下斗米伸夫神奈川大学特別招聘教授/法政大学名誉教授

2026年5月27日・第221回国会 参議院 国際問題に関する調査会 第4号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 62 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 69 発言)

高良先生、どうも御質問ありがとうございました。

一番私がしゃべりたかったと同時に一番難しいところでもございまして、もちろん国境線を破るということは、国際法、国連憲章違反のことです。ただ、それにはそれなりの歴史的理由も実はこれありというのが、添付させていただきました新しい資料を御紹介いたしました。

それを見ると、やっぱりロシア革命の過程で、やっぱりこの地域は何よりも遊牧の民が行ったり来たりしていた地域、そして何よりもコサック部隊というのはその最も自由な民であると同時に最も権力の手先でもあったという二重性のある人たちの世界。これに、先ほど申し上げた石炭開発のために移民がロシアのクールスクからドンバスにやってきたと。

これは、それまで三百五十年ぐらいは誰もそれをどっちがどっちだという、ザポリージャ・コサックという人たちもいて、この人たちはモスクワ派でもあったわけです、正教だったわけですね、カトリック嫌いで、それでモスクワとよりをつくって、それで、これがロシア帝国の基礎になりますので、だから、コサックという人たちの考えている政治思想とか何かというのは大変難しかった。しかし、ロシア語をしゃべる人たちであり、正教徒であり、正教徒の中でも一番、モスクワ派というか、モスクワがローマだという考え方なんですね。

何でモスクワがローマだというと、第一のローマが滅びて、コンスタンチノポリスが、オスマントルコがやって、これも滅びたときにモスクワは第三のローマだと、これはモスクワの自称です、いわゆるちゃんとしたキリスト教の公会議で承認された考えじゃないんですが、にもかかわらず、モスクワ総主教座というのはそういうものだという形で、少なくともこの旧ソ連のマロルーシ、それからベラルーシ、ほかにも黒いルーシとか黄色いルーシとかいろんなルーシが実はあったんですが、そういう形で、全ロッシーヤ、全ロシアと。だから、ロシアという言葉に、我々が理解する今のロシアと、もうちょっと広いロシアと両方あるものですから、その中でドンバスはどっちだといったって、これはもう答えられない問題で。

少なくとも、そういう合意なしにソ連邦が崩壊して、突然、何の鉄格子もない、鉄の国境線のばら線もないようなところで独立、三分割という、スラブ系三民族が別個の法的共同体をつくったと、合意がなかったという。したがって、すぐに、それはもうロシア人たちは民族自決権で、コサックの人たちは特に、一番自分たちが愛国的だと思っている人たちと、今度は、ハプスブルグとかそっちにしか属したことのない西ウクライナのリビウ辺りの人たち、これもまたそれなりのやっぱりヨーロッパとしてのアイデンティティーを持って、この二つがウクライナの中で争っているという、こういう問題なものですから、結局、川で決着付けちゃえというのが一六六七年のその条約だったわけでございまして。

ポーランドというのは、平原の民という、ポーリャというのはロシア語で、スラブ系の言葉でみんな平原という意味です。これに対し、ロシア人というのは、森の民という、森の民というのは何かというと熊さんです。熊というのは蜂蜜を食べる民ということで、森の中で蜂蜜を食べているんだけれども、それで降りてきて、それで開墾して石とか何かをのけて、生産性の低いところに農地をつくって、そして、それこそ熊がやってくるのを防ぎながら水をあれして、そこで育ってきたのがロシア人。だから、ウクライナとロシア人たちの間には有意の差があるわけですね。だから、モスクワというのは、大きな熊というフィンランドの言葉だという説もございます。

ですから、もう一つは、シラカバというのが重要で、シラカバからタールが取れますので、川の民は戦争するとき、船団をつくって騎馬部隊を船団で動かすわけです。そうすると、川と川の間をトロッコで船を持ち上げて、奴隷のように、ボルガの舟歌というのがございますけど、船を持ち上げて、それで騎馬軍団が動いたりするという、こういうのが彼らの文明だったわけで、そういう民との一番のあれが、あそこのドニエプル川の、あるいはドン川のドン・コサック。だから、ドナウ川、ダニューブ川、ドニエストル川、全部ドンなんです。あれ北イランの言葉だということのようです。

だから、イラン問題とロシア問題がなぜかここで衝突しちゃうんで、余り変なことを言うとあれでございますが、要するに、それほど遊牧民たちとの関係と宗教の問題、イスラム、それからユダヤ教徒、そしてその中で正教が、モスクワは自分たちの中心だという、これの境界が線を引くとどこになるのという、したがって、曖昧にしておけばよかったんですけれども、曖昧にできなかったという。

そういうことで、今もう戦場でもはやウクライナの人たちが取り戻す可能性はほぼなくなったというのが、私の理解する、中国もそうであり、アメリカの経済界もそうであり、トランプ政権もそうでありという形で、西ヨーロッパの方が、EUが御案内のとおり抵抗しているわけですが、これも、腐敗問題が出てきてもうお金出せないよなということに世論が動いて、どこかで線を引いて、取りあえず撤兵して戦争を止めようと。停戦がいつ、国境線になるか、これは分かりません、私には。

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