香川県弁護士会の田岡です。
私は、平成二十八年改正刑訴法に基づき設置されました刑事手続協議会幹事会の幹事を務めました。また、法制審議会刑事法(再審関係)部会の幹事を務めました。その立場から発言を申し上げたいと思います。
香川県では、財田川事件、榎井村事件という二つの冤罪事件が起きました。冤罪は、無実の人の自由や生命まで奪いかねない悲惨な事態です。それだけでなく、真犯人を捕り逃がすという意味においては二重の不正義であって、犯罪被害者をも苦しめることになりかねません。このような冤罪があってはなりません。冤罪があれば確実、迅速に救済されなければならない、これがこの再審法改正の出発点であったはずです。
政府は、この閣法が通れば、確実な救済と再審手続の円滑、迅速化が実現すると言っています。本当でしょうか。閣法は、証拠開示については制度を設けない運用上の措置とし、任意の開示は検察官の裁量に委ねるとするものです。検察官抗告については、例外を認め、例外事由の判断は検察官の判断に委ねる行為規範とし、裁判所の判断事項とはしないというものです。どちらも検察官の裁量に委ねることになってしまいます。他方で、証拠一覧表の制度は設けない、目的外使用は弊害の有無にかかわらず全ての証拠を一律に禁止するというものであり、かえって確実な救済を妨げかねない内容を含んでいます。これでは、確実、迅速な救済を実現することはできません。
閣法は不十分です。なぜこのような不十分な改正案になったのか。それは、立法事実の認識が踏まえられていないからだと思われます。
政府は、改正の理由をこう説明しています。再審手続に長期間を要している事例がある、その原因は、証拠開示と検察官抗告に原因があると指摘がなされているというふうに書かれています。あくまで指摘がなされているです。政府、法務省は、証拠開示や検察官抗告の運用に問題があったとは認識をしておりません。
ここに引用しております袴田事件再審無罪判決では、証拠の捏造があったと認定されています。福井事件の再審開始決定では、検察官が証拠を提出しなかった行為は、公益の代表者としての検察官としてあるまじき、不誠実で罪深い不正の所為と認定されています。再審無罪判決では、この誤りを適切に是正していれば、そもそも再審請求審以前に確定審段階で無罪が確定していた可能性も十分に考えられる、ここまで指摘されているのに法務省はまだ認めていないんです。このように、認識が不十分であるから改正が不十分なものにとどまっているんではないでしょうか。政府に任せることはできません。やはり、国会において修正がなされるべきだと考えます。
次のページですが、修正点の一点目が証拠開示です。
再審請求には無罪を言い渡すべき明らかな新証拠が必要だとされています。しかし、過去の冤罪事件を見れば、その新証拠は、ほとんどの場合、検察官の手元にあります。この検察官の手元にある証拠を開示させなければ、そもそも無罪の人が無実を明らかにすることができません。
袴田事件では、五点の衣類のカラー写真やネガフィルムが開示されました。福井事件では、「夜のヒットスタジオ」の、歌番組の放映日に関する捜査報告書が開示されました。これが開示されなければ、再審開始決定、そして無罪になることはあり得ませんでした。証拠開示こそが再審の生命線です。
確かに、成瀬さんがおっしゃられたとおり、閣法の四百四十五条の二は証拠提出命令という制度を設けることとはしています。しかし、これは証拠開示ではありません。裁判所が裁判の判断のために必要な証拠を裁判所に提出させる手続であります。証拠開示というのは、再審請求人に対して、その主張に役立てるために証拠を見せる、開示するという制度です。
現実には、裁判所に、裁判所が提出されても、裁判官はその証拠の意味が分からないといったことが少なくありません。例えば、袴田事件では、この五点の衣類やカラー写真やネガフィルム、これ裁判官が見ても意味が分かりませんが、支援者の方がこれを見て、長期間みそに漬かっていたのであればこのような赤みが残ることはあり得ないとして、みそ漬け実験を思い付きました。また、布川事件では、取調べの録音テープを本人が聞いたところ、これは編集されているということを見破りました。このように、再審請求人本人や弁護人に開示されて初めて無実を明らかにすることにつながるんです。確実な救済のためには、再審請求人の主張の準備のための証拠の開示が不可欠です。
政府は、裁判所提出型とするのが再審請求審の構造と整合的だと言っています。しかし、検察官は再審請求手続の重要な関与者でありまして、事実取調べの請求権や抗告権といった権限を有しています。権限はあるのに証拠開示の義務はないというのはおかしな話です。また、任意の開示であればできるというふうに言っています。任意であれば開示できるのに、法律上制度として開示することはできないといったのもおかしな説明だと思います。
また、先ほど申しましたとおり、裁判所提出型でも弁護人は閲覧、謄写できるんだから、結果的に弁護人の手元に来ればいいじゃないかと言われますが、この裁判所に対する証拠提出命令というのは、裁判所が裁判のために必要な証拠に限定されるわけです。
例えば、五点の衣類のカラー写真やネガフィルム、これ裁判所としては必ずしも必要でないかもしれません。しかし、これを支援者が見ることによってみそ漬け実験を思い立ち、そしてそれが無罪につながるわけです。布川事件の録音テープを裁判所が聞いても分からないけれども、支援者、本人が見ることによって、これは編集されたということに気が付くわけです。このように、裁判所が提出させるために必要な証拠と再審請求人が主張の準備のために必要な証拠の範囲は異なります。
そのことは政府も恐らく認めています。なぜなら、任意の運用であれば開示させることができるんだから問題ないんだという形で説明しているからです。しかし、任意ということは、検察官の裁量です。裁判所が勧告をしたとしても、それに対して開示する義務を負うわけではありません。この案は、結局のところ、検察官の裁量に委ねるというものに等しいです。
確かに、衆議院では附則四条二項が追加され、事案に応じ適切に行うとされましたが、先ほど申しましたとおり、政府はこれまでの証拠開示の運用に問題があったとは認めておらず、証拠の捏造や証拠隠しがあったということについて問題があったとも言っておりません。このような認識を前提とすれば、今後適切に行うといったことは期待できないと言わざるを得ないと思います。検察官の裁量ではなく、検察官の義務として定めるべきです。
なお、被害者の方から、証拠開示が広がると、証拠によって被害者の名誉やプライバシーが侵害されるおそれがあるのではないかという指摘がございましたが、これは通常審でも、刑事訴訟法に開示の時期、方法を指定し、条件を付すことができるといった条文がありますので、それを参考にした規定を設ければ、被害者の方の名誉やプライバシーの保護を図ることは可能であるというふうに考えております。
次に、証拠一覧表です。
閣法は、証拠一覧表、つまり検察官の保管する証拠の一覧表の制度は設けないとしています。しかし、再審請求人が証拠の提出命令や証拠開示の請求をするためには、どのような証拠の開示を求めるかという証拠の特定をする必要があります。全部を開示してくれる制度であればいいんですが、こういう証拠を開示してくださいというふうに言う必要があります。しかし、検察官がどんな証拠を持っているかが分かりません。再審請求人や弁護人はもう当てずっぽうで請求するしかありません。その結果、たまたま開示されることもあれば、開示されないこともあります。一部の証拠が開示されても、それが全部かどうかは分かりません。ほかにもあるんじゃないか、いや、ありません、このようなやり取りが繰り返される結果、証拠開示の手続は長期化します。
そのため、通常審では、この反省を踏まえて、平成二十八年に、円滑かつ迅速な証拠開示のために証拠一覧表の制度が設けられました。再審でも同じように証拠一覧表の制度が設けられるべきです。
政府は、いや、常にそういったものが必要なんでしょうかというふうに言います。しかし、証拠一覧表が少なくとも証拠開示の請求に有用である、役に立つということは誰も否定できないと思います。どのような証拠があるか分からないのに特定することはできません。
例えば、福井事件の「夜のヒットスタジオ」の捜査報告書をどうやって特定すれば開示されるのか。これ、特定しようがありません。こういう報告書があると分かるから特定するということができるわけでして、あるかどうかも分からないものを特定しろというのは不可能です。証拠一覧表がなければ、証拠隠しを防ぐことができません。
また、政府は、必要があれば全ての証拠の標目一覧表を提示させることはできるというふうに説明をしています。しかし、標目一覧表といいますのは、これは閣法四百四十五条の三ですけれども、何人にも閲覧させることはできない、つまり再審請求人に見せてはならないというものです。これでは、再審請求人の請求には役に立ちません。通常審では、平成二十八年改正によって、この標目一覧表とは別に証拠一覧表が設けられたわけです。標目一覧表があれば証拠一覧表が要らないということにはなりません。
また、政府は、証拠開示や証拠提出命令の請求は識別可能な程度で足りると言っています。そして、五年後の見直しに先送りしようとしています。しかし、識別可能な程度で足りるというのは通常審でも同じです。再審請求審で証拠一覧表が必要ないという理由にはなりません。
なお、証拠一覧表であっても、被害者の名誉やプライバシーの保護は通常審と同様の規定を設けることによって可能ですので、被害者の名誉やプライバシーは理由にはなりません。
目的外使用の禁止についても意見を申し上げます。
閣法四百四十五条の五と六は、証拠の目的外使用の禁止及び罰則を設けることとしています。しかし、過去の再審請求事件では、支援者による支援や報道機関による報道が重要な役割を果たしました。袴田事件の五点の衣類のみそ漬け実験は、支援者が発案したものでした。録音テープの報道があったからこそ、袴田事件の非人道的な取調べの実態が明らかになりました。支援や報道など正当な目的のための使用が禁止されると、確実な救済が困難になります。
確かに、被害者の名誉やプライバシーの保護の必要性は否定いたしません。ただ、そのためであれば、そのような証拠に限って条件を付すなどすれば足りるわけです。一律に全ての証拠の目的外使用と称して正当な目的のための利用を制限する必要はありません。既に少年審判規則や犯罪被害者保護法などに、特定の証拠に限って使用目的を限定し、条件を付すなどの制度は存在します。これらの制度を参考にすれば足ります。
検察官抗告については……
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伊藤孝江(公明)
刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。
御出席いただいております参考人は、東京大学大学院法学政治学研究科教授成瀬剛さん、香川県弁護士会弁護士田岡直博さん及び一橋大学大学院法学研究科教授・弁護士高平奇恵さんでございます。
この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ御出席をいただき、誠にありがとうございます。
皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
次に、議事の進め…
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3成成瀬剛東京大学大学院法学政治学研究科教授
おはようございます。東京大学の成瀬と申します。
本日は、参考人として意見を述べる機会を与えていただき、大変光栄に存じます。
私は、刑事訴訟法の研究、教育に従事していますが、以前から再審制度に関心を持ち、大学のゼミで再審制度の在り方について学生たちと議論し、その成果の一部を論文として公表してまいりました。
今回の法案に関しては、改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会の構成員として再審制度の立法課題の整理に関与した後、法制審議会刑事法部会の調査審議に幹事として加わりました。
私は、これら二つの会議に参加する中で、再審事件の実情に触れ、再審請求審にお…
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伊藤孝江(公明)
ありがとうございました。
次に、田岡参考人にお願いいたします。田岡参考人。
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- (上の発言)
5田田岡直博香川県弁護士会弁護士
香川県弁護士会の田岡です。
私は、平成二十八年改正刑訴法に基づき設置されました刑事手続協議会幹事会の幹事を務めました。また、法制審議会刑事法(再審関係)部会の幹事を務めました。その立場から発言を申し上げたいと思います。
香川県では、財田川事件、榎井村事件という二つの冤罪事件が起きました。冤罪は、無実の人の自由や生命まで奪いかねない悲惨な事態です。それだけでなく、真犯人を捕り逃がすという意味においては二重の不正義であって、犯罪被害者をも苦しめることになりかねません。このような冤罪があってはなりません。冤罪があれば確実、迅速に救済されなければならない、これがこの再審法改正の出発点であったはずです。
政府は、この閣法が通れば、確実な救済と再審手続の円滑、迅速化が実現すると言っています。本当でしょうか。閣法は、証拠開示については制度を設けない運用上の措置とし、任意の開示は検察官の裁量に委ねるとするものです。検察官抗告については、例外を認め、例外事由の判断は検察官の判断に委ねる行為規範とし、裁判所の判断事項とはしないというものです。どちらも検察官の裁量に委ねることになってしまいます。他方で、証拠一覧表の制度は設けない、目的外使用は弊害の有無にかかわらず全ての証拠を一律に禁止するというものであり、かえって確実な救済を妨げかねない内容を含んでいます。これでは、確実、迅速な救済を実現することはできません。
閣法は不十分です。なぜこのような不十分な改正案になったのか。それは、立法事実の認識が踏まえられていないからだと思われます。
政府は、改正の理由をこう説明しています。再審手続に長期間を要している事例がある、その原因は、証拠開示と検察官抗告に原因があると指摘がなされているというふうに書かれています。あくまで指摘がなされているです。政府、法務省は、証拠開示や検察官抗告の運用に問題があったとは認識をしておりません。
ここに引用しております袴田事件再審無罪判決では、証拠の捏造があったと認定されています。福井事件の再審開始決定では、検察官が証拠を提出しなかった行為は、公益の代表者としての検察官としてあるまじき、不誠実で罪深い不正の所為と認定されています。再審無罪判決では、この誤りを適切に是正していれば、そもそも再審請求審以前に確定審段階で無罪が確定していた可能性も十分に考えられる、ここまで指摘されているのに法務省はまだ認めていないんです。このように、認識が不十分であるから改正が不十分なものにとどまっているんではないでしょうか。政府に任せることはできません。やはり、国会において修正がなされるべきだと考えます。
次のページですが、修正点の一点目が証拠開示です。
再審請求には無罪を言い渡すべき明らかな新証拠が必要だとされています。しかし、過去の冤罪事件を見れば、その新証拠は、ほとんどの場合、検察官の手元にあります。この検察官の手元にある証拠を開示させなければ、そもそも無罪の人が無実を明らかにすることができません。
袴田事件では、五点の衣類のカラー写真やネガフィルムが開示されました。福井事件では、「夜のヒットスタジオ」の、歌番組の放映日に関する捜査報告書が開示されました。これが開示されなければ、再審開始決定、そして無罪になることはあり得ませんでした。証拠開示こそが再審の生命線です。
確かに、成瀬さんがおっしゃられたとおり、閣法の四百四十五条の二は証拠提出命令という制度を設けることとはしています。しかし、これは証拠開示ではありません。裁判所が裁判の判断のために必要な証拠を裁判所に提出させる手続であります。証拠開示というのは、再審請求人に対して、その主張に役立てるために証拠を見せる、開示するという制度です。
現実には、裁判所に、裁判所が提出されても、裁判官はその証拠の意味が分からないといったことが少なくありません。例えば、袴田事件では、この五点の衣類やカラー写真やネガフィルム、これ裁判官が見ても意味が分かりませんが、支援者の方がこれを見て、長期間みそに漬かっていたのであればこのような赤みが残ることはあり得ないとして、みそ漬け実験を思い付きました。また、布川事件では、取調べの録音テープを本人が聞いたところ、これは編集されているということを見破りました。このように、再審請求人本人や弁護人に開示されて初めて無実を明らかにすることにつながるんです。確実な救済のためには、再審請求人の主張の準備のための証拠の開示が不可欠です。
政府は、裁判所提出型とするのが再審請求審の構造と整合的だと言っています。しかし、検察官は再審請求手続の重要な関与者でありまして、事実取調べの請求権や抗告権といった権限を有しています。権限はあるのに証拠開示の義務はないというのはおかしな話です。また、任意の開示であればできるというふうに言っています。任意であれば開示できるのに、法律上制度として開示することはできないといったのもおかしな説明だと思います。
また、先ほど申しましたとおり、裁判所提出型でも弁護人は閲覧、謄写できるんだから、結果的に弁護人の手元に来ればいいじゃないかと言われますが、この裁判所に対する証拠提出命令というのは、裁判所が裁判のために必要な証拠に限定されるわけです。
例えば、五点の衣類のカラー写真やネガフィルム、これ裁判所としては必ずしも必要でないかもしれません。しかし、これを支援者が見ることによってみそ漬け実験を思い立ち、そしてそれが無罪につながるわけです。布川事件の録音テープを裁判所が聞いても分からないけれども、支援者、本人が見ることによって、これは編集されたということに気が付くわけです。このように、裁判所が提出させるために必要な証拠と再審請求人が主張の準備のために必要な証拠の範囲は異なります。
そのことは政府も恐らく認めています。なぜなら、任意の運用であれば開示させることができるんだから問題ないんだという形で説明しているからです。しかし、任意ということは、検察官の裁量です。裁判所が勧告をしたとしても、それに対して開示する義務を負うわけではありません。この案は、結局のところ、検察官の裁量に委ねるというものに等しいです。
確かに、衆議院では附則四条二項が追加され、事案に応じ適切に行うとされましたが、先ほど申しましたとおり、政府はこれまでの証拠開示の運用に問題があったとは認めておらず、証拠の捏造や証拠隠しがあったということについて問題があったとも言っておりません。このような認識を前提とすれば、今後適切に行うといったことは期待できないと言わざるを得ないと思います。検察官の裁量ではなく、検察官の義務として定めるべきです。
なお、被害者の方から、証拠開示が広がると、証拠によって被害者の名誉やプライバシーが侵害されるおそれがあるのではないかという指摘がございましたが、これは通常審でも、刑事訴訟法に開示の時期、方法を指定し、条件を付すことができるといった条文がありますので、それを参考にした規定を設ければ、被害者の方の名誉やプライバシーの保護を図ることは可能であるというふうに考えております。
次に、証拠一覧表です。
閣法は、証拠一覧表、つまり検察官の保管する証拠の一覧表の制度は設けないとしています。しかし、再審請求人が証拠の提出命令や証拠開示の請求をするためには、どのような証拠の開示を求めるかという証拠の特定をする必要があります。全部を開示してくれる制度であればいいんですが、こういう証拠を開示してくださいというふうに言う必要があります。しかし、検察官がどんな証拠を持っているかが分かりません。再審請求人や弁護人はもう当てずっぽうで請求するしかありません。その結果、たまたま開示されることもあれば、開示されないこともあります。一部の証拠が開示されても、それが全部かどうかは分かりません。ほかにもあるんじゃないか、いや、ありません、このようなやり取りが繰り返される結果、証拠開示の手続は長期化します。
そのため、通常審では、この反省を踏まえて、平成二十八年に、円滑かつ迅速な証拠開示のために証拠一覧表の制度が設けられました。再審でも同じように証拠一覧表の制度が設けられるべきです。
政府は、いや、常にそういったものが必要なんでしょうかというふうに言います。しかし、証拠一覧表が少なくとも証拠開示の請求に有用である、役に立つということは誰も否定できないと思います。どのような証拠があるか分からないのに特定することはできません。
例えば、福井事件の「夜のヒットスタジオ」の捜査報告書をどうやって特定すれば開示されるのか。これ、特定しようがありません。こういう報告書があると分かるから特定するということができるわけでして、あるかどうかも分からないものを特定しろというのは不可能です。証拠一覧表がなければ、証拠隠しを防ぐことができません。
また、政府は、必要があれば全ての証拠の標目一覧表を提示させることはできるというふうに説明をしています。しかし、標目一覧表といいますのは、これは閣法四百四十五条の三ですけれども、何人にも閲覧させることはできない、つまり再審請求人に見せてはならないというものです。これでは、再審請求人の請求には役に立ちません。通常審では、平成二十八年改正によって、この標目一覧表とは別に証拠一覧表が設けられたわけです。標目一覧表があれば証拠一覧表が要らないということにはなりません。
また、政府は、証拠開示や証拠提出命令の請求は識別可能な程度で足りると言っています。そして、五年後の見直しに先送りしようとしています。しかし、識別可能な程度で足りるというのは通常審でも同じです。再審請求審で証拠一覧表が必要ないという理由にはなりません。
なお、証拠一覧表であっても、被害者の名誉やプライバシーの保護は通常審と同様の規定を設けることによって可能ですので、被害者の名誉やプライバシーは理由にはなりません。
目的外使用の禁止についても意見を申し上げます。
閣法四百四十五条の五と六は、証拠の目的外使用の禁止及び罰則を設けることとしています。しかし、過去の再審請求事件では、支援者による支援や報道機関による報道が重要な役割を果たしました。袴田事件の五点の衣類のみそ漬け実験は、支援者が発案したものでした。録音テープの報道があったからこそ、袴田事件の非人道的な取調べの実態が明らかになりました。支援や報道など正当な目的のための使用が禁止されると、確実な救済が困難になります。
確かに、被害者の名誉やプライバシーの保護の必要性は否定いたしません。ただ、そのためであれば、そのような証拠に限って条件を付すなどすれば足りるわけです。一律に全ての証拠の目的外使用と称して正当な目的のための利用を制限する必要はありません。既に少年審判規則や犯罪被害者保護法などに、特定の証拠に限って使用目的を限定し、条件を付すなどの制度は存在します。これらの制度を参考にすれば足ります。
検察官抗告については……
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伊藤孝江(公明)
田岡参考人、お時間が過ぎておりますので、御意見の方をおまとめいただきますようお願いいたします。
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7田田岡直博香川県弁護士会弁護士
はい。
検察官抗告については、ここに書きましたとおり、松尾浩也先生も昭和三十七年に不服申立ては禁止すべきとおっしゃっておられますし、ドイツでも既に廃止されておりますので、これを参考に御検討いただければと思います。
その上で、私、平成二十八年改正の刑事手続協議会幹事会の幹事を務めましたけれども、結局、その会議体において速やかに行うこととされた証拠開示の検討は、七年間先送りされた結果、この度の法改正まで十年を要しました。五年後見直しに先送りするのでは、冤罪被害者が生きているうちの救済は実現できません。確実、迅速な救済のために、閣法を修正した上で、真の再審…
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伊藤孝江(公明)
ありがとうございました。
次に、高平参考人にお願いいたします。高平参考人。
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