田中浩一郎慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授

2026年3月10日・第221回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 65 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 188 発言)

大変細かい質問も含めてでいただきまして、ありがとうございます。

まず、アメリカ、イスラエルがどのような環境で矛を収めるのかということなんですが、私、実はかなり悲観的に見ております。

とりわけ、イスラエルは明白に、去年の六月以降、レジームチェンジというものを出しております。ネタニヤフ首相が、次の指導者を選んだらそれも標的にするということを公言しておりますし、恐らくその言葉にうそはないんだと思うんですね。ということでありますと、それを達成した、すなわち、また改めてイランが新たな最高指導者を選出しなければいけなくなるような事態にまで至ると思っております。

一方、アメリカのトランプ大統領の方は、発言がぶれていますので、どこかで自分が考えるおいしいものと、それから見栄えのいいもの、この二つがそろったときに手を打てるのではないかと彼自身も考えていると思うんですね。

恐らく、私はベネズエラ方式と言っているんですけれども、一月にベネズエラでマドゥーロを捕まえたけれども、結局、体制自体は残って、民主化を要求していた運動の方は完全にはしごを外されてしまったわけですよね。あのような形での収め方はトランプ大統領に関してはあるんだと思うんですけれども、そちらの方になびくと、どうもネタニヤフ首相が電話をしたりしてまた自分の方に引き戻すということをやっております。昨日のやり取りでも、再びトランプ大統領が、一緒に最後決めるんだというようなことで、ネタニヤフ首相との共同歩調を強調しているというのは、まさにそのことではないかと思います。

ということでいいますと、この戦いというか紛争の行く末はかなりひどいものになると私は思っておりまして、少なくとも、イランの側に継戦能力が完全に絶たれたような状態になったとしても、イスラエル、アメリカは多分攻撃をやめないということであろうかと思います。もちろん、大義名分として、濃縮ウランを確保するとか、核施設を破壊するとか、ミサイルを破壊するとか、いろいろなことが付随してはありますけれども、究極の目的は体制を潰すことにありますので、そこは余り楽観しておりません。

ただ、問題は、体制を潰した後に、イスラエルは恐らく、その後が安定することには多分関心がないと思います。アメリカは、湾岸諸国の方のいろいろな意見もありますので、何かをしなければいけないだろうということで動こうとはすると思いますが、イスラエルはそこまでは関心がないので、結果、要するに破壊するだけ破壊し尽くして、今はちょうどガザがそんな状態ですよね。自らの手で破壊して、その再建に関しては、平和理事会とかをトランプさんがつくり出しましたけれども、イスラエルは、占領は続けていますけれども、つくり直すということはイスラエルはやっていないわけですよね。ですから、そういう状態に向かってしまうのではないかということを危惧しております。

日本の役割については、確かに私も期待したいところなんですけれども、近年、とりわけイランとの関係は非常に今、低レベルになっているということをちょっと認めざるを得ないと思います。

これは言うまでもなく、イラン側の方から見れば、日本はもはや原油も買っていない、二〇一九年三月に拾ったやつが最後になりまして、もう都合六年間、石油取引での関係でも切れた状態になっています。

そこへもってきて、去年の六月のイスラエル先制攻撃に際しての日本側の対応については、イラン側は非常に評価というか公平であるというふうに見ていたんですが、少なくとも今回の高市総理の発言などに関して、それから茂木外務大臣の発言などに関しては、やはりかなり一方的、しかも、アメリカの側にしか、あるいはアメリカ、イスラエルの方しか見ていないということで、日本の役割を自ら狭めてしまっているなという感じはいたします。せめて、攻撃を、合法性か違法性を問うことはなかったとしても、少なくとも、先制攻撃を外交交渉が続いている相手に行ったということに関して、しかも、当事国であるアメリカですらそれをやったということに関しては、やはり批判をすべきだったと私は思っております。

GCCは、確かに、イランが強大な国で対岸に位置しているということから、それから民族的な相違、あるいは宗派的な相違、そして領土紛争なども含めて、いろいろな点で対立を抱えておりますので、強いイランであるよりは弱いイランであった方がいいというふうに思っているとは思います。

ただ、イランが散り散りばらばらになること、分離独立主義が拡大して、クルドがクルディスタンになる、バルーチ人がバルーチスタンをつくる、それに伴ってイラク、トルコなどが不安定化する、パキスタンが不安定化する、フーゼスタンがアラビスタンに取られる、それをめぐっての紛争がほかの民族主義者とアラブ独立運動との間で起きるなどして、戦火が拡大して、かつてのイラクのような分裂状態になれば、当然、火の粉が対岸であるアラブ諸国の側にも降ってきますので、そこまでの不安定化を助長するような対応は志向していないと見ております。

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