近藤敦名城大学法学部教授

2026年5月21日・第221回国会 参議院 法務委員会 第10号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 5 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 96 発言)

本日はお招きいただき、ありがとうございます。名城大学の近藤敦と申します。

入管庁の政策懇談会や在留外国人に対する基礎調査、東海地方の十の自治体の多文化共生推進プランの策定に関与しております。

在留手続の手数料については、法律案六十七条二項が諸外国における同種の手数料の額を勘案して定めるとあります。比較対象の選び方を誤ると、日本の実情に即した判断を見失うおそれがあります。

以下では、比較の際に注意すべき五点を述べます。

第一に、アメリカ、イギリス、カナダでは、就労資格の滞在許可が百万円を超えたり何十万円もすることもあります。しかし、これらの国では、法律上又は実務上、その費用は雇用主が負担するのが一般的です。したがって、これらの国を同種の手数料と見るのは適切ではありません。もし比較するのであれば、日本でも企業側の費用負担を前提とする制度に改める必要があります。

そこで、日本との比較対象としては、個人が負担する同種の手数料を見るのが適当です。フランスは三万七千円、イタリアは二万九千円、ドイツは一万六千円、韓国は一万円です。これらと比べると、日本の想定されている一年で三万円、三年で六万円、五年で七万円という水準は割高に感じられます。

なお、EUの非EU市民に関する単一許可指令十条では、手数料は不均衡であってはならず、過度であってはならないと定めています。二〇一五年にイタリアが引き上げた高額手数料については、比較的頻繁に更新を求められることや在留資格を持たない人の送還費用に充てられることなどを理由に、ヨーロッパ司法裁判所がEUの定住指令の社会統合、日本でいうところの共生社会の目的に照らし、不均衡と判断しました。イタリアは、この判決を受けて手数料を引き下げています。したがって、EU定住指令や単一許可指令の加盟国であれば、日本の想定しているような高額手数料は指令違反として違法と評価されるおそれがあります。

第二に、アメリカの三億円の投資家向け永住権は、日本の永住許可とは性質が異なります。日本が将来、巨額投資を行う外国人向けの永住制度を設ける場合には比較対象になりますが、現行の永住許可と同種の手数料と見るのは適切ではありません。

日本の永住許可と比較できる各国の手数料を見ると、アメリカは十万三千円、フランスは三万七千円、イタリアは二万九千円、ドイツは二万四千円、韓国は二万円となっています。これと比べると、日本の新たな二十万円という手数料は相当に高い水準だと言えます。

確かに、イギリスは五十八万二千円、カナダは十七万三千円ですが、イギリスで手数料が高いのは、入管部門の財源の多くをビザ手数料で賄い、外国人受入れ抑制策の一環として行っているためです。実際、イギリスでは昨年、人口流入から人口流出を引いた数が、前年の六十五万人から二十万人へと大きく減少しました。カナダも近年は受入れ抑制策を進めており、昨年、受入れ数を二割減らしています。

今回の日本の急激な値上げも、日本に来たいと考える外国人を減らす可能性があります。例えば、経営・管理の在留資格について資本金要件を五百万円から三千万円に引き上げるなどした結果、申請者が九六%減少したと最近報じられております。このように、外国人に対する負担増のメッセージは敏感な反応が予想されます。

諸外国と比較する際には、似た状況にある国を参考にすることが重要です。まずは、表一に示した国連の人口及び生産年齢人口の将来予測を見てください。

長期的な減少が見込まれていないイギリスやカナダと同じ抑制策を取るよりも、減少が予測されるドイツやイタリアや韓国を参考にするのが日本の状況に適しています。

第三に、一回当たりの手数料の高さだけではなく、永住許可に至るまでの居住期間も考慮する必要があります。

表二のとおり、日本では原則十年の居住が必要であり、これはOECD諸国の中で最長です。したがって、日本では他国より頻繁に在留期間の更新が必要となるため、累積的な手数料負担は一層重くなると予想されます。

第四に、表三にあるように、日本における外国人の国籍取得率はOECD諸国の中でほぼ最低の水準であることから、国籍を取得せず、長期の滞在外国人として頻繁に手数料を払う人の割合が日本では相対的に多いことが予想されます。

第五に、日本で生まれ育った外国人の子供の割合も相対的に高いのが日本の特徴です。

表四に示すように、アメリカやカナダは二世は国民です。イギリスやドイツでは永住者の子は国民ですし、フランスでは二世は大人になれば自動的に、イタリアでは届け出れば国民です。日本と韓国は帰化しなければ外国人のままという状況にあります。この点でも、イギリスやカナダのような高い手数料よりも、韓国のような安い手数料の方が日本には適当と思われます。若しくは、イタリアのように未成年者の手数料を免除することを検討する必要があるように思います。

次に、法律案六十七条三項の、その他特別の理由により手数料を免除する場合、イタリアやドイツや韓国を参考にすると、難民申請者、補完的保護申請者、難民、補完的保護対象者、人道上の在留特別許可者、未成年者等々が考えられます。フランスでは、季節労働者、学生、求職者、家族呼び寄せの受益者などが減額の対象です。

最後に、法律案六十七条二項の、外国人の出入国及び在留の公正な管理に関する費用の額という説明が外国人住民にとって本当に納得できるものなのか、私は疑問に思います。ここでは、特に在留の公正な管理に不可欠な手続保障の観点から申し上げます。

そもそも、公正な管理には適正手続が確保されることが含まれると入管法の基本書にも書かれております。しかし、現状では、高い手数料を払って申請しても、不許可の場合に通知書に具体的な理由は書かれません。抽象的な理由だけでは、申請者はなぜ不許可になったのかが分かりません。これでは適正手続が確保されているとは言えないと思います。ドイツを始め、多くの国では行政手続法が在留手続にも及んでいます。EU諸国では、定住指令十条により、不許可通知には理由を記載し、利用できる救済手続とその期限を示すことが義務付けられています。こうした理由付記と教示の仕組みは、イギリス、アメリカ、韓国でも共通しています。

また、四月に、帰化の居住要件を原則十年に引き上げました。しかし、五年以上と定める国籍法は改正せず、運用で対応したことは、法律による行政という法治主義、あるいは法の支配の尊重の欠如を示しております。「日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」とする憲法十条に反する問題であり、立法府の責任として、国会で審議した上で法律に明記すべきです。

さらに、先ほど触れた経営・管理の在留資格の厳格化についても申し上げます。既に何度も更新し、真面目に経営してきた経営者とその家族が、日本で長く家族生活を築いているにもかかわらず、二年半後に新基準を適用して日本から退出を迫られるのは妥当ではありません。こうした場合には、信頼保護の原則を適用し、日本での生活を維持できるようにすることこそ、法治国家のルールだと考えます。事例は異なりますが、政策転換の影響で滞在許可の更新を拒否された外国人について、法治国家の信頼保護原則を根拠に更新を認めたドイツの判例もあります。

加えて、比較対象とする外国制度の見方も厳密であるべきです。政策懇談会の折りに、韓国が資本金要件を五百万円から三千万円に引き上げていることが有力な根拠として示されていたように感じました。しかし、今回調べたところ、日本の経営・管理に対応する韓国の在留資格は二つあります。韓国の基幹産業である貿易事業の貿易経営は三千万円ですが、貿易以外の企業経営を行う企業投資は一千万円です。そして、在留者数はこの企業投資の方が多いことも分かりました。したがって、比較対象とする外国制度については、何が本当に日本と比較可能なのかを丁寧に見極め、エビデンスに基づく政策決定の精度を高める必要があります。

手数料を引き上げるのであれば、外国人の出入国に適正手続は不要とする考え方を改め、行政手続法の適用除外を見直すべきです。それこそが法治国家における立法府の使命だと考えます。JESTAについても、EUのETIASのように、不許可通知に理由を記載し、不服申立ての保障をし、必要に応じて本人が理由を補充説明しながら大使館でビザ申請を行えるようにするなど、入国の公正な管理に配慮した制度設計にしていただきたいと思います。

以上で私の意見陳述を終わります。御清聴ありがとうございました。

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