上谷さくら桜みらい法律事務所弁護士

2026年5月29日・第221回国会 衆議院 法務委員会 第15号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 6 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 281 発言)

皆様、おはようございます。第一東京弁護士会所属、犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長の弁護士の上谷さくらと申します。

専門は犯罪被害者支援で、取扱事件の半分以上が性犯罪被害です。次に、殺人や交通死亡事故などの人が亡くなる事件を多く扱っています。また、犯罪を犯した人の更生にも関心を持っており、平成二十八年から保護司として活動しております。今年で十年になります。

令和二年六月から令和三年五月まで、性犯罪に関する刑事法検討会の委員を務め、令和五年刑事法改正に関わりました。また、現在は、こども家庭庁のこども性暴力防止法施行検討委員会の委員を務めております。裁判所、検察庁、警察庁などで被害者支援に関する研修講師も行っています。

本日は、私のそのような経験に基づき、被害者の観点から再審法改正について意見を述べたいと思います。よろしくお願いいたします。

まず、この改正案についての基本的な考え方を述べた上で、個別の論点についての意見を述べさせていただきます。

再審制度の改正に当たっては、被害者の観点を入れていただきたいです。

犯罪被害者は、自ら好んで被害者になるわけではなく、ある日突然、不幸にも犯罪に巻き込まれて被害者になるのです。犯罪被害に遭うと、御遺族や被害者本人は、それまでの人生が一変します。心身に強いダメージを受け、PTSDを発症して日常生活が送れなくなったり、学校や仕事を辞めざるを得なかったり、夢を諦めたり、貧困に陥ったりします。人間関係がうまくいかなくなり、孤立したり家庭に居場所がなくなったりすることもあります。被害回復には多大な困難を伴います。

しかし、事件が起訴されて刑事事件になり、判決が確定することは、一つの区切りになります。被害者の方にとっては、有罪判決が出ても、刑が軽過ぎるということでショックを受けることはあります。しかし、刑が軽過ぎるということがあったとしても、有罪判決が出され、それが確定することは、一つの区切りにはなるのです。

前を向いていこうと決意したときに、安易に再審開始決定がされたら、どう感じるでしょうか。また刑事事件に巻き込まれることになります。御遺族は心をかき乱されるでしょうし、被害者は、また尋問されなければならないのかという怒りや、なぜあの加害者は反省しないのか、仕返しに来るのではないかという恐怖心を抱くこともあるでしょう。いつまでも裁判が終わらないというのは、犯罪被害者にとっては大きな二次被害です。

そして、事件の証拠が誰にでも見られてしまうようなことになれば、それは重大なプライバシー侵害であり、それ自体が犯罪被害よりも重大な問題をもたらす危険が高いのです。

次に、検察官の抗告禁止について述べます。

現在、検察官の不服申立てである抗告については、原則禁止とし、当該決定が取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠がある場合に限り、例外的に認めるという方向で議論が進んでいると聞いています。また、全面禁止にすべきという意見もあると聞いております。

しかし、私は、被害者支援の立場から、抗告禁止には反対です。

まず、抗告禁止を主張する意見の根拠として、再審手続が長期化していることが挙げられていますが、それだけが長期化の原因とは思えません。現在の刑事訴訟法には再審に関する手続規定がほとんどないことや、争点が拡散して複雑化したり、古い事件であるため鑑定やその結果の分析、判断に時間を要するなど、多くの要素が原因になっているはずです。

また、人は必ずミスをしますから、再審開始決定をした裁判官の判断が一〇〇%正しいことを前提とする制度には賛成できません。

もし誤って再審開始決定がなされた場合、抗告できないと、また通常審からやり直すことになります。被害者にとっては、いつまでも裁判が終わらない事態に巻き込まれることになります。被害者が再度証言しなければならないことになれば、被害者の負担は甚大で、せっかく判決が確定して被害に一区切りをつけて日常生活を取り戻せたことが、水の泡になってしまいます。特に、幼い頃に起きた性被害の場合など、またその子を法廷に立たせて証言させることが望ましいのでしょうか。再審で証言を求められても、時間の経過により事件当時の記憶は相当減退していますから、真実発見に資することにもなりません。

仮に冤罪であれば、確定判決で犯人とされた人は救済され、真犯人が処罰されるべきですが、既に確定した判決があり、それが正しかった可能性がある中で、十分な議論が尽くされず、不服を言う機会もなく、納得できない形で裁判を一からやり直すことが決まり、思い出したくもない記憶を再び思い起こさなければならないことは問題だと思います。

通常審で、無罪の可能性があるから早期に被告人を手続から解放するために一審で終わるべきなどという議論はありません。もちろん無駄に長期化することは避けるべきですが、再審においては、一度は有罪の裁判が確定しているのですから、慎重に議論を尽くすことが国民の納得を得るためにも必要だと思います。

特に性犯罪被害者は、事案の性質上、被害に遭ったことを親しい人にも黙っていることが通常です。親や配偶者、恋人にも黙っている人もいますし、親しい人に知られたくないため、被害申告せずに泣き寝入りすることを選ぶ人もいます。刑事事件の判決が確定した後、被害事実を隠して結婚する人も少なくありません。

それが、再審開始が始まり、通常審からやり直さなければならないということで、検察から久しぶりに連絡があったときの被害者の衝撃は計り知れません。大事な人に過去の被害を知られたくないという利益は最大限保護されるべきです。

もし、再審請求する人の多くが冤罪被害者であると考えている方がいるならば、それは実態と大きくかけ離れています。実態を正しく理解していれば、検察官の抗告を禁止するという発想にはならないと思います。

次に、証拠開示について述べます。

再審請求審の証拠開示の範囲を広げる点について述べます。

刑事事件記録には、事件当事者のプライバシーが多く記載されています。事件と無関係のものもたくさんあります。被害者は、本当は言いたくないような話であっても、捜査機関から事件を立件するために必要かもしれないと言われ、犯人を検挙してほしい一心で証拠を提出しています。まさか将来それが全部開示されるなんて夢にも思っていません。

再審請求審でそういったものまで開示せよということになれば、被害者は、確定判決が出されて被害に一区切りをつけた後に事件とは無関係なプライバシー情報まで開示されることになりますから、日常生活の平穏を害されます。そんなことになってしまうくらいであれば、事件が起きても捜査協力しないという人が増えるのではないでしょうか。また、事件と無関係な証拠が開示され、その証拠価値などについて審理することになれば、そのこと自体が再審の長期化を招くことになるのではないでしょうか。

次に、証拠の目的外使用について述べます。

目的外使用を認める意見には絶対反対です。

刑事事件記録には事件当事者のプライバシーが多く記載されていますし、事件発生直後は幅広に証拠採取しますから、事件とは無関係なものも多数あります。

特に性被害の場合、証拠として性的画像や映像が決定的証拠となっている事件が多数あります。性被害そのものよりも画像などが残り続ける方が怖い、どうしても画像を消してほしいと訴える方がとても多いのです。警察や検察がそれらを押収しても、どこか別のところに画像が隠されているのではないか、既にどこかに流出しているのではないかと不安に感じる人が多いのです。

画像は、一旦ネットに流出すると、完全に削除することは事実上不可能です。

令和五年刑事法改正で、検察官が行政手続によって性的画像などを没収したり消去したりできるようになりました。その趣旨は、余罪の証拠など、刑事事件では没収できないものを行政手続で没収できるようにするためですが、その規定があることで被害者はたくさんの安心を得ることができています。

それなのに、性的画像などが弁護人や警察、検察、裁判官以外の一般の人に見られることになったら、性的画像を入手する目的で冤罪被害者の支援を装う人が出てくる可能性があります。その可能性を恐れ、被害申告自体をためらい、泣き寝入りを選ぶ人も出てくると思います。

今、被害者の同意を得ない性的画像がネット上にあふれており、売買もされています。その画像が刑事事件の証拠であれば、通常より高く売れるかもしれません。そして、世界中にその画像などが拡散してしまったら、被害者はどのようにして生きていけばいいのでしょうか。

そして、目的外使用がなされると、捜査協力が得られず、処罰が困難になることが危惧される可能性があることも指摘させていただきます。

最後に、被害者も冤罪を望んではいません。犯人ではない人が処罰されても被害回復にはならないからです。

しかし、刑事法の改正を検討する際、被害者の立場を十分に考慮しないことは問題があります。ある改正をする場合、被害者に不必要に負担がかかったり、被害者が理不尽な思いをさせられることがないかどうか、しっかりと検討していただきたいと思います。

以上です。ありがとうございました。(拍手)

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