宮本雄二元駐中国特命全権大使/公益財団法人日中友好会館会長

2026年5月13日・第221回国会 参議院 国際問題に関する調査会 第3号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 8 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 69 発言)

台湾問題はですね、一にかかって中国の内政問題です。

私は、一九九〇年代の終わり頃、江沢民さんの時代に北京に勤務いたしておりました。あのときに李登輝さんの総統再選の問題があって、江沢民の中国はミサイルの演習等をやって台湾に対して圧力を掛けました。それに対して、クリントン大統領が空母二隻を台湾海峡を通して、そういうことは許さないぞという実力を誇示したわけですね。

それ以来、中国はアメリカを寄せないという軍事力の増強に邁進するわけですが、あの段階でも、もし台湾が独立を宣言して、私どもは中国でみんなと議論していましたけれども、江沢民さんに、あのときにはもう明々白々中国負けるんですよ、しかしながら、江沢民さんに台湾に武力攻撃を仕掛けないという選択肢はないというみんなの結論なんです。

台湾が独立をやろうとしているときに、何もせずにじっと見ている中国の指導者として歴史に記載されるのか、アメリカと負けても攻撃をした指導者として記載、残されるのかといったときに、みんな後者を選ぶであろうと。すなわち、台湾問題はですね、軍事力がここまで来たから行く、ここまで下がったから落ちるという、そういう性質の問題ではないということです。

したがって、台湾の人も大陸からすると、あれは中国の人なんですね。したがって、同じ人たちに武力攻撃をして、そこで大きな損害が生じるわけですから、そのときは、中国の中で通る大義名分、中国の当局と国民との間で通る大義名分がないと、私は、中国の内政としては、そこで決着をしないだろうというふうに思っております。すなわち、指導者の都合、指導者が歴史に名を残す、そのために今、台湾を攻めるのだというふうに思ったとしても、一般の国民の人たちがそう思っていなければ、それに対しては反対、反発が生じ得るということです。

いやいや、習近平さんはそれだけの力を持っているから、それぐらい押し切ってやれるだろうということですが、しかし、民の声というのは、私は想像以上に中国では効いているというふうに思っていますし、それから、その結果、経済に響いてくるんですね。台湾を侵攻して、それはもういろんなシナリオがありますから、ほとんど中国が傷つかずに台湾を屈服させることができるというシナリオもあるやに聞いておりますけれども、しかし、普通の想定は、お互いに経済に対しては大変な打撃を与えるわけです。

そうすると、中国の今の国内の経済状況で、したがって、国民にどういう影響を及ぼすかということを考えていきますと、そのときには、国民が、自分は台湾の解放なんて望んでもいなかったと、あなた、自分の都合でそういうことをやっていった結果、我々はこの結果、こういうことですかということになると、不満がたまってくるということなんです。ですから、今の中国の社会は、習近平政権が完全にもう隅々まで抑え込んで自分の思うとおりに牛耳られるような、そういう社会の体制ではないというのが私の認識です。

そうすると、国民の反応というのは非常に気になる状況になっていて、国民の反応は、国民が納得する大義名分がない限り、台湾に対する出動ということについては納得しないであろうと、やっぱり内政のロジックが大きいのかなというのが私の現時点の判断であります。

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