本日は、発言の機会をいただき、ありがとうございます。鈴木雅子と申します。
移住連、特定非営利活動法人移住者と連帯する全国ネットワークの理事をしております。また、弁護士として、二十五年以上、様々な国籍の方の事件を扱ってまいりました。
本日、私からは、現在審議されております入管法改定法案のうち、手数料の引上げについてお話をさせていただきたいと思います。
入管庁は、在留諸申請の手数料について、在留資格の付与という恩恵の対価であると説明しています。しかし、同手数料は、僅か一年前にも引き上げられています。ある特定の財やサービスの対価が僅か一年で突然十倍になったり二十倍になったりするということは、安定した国家においては通常起きないことです。
にもかかわらず、このような値上げがされようとするのは、外国人の適正かつ円滑な受入れや秩序ある共生社会の実現に向けた受入れ環境整備等に係る各種施策を強化拡充することが不可欠であって、そのため、受益者負担の観点から、外国人に相応の負担を求める必要があるからと説明されています。
これを受け、入管庁が説明するとおり、現在までの入管法における手数料は実費を中心に定められていたのに対し、改定法案においては、実際の額を決める際に考慮する、勘案する要素として、実費のみでなく、外国人の適正な在留の確保に関する事務に要する費用、本邦に適法に在留する外国人が安定的かつ円滑に在留することができるようにするための支援に関する事務費用、その他外国人の出入国及び在留の公正な管理に要する費用の額及び諸外国における同種の手数料が挙げられるに至っています。
つまり、この改定法案は、これまでの実費を中心とする定め方から、在留諸申請の手数料の定め方を根本的に変えようとするものです。
また、これまでの審議では、手数料額の決定に当たって、外国人の出入国及び在留の公正な管理に要する費用の具体的内容として、入管庁から、デジタル技術の活用による出入国在留管理行政のDXの推進、難民等の適切かつ迅速な保護、支援、国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプランの強力な推進、外国人が日本語や我が国の制度、ルール等を学習するプログラムの創設の検討、情報発信、相談体制の強化などの外国人が日本社会に円滑に適応するための取組などが挙げられています。
しかしながら、御留意いただきたいのは、今回の値上げの対象に、新たに日本に入ってくるために必要な手続は入っておらず、既に日本にいる方の正規の在留継続のための手続のみが対象であるということです。日本は出生地主義をごく僅かな例外を除き取っていませんので、これらの手続をする方の中には、日本生まれの、いわゆる移民二世、三世もいます。日本語が母語である人もいます。
にもかかわらず、こうした人たちを全て外国人として一まとめにしてこれらの施策の受益者とするのは、論理的ではありません。共生社会、つまり日本国籍を持つ者と持たない者とが共に生きていく社会の実現の受益者は、日本社会全体のはずです。その実現に向けた負担を一方的に外国人に押しつけようとする限り、共生社会は決して実現しません。また、言うまでもなく、国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプランの強力な推進の受益者が、正規在留を継続しようとする外国人であるはずもありません。
このように、外国人を一まとめにして、これらの施策の受益者として手数料という形でその負担を負わせようとするのは、論理的でないだけでなく、憲法上、国際人権法上も深刻な疑義を生じさせます。
第一に、租税法律主義との関係です。
憲法八十四条は、新たに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを要すると定めています。在留諸申請に係る手数料は税という名目ではありませんが、そのことは直ちに租税法律主義と無関係であることを意味しません。
国民健康保険料に関する平成十八年三月一日最高裁大法廷判決は、課税権に基づき、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてでなく、一定の要件に該当する全ての者に対して課する金銭給付は、その形式のいかんにかかわらず、憲法八十四条に規定する租税に当たるとしています。
その上で、国民健康保険の保険料は、保険料を、受け得ることに対する反対給付として徴収されることを理由として、憲法八十四条の規定は直接に適用されないとしたものの、強制加入とされ、保険料が強制徴収され、賦課徴収の強制の度合いによっては租税に類似する性質を有するものであるから、これについても憲法八十四条の趣旨が及ぶべきとしています。
上記に照らして在留諸申請の手数料を検討すれば、外国籍者が日本に在留しようとする限り、その支払いは必須であり、実質的には強制です。
また、手数料は一般財源に組み入れられるものであって、使途が限定されていません。この点、政府は、外国人関連施策に充てる予定ではあるとしていますが、入管庁が挙げている具体的施策を見れば明らかなとおり、施策の中には、合法的に日本に滞在する外国籍者には無関係な施策が少なくなく、ましてや、長年日本に居住する者や日本生まれの外国籍者に至ってはほぼ無関係なものばかりであって、反対給付として徴収されるものとも考えられません。
したがって、在留諸申請手数料は、実質的に租税に当たる、少なくとも憲法八十四条の趣旨が及ぶように思われます。にもかかわらず、本改定案では、かかる高額な上限と抽象的な考慮要素のみを定め、在留期間による額の区別や減免の対象を含め全面的に政令に白紙委任していることからすれば、憲法八十四条の趣旨に反し、許容されないと考えられます。
第二に、憲法十四条や自由権規約二十六条が定める平等原則との関係です。
今般値上げ予定の手数料のうち、実費相当分は一万円ないし二万円であり、その大部分が実費以外に充てられることが見込まれています。しかしながら、既に述べたとおり、その施策は長年日本に居住する者や日本生まれの外国籍者にはほぼ無関係なものばかりであって、反対給付でも恩恵に対する対価でもありません。それにもかかわらず、日本国籍を有していないというだけの理由で、自身と無関係な施策のための費用を手数料という名目で強制的に徴収し、負担させるのは、憲法十四条や自由権規約二十六条の禁ずる、平等原則に抵触するのではないかという疑念を強く想起させます。
既に述べたとおり、昭和五十六年の制定時は実費を基本として手数料額が定められたことから、こうした憲法等との適合性は、これまで一度も国会で議論をされたことがありません。本改定案においては、国会において、憲法や条約との適合性についても十分な議論が必要です。
なお、入管庁は、手数料を充てる予定の具体的施策の一つに、難民等の適切かつ迅速な保護、支援を挙げています。しかしながら、難民認定や難民保護は日本が難民条約締約国の責務として行うものであり、国の裁量に基づく出入国管理手続とは全く別の手続ですから、難民認定や難民保護に係る費用を、改定法案六十七条二項に挙げられている外国人の出入国及び在留の公正な管理に関する費用に含むことも誤りです。
もう一つの考慮要素である諸外国における同種の手数料の額についても、大きな疑義があります。
これまで諸外国の例として挙げられているのは仕事を理由とする在留資格のみであり、国籍者の配偶者など、その身分や地位に基づく在留資格についての例は挙げられていないようです。しかも、円安や日本との賃金や物価の差も考慮されていません。これで諸外国における同種の手数料が検討されたとはとても言えません。
急激な引上げの実際上の影響も、極めて深刻です。
日本国籍を持たない人が日本で生きていくために、在留資格は、水道や電気、住居と同様、あるいはそれ以上に欠かせないものです。とりわけ、政府、入管庁は不法滞在者ゼロプランを掲げ、在留資格のない非正規滞在を容認しない姿勢を明確にしています。また、日本では、出生による国籍取得や帰化が法律上も実務上も他の先進国と比べて非常に限定されている上、政府、入管庁は永住や帰化の要件をこれまで以上に厳格化する方針であると報じられています。すなわち、日本国籍を持たない多くの人々は、在留申請を繰り返さざるを得ないという状況に置かれています。
そのような状況において、生きていくために不可欠な在留資格を維持するための費用がこのように急激に引き上げられれば、当事者やその家族の生活に極めて深刻な影響を及ぼします。場合によっては、これまで日本で築いてきた生活を奪ったり、家族の分離を招いたり、迫害のおそれのある国に帰ることを事実上強いることになりかねません。
例えば、収入が低い場合、一回の更新や変更で与えられる在留期間は短くなる傾向にあります。入管庁が予定しているところによれば、在留期間が一年の場合、手数料は三万円、四人家族なら十二万円です。収入の低い家庭が無理なく賄える額でしょうか。受益者負担ということばかりが言われていますが、負担能力を無視するのは、安定した制度につながらないのではないでしょうか。
金額の具体的な決定や減免の対象を行政に全面的に委ねるというのも、既に述べた法的な観点のほか、実際上も極めて大きな問題です。
現在の法案では、何を減免の対象としてはいけないかのみを定め、あとは全て行政に委ねています。そして、現在までに、具体的にどのような者が減免の対象になるのかは全く明らかになっていません。定められ方によっては、難民条約や子どもの権利条約等との抵触も問題になるほか、人道上も極めて過酷な事態が生じることが強く懸念されます。
二〇二三年の非正規滞在者を主たる対象とした法改定、二四年の永住資格の取消し事由の拡大と、管理、排除を強化する法改定が立て続けになされ、さらには、昨年秋頃から、外国人をめぐる政策については、嵐のような方針の変更が行政のレベルで続いています。これらの方針変更については、国会で全く議論をされることもなく、その必要性や影響についての説明すら、ほとんどあるいは全く公の場でなされていません。多くの外国籍者の人生、生活が極めて大きな影響を受けるにもかかわらずです。当事者たちは本当に混乱し、振り回され、落胆しています。
更に追い打ちをかけるのがこの本改定法案、すなわち、特別永住者と永住者を除く全ての外国籍者に影響を与える、急激かつ大幅な手数料の値上げです。真面目に日本で生活してきた外国籍者の人生、生活が余りにないがしろにされているように思われます。
改定法案が目指す急激かつ過大な手数料の引上げが、憲法上や条約上、問題を生じないのか、外国籍者に対する実際上の影響は許容され得るものか、さらには、こうした引上げが本当に日本社会にとって望ましいものであるかなど、国会で十分に議論いただく必要があると考えます。
移住連では、三月十六日、在留審査手数料を過大に引き上げる法案に反対する声明を発出し、また、この法案に関するメッセージを募集しました。僅か十日ほどで、百二十件以上のメッセージが寄せられました。声明については資料一、メッセージについては資料二としてお配りしています。
メッセージの中から幾つか御紹介をいたします。
二十一歳、特定技能、インドネシア。現場で働く外国人の声を無視しないでください。私たちは数字や統計の一部ではありません。それぞれが生活を築き、責任を背負って働いています。このような決定が続けば、日本で働き続けること自体を見直さざるを得ない人も増えていくはずです。
二十七歳、技術・人文知識・国際業務、ベトナム。手数料の引上げ自体は理解できますが、適正な範囲であるべきだと思います。現在の引上げ額は高過ぎて、家賃や光熱費など多くの生活費を負担する外国人、特に家族世帯には大きな負担です。合理的な金額を望みます。
五十九歳、永住者、フィリピン。日本人夫の家庭内暴力で幼い子供たちを連れて逃げないといけなかったフィリピン人母親が、精神、身体がぼろぼろになっている中で子供たちを育てるために働かなければならない状況で、在留資格の手続の手数料の引上げで、どんなに頑張っても貧困になりかねない。日本で暮らすため、日本国籍の子供たちと離れ離れにならないためには在留資格手続をしないといけない。この手数料を払うために働かないといけなくなる。長時間母親が働かないといけなくなる。ここでネグレクト、ヤングケアラー、虐待等の問題が起きる可能性が高い。
五十六歳、夫が外国籍の日本国籍。夫は日本人の嫌ういわゆる三Kの仕事をして、妻の私も働いて、二人の多くはない給料で、夫婦それぞれの親を支えて、真面目に税金、年金を払って、物価の高騰、生活に余裕はありません。それでこのビザ更新料です。これを払えなければ、夫は帰国しろということです。国が夫婦を離婚、別居に追い込むのですか。それとも、そんなに外国人と婚姻生活を続けたいなら、私も日本から出ていけということでしょうか。
時間の関係上、全てを御紹介することはできませんが、外国籍者に与える具体的な影響や、日本社会にとっての悪影響を及ぼす懸念など、様々な声が寄せられていますので、是非このメッセージにお目通しいただければと思います。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
1井井上英孝(維新)
これより会議を開きます。
内閣提出、出入国管理及び難民認定法及び出入国管理及び難民認定法第二条第五号ロの旅券を所持する外国人の上陸申請の特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人として、群馬大学特別教授・名誉教授結城恵君、弁護士、特定非営利活動法人移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)理事鈴木雅子君、難民支援協会渉外チーム政策提言担当生田志織君、以上三名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、誠…
この発言のページ
2結結城恵群馬大学特別教授・名誉教授
皆様、おはようございます。
この度は、こちらにお招きいただきまして、誠にありがとうございます。
私は、御紹介にあずかりました群馬大学の結城恵と申します。
このような機会をいただきまして、ちょっと資料を御用意いたしましたが、資料に若干修正がございますので、先に申し上げます。
資料一ページ、対象法案のところ、内閣提出と書いてある括弧づけのところ、申し訳ありません、削除をお願いいたします。それから、二ページ目、2の(1)、提示された手数料でございますが、その後に、の上限額が入ります。申し訳ございません。よろしくお願いいたします。
それでは、陳述を始め…
この発言のページ
3井井上英孝(維新)
結城参考人、ありがとうございました。
次に、鈴木参考人にお願いいたします。
この発言のページ
- (上の発言)
4鈴鈴木雅子弁護士/特定非営利活動法人移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)理事
本日は、発言の機会をいただき、ありがとうございます。鈴木雅子と申します。
移住連、特定非営利活動法人移住者と連帯する全国ネットワークの理事をしております。また、弁護士として、二十五年以上、様々な国籍の方の事件を扱ってまいりました。
本日、私からは、現在審議されております入管法改定法案のうち、手数料の引上げについてお話をさせていただきたいと思います。
入管庁は、在留諸申請の手数料について、在留資格の付与という恩恵の対価であると説明しています。しかし、同手数料は、僅か一年前にも引き上げられています。ある特定の財やサービスの対価が僅か一年で突然十倍になったり二十倍になったりするということは、安定した国家においては通常起きないことです。
にもかかわらず、このような値上げがされようとするのは、外国人の適正かつ円滑な受入れや秩序ある共生社会の実現に向けた受入れ環境整備等に係る各種施策を強化拡充することが不可欠であって、そのため、受益者負担の観点から、外国人に相応の負担を求める必要があるからと説明されています。
これを受け、入管庁が説明するとおり、現在までの入管法における手数料は実費を中心に定められていたのに対し、改定法案においては、実際の額を決める際に考慮する、勘案する要素として、実費のみでなく、外国人の適正な在留の確保に関する事務に要する費用、本邦に適法に在留する外国人が安定的かつ円滑に在留することができるようにするための支援に関する事務費用、その他外国人の出入国及び在留の公正な管理に要する費用の額及び諸外国における同種の手数料が挙げられるに至っています。
つまり、この改定法案は、これまでの実費を中心とする定め方から、在留諸申請の手数料の定め方を根本的に変えようとするものです。
また、これまでの審議では、手数料額の決定に当たって、外国人の出入国及び在留の公正な管理に要する費用の具体的内容として、入管庁から、デジタル技術の活用による出入国在留管理行政のDXの推進、難民等の適切かつ迅速な保護、支援、国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプランの強力な推進、外国人が日本語や我が国の制度、ルール等を学習するプログラムの創設の検討、情報発信、相談体制の強化などの外国人が日本社会に円滑に適応するための取組などが挙げられています。
しかしながら、御留意いただきたいのは、今回の値上げの対象に、新たに日本に入ってくるために必要な手続は入っておらず、既に日本にいる方の正規の在留継続のための手続のみが対象であるということです。日本は出生地主義をごく僅かな例外を除き取っていませんので、これらの手続をする方の中には、日本生まれの、いわゆる移民二世、三世もいます。日本語が母語である人もいます。
にもかかわらず、こうした人たちを全て外国人として一まとめにしてこれらの施策の受益者とするのは、論理的ではありません。共生社会、つまり日本国籍を持つ者と持たない者とが共に生きていく社会の実現の受益者は、日本社会全体のはずです。その実現に向けた負担を一方的に外国人に押しつけようとする限り、共生社会は決して実現しません。また、言うまでもなく、国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプランの強力な推進の受益者が、正規在留を継続しようとする外国人であるはずもありません。
このように、外国人を一まとめにして、これらの施策の受益者として手数料という形でその負担を負わせようとするのは、論理的でないだけでなく、憲法上、国際人権法上も深刻な疑義を生じさせます。
第一に、租税法律主義との関係です。
憲法八十四条は、新たに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを要すると定めています。在留諸申請に係る手数料は税という名目ではありませんが、そのことは直ちに租税法律主義と無関係であることを意味しません。
国民健康保険料に関する平成十八年三月一日最高裁大法廷判決は、課税権に基づき、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてでなく、一定の要件に該当する全ての者に対して課する金銭給付は、その形式のいかんにかかわらず、憲法八十四条に規定する租税に当たるとしています。
その上で、国民健康保険の保険料は、保険料を、受け得ることに対する反対給付として徴収されることを理由として、憲法八十四条の規定は直接に適用されないとしたものの、強制加入とされ、保険料が強制徴収され、賦課徴収の強制の度合いによっては租税に類似する性質を有するものであるから、これについても憲法八十四条の趣旨が及ぶべきとしています。
上記に照らして在留諸申請の手数料を検討すれば、外国籍者が日本に在留しようとする限り、その支払いは必須であり、実質的には強制です。
また、手数料は一般財源に組み入れられるものであって、使途が限定されていません。この点、政府は、外国人関連施策に充てる予定ではあるとしていますが、入管庁が挙げている具体的施策を見れば明らかなとおり、施策の中には、合法的に日本に滞在する外国籍者には無関係な施策が少なくなく、ましてや、長年日本に居住する者や日本生まれの外国籍者に至ってはほぼ無関係なものばかりであって、反対給付として徴収されるものとも考えられません。
したがって、在留諸申請手数料は、実質的に租税に当たる、少なくとも憲法八十四条の趣旨が及ぶように思われます。にもかかわらず、本改定案では、かかる高額な上限と抽象的な考慮要素のみを定め、在留期間による額の区別や減免の対象を含め全面的に政令に白紙委任していることからすれば、憲法八十四条の趣旨に反し、許容されないと考えられます。
第二に、憲法十四条や自由権規約二十六条が定める平等原則との関係です。
今般値上げ予定の手数料のうち、実費相当分は一万円ないし二万円であり、その大部分が実費以外に充てられることが見込まれています。しかしながら、既に述べたとおり、その施策は長年日本に居住する者や日本生まれの外国籍者にはほぼ無関係なものばかりであって、反対給付でも恩恵に対する対価でもありません。それにもかかわらず、日本国籍を有していないというだけの理由で、自身と無関係な施策のための費用を手数料という名目で強制的に徴収し、負担させるのは、憲法十四条や自由権規約二十六条の禁ずる、平等原則に抵触するのではないかという疑念を強く想起させます。
既に述べたとおり、昭和五十六年の制定時は実費を基本として手数料額が定められたことから、こうした憲法等との適合性は、これまで一度も国会で議論をされたことがありません。本改定案においては、国会において、憲法や条約との適合性についても十分な議論が必要です。
なお、入管庁は、手数料を充てる予定の具体的施策の一つに、難民等の適切かつ迅速な保護、支援を挙げています。しかしながら、難民認定や難民保護は日本が難民条約締約国の責務として行うものであり、国の裁量に基づく出入国管理手続とは全く別の手続ですから、難民認定や難民保護に係る費用を、改定法案六十七条二項に挙げられている外国人の出入国及び在留の公正な管理に関する費用に含むことも誤りです。
もう一つの考慮要素である諸外国における同種の手数料の額についても、大きな疑義があります。
これまで諸外国の例として挙げられているのは仕事を理由とする在留資格のみであり、国籍者の配偶者など、その身分や地位に基づく在留資格についての例は挙げられていないようです。しかも、円安や日本との賃金や物価の差も考慮されていません。これで諸外国における同種の手数料が検討されたとはとても言えません。
急激な引上げの実際上の影響も、極めて深刻です。
日本国籍を持たない人が日本で生きていくために、在留資格は、水道や電気、住居と同様、あるいはそれ以上に欠かせないものです。とりわけ、政府、入管庁は不法滞在者ゼロプランを掲げ、在留資格のない非正規滞在を容認しない姿勢を明確にしています。また、日本では、出生による国籍取得や帰化が法律上も実務上も他の先進国と比べて非常に限定されている上、政府、入管庁は永住や帰化の要件をこれまで以上に厳格化する方針であると報じられています。すなわち、日本国籍を持たない多くの人々は、在留申請を繰り返さざるを得ないという状況に置かれています。
そのような状況において、生きていくために不可欠な在留資格を維持するための費用がこのように急激に引き上げられれば、当事者やその家族の生活に極めて深刻な影響を及ぼします。場合によっては、これまで日本で築いてきた生活を奪ったり、家族の分離を招いたり、迫害のおそれのある国に帰ることを事実上強いることになりかねません。
例えば、収入が低い場合、一回の更新や変更で与えられる在留期間は短くなる傾向にあります。入管庁が予定しているところによれば、在留期間が一年の場合、手数料は三万円、四人家族なら十二万円です。収入の低い家庭が無理なく賄える額でしょうか。受益者負担ということばかりが言われていますが、負担能力を無視するのは、安定した制度につながらないのではないでしょうか。
金額の具体的な決定や減免の対象を行政に全面的に委ねるというのも、既に述べた法的な観点のほか、実際上も極めて大きな問題です。
現在の法案では、何を減免の対象としてはいけないかのみを定め、あとは全て行政に委ねています。そして、現在までに、具体的にどのような者が減免の対象になるのかは全く明らかになっていません。定められ方によっては、難民条約や子どもの権利条約等との抵触も問題になるほか、人道上も極めて過酷な事態が生じることが強く懸念されます。
二〇二三年の非正規滞在者を主たる対象とした法改定、二四年の永住資格の取消し事由の拡大と、管理、排除を強化する法改定が立て続けになされ、さらには、昨年秋頃から、外国人をめぐる政策については、嵐のような方針の変更が行政のレベルで続いています。これらの方針変更については、国会で全く議論をされることもなく、その必要性や影響についての説明すら、ほとんどあるいは全く公の場でなされていません。多くの外国籍者の人生、生活が極めて大きな影響を受けるにもかかわらずです。当事者たちは本当に混乱し、振り回され、落胆しています。
更に追い打ちをかけるのがこの本改定法案、すなわち、特別永住者と永住者を除く全ての外国籍者に影響を与える、急激かつ大幅な手数料の値上げです。真面目に日本で生活してきた外国籍者の人生、生活が余りにないがしろにされているように思われます。
改定法案が目指す急激かつ過大な手数料の引上げが、憲法上や条約上、問題を生じないのか、外国籍者に対する実際上の影響は許容され得るものか、さらには、こうした引上げが本当に日本社会にとって望ましいものであるかなど、国会で十分に議論いただく必要があると考えます。
移住連では、三月十六日、在留審査手数料を過大に引き上げる法案に反対する声明を発出し、また、この法案に関するメッセージを募集しました。僅か十日ほどで、百二十件以上のメッセージが寄せられました。声明については資料一、メッセージについては資料二としてお配りしています。
メッセージの中から幾つか御紹介をいたします。
二十一歳、特定技能、インドネシア。現場で働く外国人の声を無視しないでください。私たちは数字や統計の一部ではありません。それぞれが生活を築き、責任を背負って働いています。このような決定が続けば、日本で働き続けること自体を見直さざるを得ない人も増えていくはずです。
二十七歳、技術・人文知識・国際業務、ベトナム。手数料の引上げ自体は理解できますが、適正な範囲であるべきだと思います。現在の引上げ額は高過ぎて、家賃や光熱費など多くの生活費を負担する外国人、特に家族世帯には大きな負担です。合理的な金額を望みます。
五十九歳、永住者、フィリピン。日本人夫の家庭内暴力で幼い子供たちを連れて逃げないといけなかったフィリピン人母親が、精神、身体がぼろぼろになっている中で子供たちを育てるために働かなければならない状況で、在留資格の手続の手数料の引上げで、どんなに頑張っても貧困になりかねない。日本で暮らすため、日本国籍の子供たちと離れ離れにならないためには在留資格手続をしないといけない。この手数料を払うために働かないといけなくなる。長時間母親が働かないといけなくなる。ここでネグレクト、ヤングケアラー、虐待等の問題が起きる可能性が高い。
五十六歳、夫が外国籍の日本国籍。夫は日本人の嫌ういわゆる三Kの仕事をして、妻の私も働いて、二人の多くはない給料で、夫婦それぞれの親を支えて、真面目に税金、年金を払って、物価の高騰、生活に余裕はありません。それでこのビザ更新料です。これを払えなければ、夫は帰国しろということです。国が夫婦を離婚、別居に追い込むのですか。それとも、そんなに外国人と婚姻生活を続けたいなら、私も日本から出ていけということでしょうか。
時間の関係上、全てを御紹介することはできませんが、外国籍者に与える具体的な影響や、日本社会にとっての悪影響を及ぼす懸念など、様々な声が寄せられていますので、是非このメッセージにお目通しいただければと思います。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
5井井上英孝(維新)
鈴木参考人、ありがとうございました。
次に、生田参考人にお願いいたします。
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6生生田志織難民支援協会渉外チーム政策提言担当
難民支援協会の生田志織と申します。
本日は、このような機会をいただき、誠にありがとうございます。
私たちは、日本で暮らす難民申請中の方を支援しているNPO法人です。一九九九年の団体設立以来、日本に逃れた難民の方たちを支援してきました。今日は、日々の難民支援の経験から、今回の入管法改正案のうち、手数料の引上げについて、慎重な議論を求める立場から意見を述べたいと思います。
まず強調したいのは、今回の手数料引上げの直接の当事者は、この議場の中に、少なくとも法案を採決する立場にある方の中に一人もいないということです。出入国や在留管理に関する議論は、こうした…
この発言のページ
7井井上英孝(維新)
生田参考人、ありがとうございました。
以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
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