今御紹介いただきました只野でございます。
本日は、このような機会を与えていただきまして、感謝申し上げたいと思います。
ただいま長谷部参考人から詳しいお話がございまして、私の方から新しくどのぐらいのことが付け加えられるか、いささか心もとないところでございますが、せっかく機会をいただきましたので、精いっぱい努めさせていただければというふうに思います。
本日のテーマ、緊急事態と参議院の緊急集会と、こういうことでございますが、まず前提として幾つかお話をしておこうかなと思うことがございます。おおむねレジュメに沿ってお話を進めてまいります。
まず、憲法化と書きましたが、これ緊急事態について憲法に規定を設けると、こういう趣旨でございますけれども、そうすることで事態をきちんと位置付けられる、それから統制の仕組みをつくることができると、こういうことも言われるわけでございます。それはそのとおりですが、ただ一方で、通常のルールに例外を設ける、言わば立憲主義のルールに穴を空けると、こういう側面があることも否定し難いところでございます。特に、非常に深刻な事態が長期化すると、しかもそこで万全な対応をしなければいけないということまで考えてまいりますと、相当に強い手段、相当に広い例外を認めることにもなりかねない。その辺りのバランスを考えて議論する必要があるだろうと、こう思うわけでございます。
また、各国の憲法を見渡しますと、この種の条項を設けている憲法はもちろんあるわけですが、全てがそういうわけではございません。正面から緊急事態の規定がない憲法、それでは不備があるのかというと、通常はそう考えないわけでございまして、何がしかの手掛かりになる規定があったり、ある種の法理が前提になったりしていて、そういった事態への対応が取られることになるのであろうと、こう考えるわけでございます。
日本国憲法の場合も、正面からこの緊急事態に関する規定があるわけではない。しかしながら、やはりそれは不備と見るべきではなくて、何がしかの対応は可能だと、こういう視点から憲法を捉え直すべきじゃなかろうかと、今日はそんな視点でお話をしてみようと思います。
その手掛かりが言うまでもなくこの五十四条と、こういうことになるわけでございます。特に今、長谷部参考人からお話がありましたこの四十日プラス三十日という枠ですね、これをどう考えるのかということが一つ問われてくるのかなと、こう思っております。
次に、この五十四条ではどう見ていくのかと、こういうことでございますけれども、今回、事前にいろいろ詳しい資料を準備していただきましたけれど、制定過程でございますね、いわゆる三月二日案と言われているものの中で、日本側が戦前の緊急命令とか緊急財政処分に類するようなことを考えた、GHQ側がそれに反対し、立法で対応できるではないかと、こういったやり取りがあり、結果的に、妥協という書き方はよくないかもしれませんが、合意ができて五十四条が作られたと、こういう経緯があるわけでございまして、やはりある種、緊急事態のようなものは想定しながら条文が作られたと、こういう経緯はひとまず押さえておく必要があるのかなというふうに思っております。
その上で五十四条できたわけでございますが、基本的に参議院の緊急集会に国会の機能を代替させると、これ内閣ではなく国会が対応すると、こういうことかなというふうに思いますし、それから、参議院の場合は継続性とか安定性を備えた議院、ハウスとして設計されておりますから、そうしたハウスにふさわしい役割としてこういったものが参議院に任されたんだろうと、通常こんな説明がされるところかなというふうに思っております。
こうしたことを前提に、少し条文についても考えてまいりたいと、こう思っております。
一つ要件になっておりますのが、衆議院が解散されたときということでございまして、こちらも先ほどお話があったところでございますが、これ衆議院が存在しない場合、これを想定しているわけです。解散の場合は規定があるけれども、任期満了の場合はどうなのかと、こういう問題があるわけでございますが、衆議院が存在しないという条件は同じでございますので、緊急の必要があれば類推解釈が許されるのじゃないかと、私もそう考えておりますし、学説でもおおむね合意ができつつあるんじゃないかなと、こういう印象を持っているところでございます。
さて、それから次に、一番問題になりますのが、解散から四十日以内に総選挙を行い、それから、総選挙から三十日以内に臨時会を召集すると、この規定をどう考えるかということでございます。
今回事前にいただいた資料の中にも過去の代表的な学説引かれておりまして、例えばそこを見ますと、最長七十日間と、こういう表現が出てくるわけでございます。しかし、どこまでこれを厳格に考えるのかという問題はあるような気がいたしまして、といいますのは、この七十日という期間内に総選挙を実施し、さらに国会を召集するということが当然に可能であると、こういう前提でお話をされていたんじゃないか。ただいま国会で議論されていますように、それが広い、全国的な範囲で不可能になるような極めて特殊な、例外的な事態が、しかも数年に一度の選挙というタイミングで起きるということまで想定した議論ではなかったんじゃないかと、そんな印象を持っているところでございます。
まさに、非常に想定外の、例外的な事態が、しかも選挙というタイミングで起きるということは普通なかなか考えませんので、そのことが仮に可能性とあるとしたら、この五十四条を改めてどう見るのかということをもう少し考えてみる必要が出てくるのではないか。従来と申しますか、この憲法改正の議論が出てくるまでは余り十分に主題化されていなかった問題ですね。まあ、これはこれとして新しい問題として見ることはできるだろうというふうに思うわけでございます。
そこに、次に、国に緊急の必要があるときという言葉でございますけれど、臨時会の召集の場合も似たような問題はあるのですが、当然、臨時会の召集などよりもこれは厳しく解さなきゃいけないと、ここも合意があるところかなと思っております。
じゃ、具体的にどういう場合が想定されるかといいますと、大きく二つぐらいに分けてみましたが、一つが治安上の緊急事態が生じた場合、これはいろんなものがあるかと思います。それから、もう一つよく言われますのは、災害等の問題ですね。これ、憲法の制定過程でも日本側はこういうことを言っているわけでございます。こういうものが一つあり、しかしそこには限られないということで、もう一つ付け加えられますのが、憲法や法律を施行する上で特別会の召集を待てないような、こういう場合というのが挙がってまいります。こちら、本来は会期中に処理すべき案件が処理し切れなかった、しかし七十日待てないと、こういう場合のものでして、これは当然七十日以内に処理しなければいけない、こういう案件でございます。二件の先例ございますが、これはいずれもこういうものだったというふうに思っております。
もう一つの方ですね、多分、普通、緊急の場合といいますと、治安上の緊急事態とか災害等、特に最近は災害等を念頭に置かれること多いと思いますが、こういったものが普通考えられるし、そう考えるのはすごく解釈として合理的かなというふうに思っておりますけど、よくよく考えてみますと、こういう事態というのは長期化することがあるわけでございます。大体七十日以内におおむね終息するような気はいたしますが、事態の性格考えますと、長引くことというのは当然あるわけですね。
ただ、通常は、そうはいっても、一部の地域で選挙ができないというようなことはあるかもしれませんけれども、長期にわたって全国的に選挙の実施ができないということはなかなか想定し難いわけです。ですから、長引くとしても、まずは必要なら緊急集会を開いて、その後七十日後までに衆議院をつくり直して、国会として対応に当たっていくと、こういうことで十分であろうと。その先まで考えないというのはやむを得ないことだと思いますし、また、考えようとすると例外的な対応を長引かせることになりますから、現在のような規定ぶりに五十四条がなっているということには十分な理由があるように思っております。
ただ、今申しましたように、緊急の場合として通常想定される事態というのは当然長引くことがあるわけであります。繰り返しになりますが、それが選挙のタイミングで起きて、しかも全国的に選挙が実施できないということはほとんど、なかなか普通は考えにくいのですが、仮にそういう可能性があるとしますと、やはりそういう可能性踏まえて、この緊急集会というものを活用する、緊急集会で対応するということも解釈としては許容され得るのではないか。
緊急の場合というのはなかなか広い可能性を実は含んでいる。通常はそれは七十日という中で処理されるものでございますけれども、それを超える可能性、事態がそれを超えて広がる可能性もあるということを考えますと、はっきり規定はいたしませんけれども、そういった対応、緊急事態、緊急集会による対応というのが許容される余地は解釈としてあるんじゃなかろうかと、こう考えている次第でございます。
ただ、もちろん、このように考えますと、いろいろ御批判や御懸念もあるところかと思いますので、その辺りも想定して少し幾つかの事柄を付け加えさせていただきたいと思います。
一つは、緊急集会に限らないことでございますけれど、通常とは違う例外的な扱いをすると、こういうことでございますから、やはり例外を例外にとどめるための対応というのは国会としてしっかりやっていただく必要があろうかと、こう思っているわけでございます。
現に、いろいろな事態が起きますと、それを踏まえて法改正ということが行われております。今回の資料にもございますように、緊急事態に関する条項というのは結構たくさんあるわけでございます。これはそれぞれ過去の事例を踏まえて作られたところでございますし、さらに今後、新しい災害等あれば、改めてそれをしっかり検証して、国会としてきちんと法律を整備いただくという作業は継続して必要かなと、こういうふうに思っております。そうすることで、この例外的な事態への負荷を大きく減らすことができるだろうと、こう考えるわけでございます。
いま一つは、こちらも先ほどお話があったところでございますけれど、やはり、選挙の実施が難しいような場合であっても可及的速やかに選挙を実施していく。それから、できれば最低限、まずは定足数の充足が見込めるような状態をつくっていくと、そうすることで衆参そろって対応ができるわけでございまして、ここも非常に重要なところかなというふうに思っております。
選挙はやはり十全な形でやるのが望ましいと、これも一つのお考え方と、考え方かなというふうに思うわけでございますが、しかし、十全な形で選挙をしようとしますと、勢いやはり慎重にならざるを得ない、なかなか選挙の実施に踏み切れない、こういうことになるのではないかということも懸念するわけでございます。
また、緊急集会を長い間使うということになると歯止めがあるのかと、こういう御懸念もあろうかと思います。これもなかなか難しいのですけれども、緊急集会というのはやはり内閣主導で進んでいくところがあり、国会の機能としては通常とは違う形が取られますので、やはり通常に復していこうと、こういう形の力学は働きやすいんだろうと思います。加えて、今想定されている事態では衆議院が欠けていると、こういうことでございますから、これはやはりできるだけ早く選挙を実施しようと、こういう方向で動いていくことは当然期待できるのかなというふうに思っております。
緊急集会の性格考えますと、それなりの歯止めになる余地はあるんじゃないかと、こう思うわけでございます。ですから、現行憲法でも対応は可能じゃないかと、こう考えるわけでございますが、それはそれとして、しかし規定があった方がよいだろうと、こういう御意見もあるいはあるかもしれません。
ただ、繰り返しになりますが、その規定を設けるというのはなかなか、制度設計が非常に難しいところでございます。例えば、選挙困難事態ということについても、私、まず定足数が最低限充足されればよいのじゃないかと、こういうことを申しましたが、想定されている事態は実はそれより広いように見受けられます。どこまで詳しく憲法に規定するのかと、これは非常に難しい問題でございますけれども、できるだけ幅広い事態、蓋然性が低くても幅広くいろんな事態を想定して、しかもそこに十全な対応をしていこうということになりますと、どうしても例外の幅は大きくなってしまうと、こういうことがあるわけでございます。
日本国憲法の場合は緊急事態正面から規定していない、こういう憲法でございますから、憲法の規定の趣旨ですとか、その背景にあるものを踏まえながら対応するということは十分あり得ることかなと、こう考えている次第でございます。
以上となります。どうも機会を与えていただきましてありがとうございました。
3
長浜博行(立憲)
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査を議題といたします。
本日は、憲法に対する考え方についてのうち、緊急集会を中心とした緊急事態対応について参考人の皆様から御意見を伺います。
この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ本審査会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査の参考にしたいと存じておりますので、よろしくお願いいたします。
議事の進め方でございますが、長谷部参考人、只野参考人の順にお一人十三分程度で順次御意見をお述べいただいた後…
この発言のページ
4長長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授
本日は、このような発言の機会与えていただきまして、どうもありがとうございます。
それでは、お手元に配付資料というものをお配りしてあるかと思います。これを基に話を進めてまいります。
そこに掲げられておりますのは、衆議院法制局、そして衆議院憲法審査会事務局の方で作成になりました、まずは緊急事態条項のイメージ案というものでして、御存じのとおり、一、国会機能の維持に係る緊急事態条項、二、選挙困難事態における国会機能の維持、そして三がオンライン国会、四が国会機能の維持が困難となった場合における国家機能の維持に係る緊急事態条項と、そういった四つのイメージ案から成…
この発言のページ
5
長浜博行(立憲)
ありがとうございました。
次に、只野参考人にお願いいたします。只野参考人。
この発言のページ
- (上の発言)
6只只野雅人専修大学大学院法務研究科教授
今御紹介いただきました只野でございます。
本日は、このような機会を与えていただきまして、感謝申し上げたいと思います。
ただいま長谷部参考人から詳しいお話がございまして、私の方から新しくどのぐらいのことが付け加えられるか、いささか心もとないところでございますが、せっかく機会をいただきましたので、精いっぱい努めさせていただければというふうに思います。
本日のテーマ、緊急事態と参議院の緊急集会と、こういうことでございますが、まず前提として幾つかお話をしておこうかなと思うことがございます。おおむねレジュメに沿ってお話を進めてまいります。
まず、憲法化と書きましたが、これ緊急事態について憲法に規定を設けると、こういう趣旨でございますけれども、そうすることで事態をきちんと位置付けられる、それから統制の仕組みをつくることができると、こういうことも言われるわけでございます。それはそのとおりですが、ただ一方で、通常のルールに例外を設ける、言わば立憲主義のルールに穴を空けると、こういう側面があることも否定し難いところでございます。特に、非常に深刻な事態が長期化すると、しかもそこで万全な対応をしなければいけないということまで考えてまいりますと、相当に強い手段、相当に広い例外を認めることにもなりかねない。その辺りのバランスを考えて議論する必要があるだろうと、こう思うわけでございます。
また、各国の憲法を見渡しますと、この種の条項を設けている憲法はもちろんあるわけですが、全てがそういうわけではございません。正面から緊急事態の規定がない憲法、それでは不備があるのかというと、通常はそう考えないわけでございまして、何がしかの手掛かりになる規定があったり、ある種の法理が前提になったりしていて、そういった事態への対応が取られることになるのであろうと、こう考えるわけでございます。
日本国憲法の場合も、正面からこの緊急事態に関する規定があるわけではない。しかしながら、やはりそれは不備と見るべきではなくて、何がしかの対応は可能だと、こういう視点から憲法を捉え直すべきじゃなかろうかと、今日はそんな視点でお話をしてみようと思います。
その手掛かりが言うまでもなくこの五十四条と、こういうことになるわけでございます。特に今、長谷部参考人からお話がありましたこの四十日プラス三十日という枠ですね、これをどう考えるのかということが一つ問われてくるのかなと、こう思っております。
次に、この五十四条ではどう見ていくのかと、こういうことでございますけれども、今回、事前にいろいろ詳しい資料を準備していただきましたけれど、制定過程でございますね、いわゆる三月二日案と言われているものの中で、日本側が戦前の緊急命令とか緊急財政処分に類するようなことを考えた、GHQ側がそれに反対し、立法で対応できるではないかと、こういったやり取りがあり、結果的に、妥協という書き方はよくないかもしれませんが、合意ができて五十四条が作られたと、こういう経緯があるわけでございまして、やはりある種、緊急事態のようなものは想定しながら条文が作られたと、こういう経緯はひとまず押さえておく必要があるのかなというふうに思っております。
その上で五十四条できたわけでございますが、基本的に参議院の緊急集会に国会の機能を代替させると、これ内閣ではなく国会が対応すると、こういうことかなというふうに思いますし、それから、参議院の場合は継続性とか安定性を備えた議院、ハウスとして設計されておりますから、そうしたハウスにふさわしい役割としてこういったものが参議院に任されたんだろうと、通常こんな説明がされるところかなというふうに思っております。
こうしたことを前提に、少し条文についても考えてまいりたいと、こう思っております。
一つ要件になっておりますのが、衆議院が解散されたときということでございまして、こちらも先ほどお話があったところでございますが、これ衆議院が存在しない場合、これを想定しているわけです。解散の場合は規定があるけれども、任期満了の場合はどうなのかと、こういう問題があるわけでございますが、衆議院が存在しないという条件は同じでございますので、緊急の必要があれば類推解釈が許されるのじゃないかと、私もそう考えておりますし、学説でもおおむね合意ができつつあるんじゃないかなと、こういう印象を持っているところでございます。
さて、それから次に、一番問題になりますのが、解散から四十日以内に総選挙を行い、それから、総選挙から三十日以内に臨時会を召集すると、この規定をどう考えるかということでございます。
今回事前にいただいた資料の中にも過去の代表的な学説引かれておりまして、例えばそこを見ますと、最長七十日間と、こういう表現が出てくるわけでございます。しかし、どこまでこれを厳格に考えるのかという問題はあるような気がいたしまして、といいますのは、この七十日という期間内に総選挙を実施し、さらに国会を召集するということが当然に可能であると、こういう前提でお話をされていたんじゃないか。ただいま国会で議論されていますように、それが広い、全国的な範囲で不可能になるような極めて特殊な、例外的な事態が、しかも数年に一度の選挙というタイミングで起きるということまで想定した議論ではなかったんじゃないかと、そんな印象を持っているところでございます。
まさに、非常に想定外の、例外的な事態が、しかも選挙というタイミングで起きるということは普通なかなか考えませんので、そのことが仮に可能性とあるとしたら、この五十四条を改めてどう見るのかということをもう少し考えてみる必要が出てくるのではないか。従来と申しますか、この憲法改正の議論が出てくるまでは余り十分に主題化されていなかった問題ですね。まあ、これはこれとして新しい問題として見ることはできるだろうというふうに思うわけでございます。
そこに、次に、国に緊急の必要があるときという言葉でございますけれど、臨時会の召集の場合も似たような問題はあるのですが、当然、臨時会の召集などよりもこれは厳しく解さなきゃいけないと、ここも合意があるところかなと思っております。
じゃ、具体的にどういう場合が想定されるかといいますと、大きく二つぐらいに分けてみましたが、一つが治安上の緊急事態が生じた場合、これはいろんなものがあるかと思います。それから、もう一つよく言われますのは、災害等の問題ですね。これ、憲法の制定過程でも日本側はこういうことを言っているわけでございます。こういうものが一つあり、しかしそこには限られないということで、もう一つ付け加えられますのが、憲法や法律を施行する上で特別会の召集を待てないような、こういう場合というのが挙がってまいります。こちら、本来は会期中に処理すべき案件が処理し切れなかった、しかし七十日待てないと、こういう場合のものでして、これは当然七十日以内に処理しなければいけない、こういう案件でございます。二件の先例ございますが、これはいずれもこういうものだったというふうに思っております。
もう一つの方ですね、多分、普通、緊急の場合といいますと、治安上の緊急事態とか災害等、特に最近は災害等を念頭に置かれること多いと思いますが、こういったものが普通考えられるし、そう考えるのはすごく解釈として合理的かなというふうに思っておりますけど、よくよく考えてみますと、こういう事態というのは長期化することがあるわけでございます。大体七十日以内におおむね終息するような気はいたしますが、事態の性格考えますと、長引くことというのは当然あるわけですね。
ただ、通常は、そうはいっても、一部の地域で選挙ができないというようなことはあるかもしれませんけれども、長期にわたって全国的に選挙の実施ができないということはなかなか想定し難いわけです。ですから、長引くとしても、まずは必要なら緊急集会を開いて、その後七十日後までに衆議院をつくり直して、国会として対応に当たっていくと、こういうことで十分であろうと。その先まで考えないというのはやむを得ないことだと思いますし、また、考えようとすると例外的な対応を長引かせることになりますから、現在のような規定ぶりに五十四条がなっているということには十分な理由があるように思っております。
ただ、今申しましたように、緊急の場合として通常想定される事態というのは当然長引くことがあるわけであります。繰り返しになりますが、それが選挙のタイミングで起きて、しかも全国的に選挙が実施できないということはほとんど、なかなか普通は考えにくいのですが、仮にそういう可能性があるとしますと、やはりそういう可能性踏まえて、この緊急集会というものを活用する、緊急集会で対応するということも解釈としては許容され得るのではないか。
緊急の場合というのはなかなか広い可能性を実は含んでいる。通常はそれは七十日という中で処理されるものでございますけれども、それを超える可能性、事態がそれを超えて広がる可能性もあるということを考えますと、はっきり規定はいたしませんけれども、そういった対応、緊急事態、緊急集会による対応というのが許容される余地は解釈としてあるんじゃなかろうかと、こう考えている次第でございます。
ただ、もちろん、このように考えますと、いろいろ御批判や御懸念もあるところかと思いますので、その辺りも想定して少し幾つかの事柄を付け加えさせていただきたいと思います。
一つは、緊急集会に限らないことでございますけれど、通常とは違う例外的な扱いをすると、こういうことでございますから、やはり例外を例外にとどめるための対応というのは国会としてしっかりやっていただく必要があろうかと、こう思っているわけでございます。
現に、いろいろな事態が起きますと、それを踏まえて法改正ということが行われております。今回の資料にもございますように、緊急事態に関する条項というのは結構たくさんあるわけでございます。これはそれぞれ過去の事例を踏まえて作られたところでございますし、さらに今後、新しい災害等あれば、改めてそれをしっかり検証して、国会としてきちんと法律を整備いただくという作業は継続して必要かなと、こういうふうに思っております。そうすることで、この例外的な事態への負荷を大きく減らすことができるだろうと、こう考えるわけでございます。
いま一つは、こちらも先ほどお話があったところでございますけれど、やはり、選挙の実施が難しいような場合であっても可及的速やかに選挙を実施していく。それから、できれば最低限、まずは定足数の充足が見込めるような状態をつくっていくと、そうすることで衆参そろって対応ができるわけでございまして、ここも非常に重要なところかなというふうに思っております。
選挙はやはり十全な形でやるのが望ましいと、これも一つのお考え方と、考え方かなというふうに思うわけでございますが、しかし、十全な形で選挙をしようとしますと、勢いやはり慎重にならざるを得ない、なかなか選挙の実施に踏み切れない、こういうことになるのではないかということも懸念するわけでございます。
また、緊急集会を長い間使うということになると歯止めがあるのかと、こういう御懸念もあろうかと思います。これもなかなか難しいのですけれども、緊急集会というのはやはり内閣主導で進んでいくところがあり、国会の機能としては通常とは違う形が取られますので、やはり通常に復していこうと、こういう形の力学は働きやすいんだろうと思います。加えて、今想定されている事態では衆議院が欠けていると、こういうことでございますから、これはやはりできるだけ早く選挙を実施しようと、こういう方向で動いていくことは当然期待できるのかなというふうに思っております。
緊急集会の性格考えますと、それなりの歯止めになる余地はあるんじゃないかと、こう思うわけでございます。ですから、現行憲法でも対応は可能じゃないかと、こう考えるわけでございますが、それはそれとして、しかし規定があった方がよいだろうと、こういう御意見もあるいはあるかもしれません。
ただ、繰り返しになりますが、その規定を設けるというのはなかなか、制度設計が非常に難しいところでございます。例えば、選挙困難事態ということについても、私、まず定足数が最低限充足されればよいのじゃないかと、こういうことを申しましたが、想定されている事態は実はそれより広いように見受けられます。どこまで詳しく憲法に規定するのかと、これは非常に難しい問題でございますけれども、できるだけ幅広い事態、蓋然性が低くても幅広くいろんな事態を想定して、しかもそこに十全な対応をしていこうということになりますと、どうしても例外の幅は大きくなってしまうと、こういうことがあるわけでございます。
日本国憲法の場合は緊急事態正面から規定していない、こういう憲法でございますから、憲法の規定の趣旨ですとか、その背景にあるものを踏まえながら対応するということは十分あり得ることかなと、こう考えている次第でございます。
以上となります。どうも機会を与えていただきましてありがとうございました。
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長浜博行(立憲)
ありがとうございました。
以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
質疑を希望される方は、氏名標をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言を願います。
なお、質疑が終わった方は、氏名標を横にお戻しください。
参考人の方々におかれましては、答弁の際、挙手の上、会長の指名を受けた後に御発言を願います。
それでは、質疑のある方は、二巡目以降の質疑を希望される方も含めて、氏名標をお立てください。
まず、一巡目は各会派一名ずつ指名させていただき、質疑時間は答弁を含め各八分以内といたします。
古賀友一郎君…
この発言のページ
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古賀友一郎(自民)
自由民主党の古賀友一郎でございます。
長谷部先生、只野先生、ありがとうございました。御意見を拝聴して、特に参議院の緊急集会の点については、私の考えとかなり符合するような印象を受けました。
私は、我が国がどのような状況に陥ったとしても、国家の機能を維持できるようにすることこそが緊急事態条項の目的であって、それに対しては、できる限り国民主権原理を働かせるべきだと、このように考えております。
そうした観点から、国政選挙が実施できないほどの緊急事態が発生して、国会議員の任期が切れそうになった場合であっても、国権の最高機関である国会の機能を衆参両院とも維持す…
この発言のページ
9長長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授
どうも御質問ありがとうございました。
私も、古賀先生の四十日、三十日という日限に関するお考え、基本的に同意をして、賛成をしております。
四十日、三十日というのは、先ほどの意見陳述でも申し上げましたが、狙いがどこにあるかと申しますと、従前の政府がそのまま居座り続けること、これを止めると、なるべく早く総選挙を実施し、新たな国会を召集をして新たな政府を組織をすると、そのために設けられている日限でございまして、何も参議院の緊急集会の活動期間を制限することを狙いとしてできている、そういう規定ではございませんで、七十日、最長七十日に限られているかのように見えます…
この発言のページ