田村太郎一般財団法人ダイバーシティ研究所代表理事

2026年5月21日・第221回国会 参議院 法務委員会 第10号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 3 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 96 発言)

よろしくお願いいたします。

私は、一九九五年の阪神・淡路大震災で被災した外国人への支援を機に、外国人を含む多様な人々が排除されることのない社会をつくるために様々な活動に取り組んでまいりました。毎年、三つから五つぐらいの自治体の多文化共生プランの策定やダイバーシティー推進のための計画作りに携わっております。また、全国各地にお邪魔しまして、自治体や経営者の方々の意見を伺い、地域の悩みや要望に触れております。

本日は、限られた時間ではありますが、そうした地域社会の現状から本法律案の改正に当たって意見を述べさせていただきます。

まず、JESTAの創設に関する改正についてであります。

外国人の新規の入国者数が過去最多を更新し、他の主要国でも電子渡航認証制度の導入が進行する中、上陸審査手続の一層の円滑化を図るため、本法律の改正は必要と考えます。

本件は、査証免除者対象であって、観光等を目的とする短期滞在の活動を行おうとするものを対象とし、事前の認証により入国前にスクリーニングを行うものですが、私は、査証を取得して来日する外国人に対しても、別途、デジタル技術の活用を軸にして、外国人への来日前からの情報提供や、居住予定の基礎自治体に対する事前の情報提供の制度を検討してもらいたいと考えています。

外国人を受け入れる基礎自治体では、転入時に就学や健康保険等の手続が対象となるのかどうか、在留資格の種類や家族の年齢、出身国の法制度等を参照しながら確認する必要があります。例えば、子供が来日した際、どの種類の予防接種が終わっているのか分からない、日本語がどの程度理解できるのかが分からないといった課題があります。こうした外国人への具体的な対応は基礎自治体に委ねられており、地域格差が大きいのが現実です。

一部で外国人による制度の濫用、誤用が指摘されていますが、現状では、どの制度が誰に適用されるのか、本人も基礎自治体も十分に把握できておらず、結果として制度から漏れることで、外国人本人の不利益となっている側面もあります。

JESTAの創設理由として、現行法では、不法残留等をした者を日本から退去させるために多大な労力と費用が必要との説明があります。また、JESTA導入時には初期費用が必要ではありますが、導入後は審査手続の簡素化により運用に係る労力やコストは下がると思われます。JESTAの創設及び運用で不要になる労力と費用は、中長期に在留する外国人への対応に充てることを検討してはどうでしょうか。

次に、在留資格の変更許可等に係る手数料に関する改正について意見を述べます。

現在の手数料の法定上限は一九八一年に定められたものであり、国際情勢の変化や物価の変動等を勘案し、上限額そのものを変更することは適切と考えます。

しかし、既に衆議院の法務委員会で他の参考人も述べているとおり、大幅かつ急な変更は、日本に在留する外国人、また外国人と共にある地域社会全体に大きな影響をもたらすものであり、その金額及び変更の時期については慎重に議論すべきであります。

また、手数料の変更は省令に委ねられることになっています。この法改正の話とは異なりますが、上陸あるいは在留許可を受ける際、例えば経営・管理の在留許可要件の変更などについても同様に省令に委ねることになっています。

このような外国人や地域社会に大きな影響を与える事項の変更については、その内容を適正なものとするための検討の枠組み、例えば多様なステークホルダーが参画できるような検討の場を定め、これまで地域で長年にわたって築かれてきた多文化共生社会の価値を損ねることのないよう、十分に留意する必要があります。

なお、手数料は一般財源に算入されるもので、使途は限定されていないと認識しています。住民税や所得税、消費税等を含め、在留外国人が納めている税も相当な額に上ります。また、外国人との共生社会実現は広く地域社会全体に裨益するものであり、その施策に係る費用は一般財源から賄うのが適切であると考えます。今回の上限額の引上げによる手数料収入の増収分も一般財源に入ると認識していますが、受益者負担の考え方から外国人に納付を求めるからには、増収分に見合った外国人の方が裨益する施策の実施が必要であり、また、そうした状況を見えるようにする必要もあります。

一方で、外国人との共生社会実現について、国が責任を持って必要な取組を行うための予算が必要なだけ確保されている状況とは言えません。例えば、外国人への一元的相談窓口を運営する自治体へ入管庁が交付する外国人受入環境整備交付金について、補正予算による拡充などの努力はされておりますが、交付を希望する自治体の増加などを背景に、自治体における不足感は強いものがあります。相談窓口等で雇用されている職員の雇用条件も決して良いものではありません。

二〇二六年一月の総合的対応策でまとめられた取組の実現には相当の予算が必要となります。手数料収入を含む一般財源を基に必要な予算を国として十分に確保していただくことを強く希望いたします。

最後に、これからの外国人との共生社会実現に向けて意見を述べます。

一九九〇年の改正入管法施行により、日系南米人が増えた地域などでは、これまで地域住民や支援団体が手弁当でニーズに応えたり、自治体やその外郭団体である国際交流協会等が独自に相談支援に当たったりしてきました。二〇一八年の外国人労働者受入れの閣議決定、また二〇一九年の在留資格、特定技能の開始、コロナ禍や政情不安などによる国際情勢の変化を背景に在留外国人の増加、多様化はますます加速しており、ボランティアや自治体による独自の支援にはもはや限界があります。

欧米などの主要国では、二〇〇〇年代半ばから言語や社会規範を学ぶプログラムを法に基づいて整備し、外国人が受講することで円滑な定着を促しています。これは、それ以前の多文化政策では言語や社会規範を学ぶ機会が保障されなかったことで社会の分断が進んだことを踏まえ、導入が進んでいるものです。

二〇二六年一月の総合的対応策でも、日本語や制度、ルール等を学習するプログラムの創設が明記されており、現在、政府・与党で内容を検討中であると聞いております。他国の例を参照しつつ、デジタル技術の活用やこれまでの日本における取組の経緯を踏まえ、NPOや国際交流協会、自治体等と連携した、地域の実情に即した包括的なプログラムの創設を期待するところです。

包括的なプログラムの導入に当たっては、受講対象となる個人や世帯のアセスメントが不可欠となります。日本語教育の必要性や制度への理解、登録状況を確認し、世帯ごとに必要な手続を行うことで、外国人の権利を保障し、制度の濫用と指摘されるような事態も防ぐことができます。本改正で議論されている手数料が支払えない事例への減免措置や在留資格要件の厳格化に伴う移行期間における配慮についても、経済的事情に加え、世帯構成員の人数や生活状況等も勘案する必要がありますが、個別に事例を判断するには膨大な事務が必要で、現実的ではありません。

日本語や制度、ルール等を学習するプログラムの創設と並行して、外国人の権利の保護、日本での生活の安定を保障する視点から、外国人世帯のアセスメントを実施することを提案いたします。

そして最後に、この間の法や制度の変更の必要性として取り上げられている外国人増加への不安の背景及び対応策について持論を述べます。

二〇一六年から二〇二五年までの十年間の国籍別、都道府県別、産業別の外国人の変化を、お手元、別紙、横刷りの資料一から三にまとめました。

資料一、国籍別年次推移で明らかなように、二〇二二年以降に在留外国人が急増していること、また、これまでより出身が多様化していることが分かります。資料二では都道府県別で増加率が多い十位と東京、大阪を並べていますが、これまで少なかった地域で外国人が増えている様子が分かります。その原因の一つが外国人の就く産業の変化です。資料三は産業別の外国人労働者の比較と増加率をまとめたものですが、増加率では医療・福祉が八・五九と最も高く、次いで建設業の五・〇二が続きます。工場周辺に集住しがちであった製造業とは異なり、医療・福祉や建設業には地方に少数で点在する傾向が見られます。

これまで外国人を見かけなかった地域で外国人が急に増えることに戸惑いを覚える住民がいることは想像に難くありません。デジタル化の進展もあり、日本語教育や生活相談については、国も責任を持って外国人が全国どこにいてもアクセスできるよう取組を進めると思われます。

一方で、外国人に対する漠然とした不安の解消には、地域住民同士の顔の見える関係性の構築、さらには自分たちの地域の未来をどのような人たちとどのようにデザインしていくのかを考える地域での相互理解の積み重ねが必要となります。政府による地方公共団体への財政支援においては、国際理解や持続可能な地域づくりのための取組にも注力してほしいと考えているところです。

私からの意見陳述は以上となります。御清聴ありがとうございました。

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