特別支援学級の子供たちを含め、教えている学年の子供たち全員がクロールで千メートルを泳げるようになりました。さらに、翌年には平泳ぎで八百メートル、そして三年目には全員がバタフライにも挑戦し、個人メドレーを泳ぎ切るまでになりました。

水泳学習の最後の感想文には、次は数学を頑張りたい、苦手だと思って諦めていたことにも挑戦したいと、自ら次の目標を書く子供たちの姿がありました。私はそのとき、教育とは、できなかったことができるようになる喜びを通して、子供たちの可能性を引き出す営みなのだと学びました。

子供が自ら目標を定め、挑戦し、努力する、その力こそが自立の基礎です。学校は、分かった、できたという成功体験を積み重ね、自分自身の可能性を信じられる場所でなければなりません。

その意味で、教科書は単なる教材ではなく、子供たちの学びと成長を支える極めて重要な基盤です。本法律案は、教科書にデジタルという新たな形態を導入する大きな転換点となります。しかし、教科書の形が変わっても、全ての子供に質の高い学びを保障するという教育の本質は、決して変わってはなりません。

そこで、以下、質問いたします。

我が国の義務教育では、国公私立を問わず、教科書の無償給与が行われています。この根拠となる義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律が成立したのは昭和三十七年のことです。翌年三月の参議院本会議において、公明会の柏原ヤス議員は、部分的にしか行われていなかった義務教育における教科書の無償給与について完全実施を求めました。

これに対し、当時の池田勇人内閣総理大臣は、義務教育の教科書を全て無償とする考えを明らかにしました。小学校一年生から中学校三年生までの教科書無償給与について、内閣総理大臣が政府全体の方針として言明したのはこれが初めてとされます。以来、今日まで続く義務教育の教科書無償給与制度は我が国の教育の根幹を成しており、先人たちの功績に身の引き締まる思いがいたします。

本法律案が成立すれば、新たにデジタルな形態の教科書が認められます。このデジタルな形態の教科書についても、これまでと同様、当然に義務教育における無償給与が保障されることを文部科学大臣に確認したいと思います。

教科書の定価は、文部科学省告示で定める定価認可基準に基づき、教科書の種目別、学年別に定められた最高額の範囲内で文部科学大臣が認可しています。他方で、義務教育の教科書については、国がその費用を負担することから、国が認可し、支払う価格の範囲内で教科書が製作されるということになります。

本法律案により認められるデジタルな形態の教科書については、音声読み上げ機能などのアクセシビリティーへの対応やクラウド管理などが必要となるため、紙の教科書に比べて製作コストが高くなることも予想されます。物価高や少子化により教科書発行者の経営が厳しくなっている中でも質の高いデジタルな形態を含む教科書を製作するため、適正な価格設定が求められます。

デジタルな形態の教科書を製作するための必要なコストが適切に反映される形で教科書価格が設定されるべきと考えますが、文部科学大臣の見解を伺います。

デジタルな形態の教科書の使用については、視力の低下や姿勢の悪化など、子供たちの健康面への影響を懸念する声が上がっています。政府の調査によれば、小中学生について、裸眼視力が一・〇未満の割合は増加傾向にあるほか、総運動時間は減少傾向にあります。また、平日一日当たりのインターネットの利用時間も、小学生で平均約四時間、中学生で平均約五時間半と長時間に及んでおり、健康面への影響やデジタル端末との付き合い方について考えていく必要があります。

デジタルな形態の教科書の使用により、学校でのデジタル端末の使用時間は延びるでしょう。子供たちのデジタル漬けが懸念される中、デジタル端末の利用について生活時間全体で考える必要性も指摘されています。また、全国学力・学習状況調査によれば、スマートフォンの使用時間が一定程度を超えるとスコアが低下するなど、学力への影響も示唆されています。

デジタルな形態の教科書の導入が子供たちの健康やデジタル端末の使用時間に与える影響について、どのように認識していますか。また、学校と学校外を合わせた子供のデジタル端末の適切な使用時間と、それを踏まえた学校におけるデジタル端末の使用時間やその管理について、文部科学大臣の見解を伺います。

教育のデジタル化が進む今だからこそ、私は改めて体験活動の重要性を強調したいと思います。

自然体験や生活体験、文化芸術体験などが豊富な子供は、自己肯定感や探求心、自立的行動習慣が高い傾向にあることが示されています。また、外で過ごす時間が近視傾向や肥満の抑制につながる可能性も指摘されています。

デジタルの良さを教育に生かすことは重要です。しかし同時に、リアルな体験を通して、人と関わり、体を使い、五感で学ぶ価値は、むしろこれからの時代にこそ高まるのではないでしょうか。

教育のデジタル化が進む中で、体験活動はより重要性を増していくと考えます。文部科学大臣の所見と体験活動充実に向けた今後の取組について伺います。

デジタルな形態の教科書の使用について懸念されることの一つに、子供たちの学びの保障、継続があります。

デジタルな形態の教科書は、基本的に使用権の付与という形での提供が想定されており、通信環境がない場合や使用可能期間が過ぎてしまった場合はアクセスすることができません。使用が学校や自宅の通信環境に左右されるほか、転校後や卒業後の学びの振り返りにも制限が生じます。

文部科学省は、こうした事態に備え、デジタル部分についてはダウンロード機能や印刷機能の付与も考えているとのことです。しかし、小学校等においてデジタル端末は貸与が主流であり、ダウンロードしても児童生徒の手元に残るのか疑問です。印刷についても、プリンターや紙などが必要であり、デジタル部分を全て印刷することなどは現実的ではありません。また、デジタルな形態の教科書のメリットとして挙げられる動画や音声は印刷できません。

ダウンロード機能や印刷機能の付与にとどまらない、子供たちの学びの保障、継続のための方策について、文部科学大臣に伺います。

本法律案が成立すれば、教科書にデジタルという新たな扉が開かれます。しかし、教科書がどのような形になろうとも、子供たち一人一人の可能性を引き出し、質の高い学びを保障するという教育の使命は変わりません。

我が党は、義務教育における教科書無償給与の理念を守りながら、全ての子供たちの学びが保障される教育環境の実現にこれからも全力で取り組むことをお誓い申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

〔国務大臣松本洋平君登壇、拍手〕

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