齋藤裕弁護士

2026年4月16日・第221回国会 衆議院 内閣委員会 第5号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 8 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 113 発言)

おはようございます。本日は、お招きいただきまして、ありがとうございます。

弁護士の齋藤と申します。

資料をお配りしておりますが、まず、二ページのスライドからお話しさせていただきます。

立法事実の問題でございます。国家情報会議法案に立法事実はあるのかどうかでございます。

四月八日の会議で、木原長官が、内調もしっかり仕事をされているというお話をされていました。既に複雑で困難な国際情勢となっていると思われますけれども、今回の国会質疑におきまして、現行体制でこういう弊害事案があるんだというようなお話はなかったように私は認識しております。つまり、現行制度はそれなりにうまくいっているのではないでしょうか。

先ほどの、参考人の皆様からお話がありましたけれども、インテリジェンスというものは、政策との密接なつながり、そして適切な距離のバランスを取ることでうまく機能するわけでございます。そうだといたしますと、現行制度はそのバランスが取れているという評価も可能なのではないでしょうか。

それにもかかわらず、政治家によるコントロールを強めるというのが今回の改革でございます。この改革が、かえってインテリジェンスに対する政治化の危険性、インテリジェンス機関が政治家に忖度をしてしまう、そしてインテリジェンスの分析の品質が下がってしまう、そういう懸念はないでしょうか。

アメリカでは、ギャバード情報長官がイランは核兵器開発をしているということは考えられないというお話をされたら、トランプ大統領が非常に反発されるという場面があったと思います。これは公の場面でされたわけですけれども、国家情報会議という場で、国のトップがインテリジェンス機関に、おまえたちの分析はおかしいというような反発をされるような事態があったら、本当にインテリジェンス機関の分析は客観的なものであり得るんでしょうか。そういう意味で、今回の法案については危険性もあるだろうというふうに思っております。

そして、今回の国会審議で、政治によるコントロールを強めることでインテリジェンス機能が強化されたんだ、そういう諸外国の事例の紹介もなかったというふうに認識しております。アメリカなどのファイブアイズでも、国のトップがインテリジェンス機関を強く統治する仕組みというのは一般的ではないんだろうというふうに思っております。

人権侵害の話はもちろん大事ですが、それは別としても、今の段階でそれなりにうまく運用されている内調について、諸外国の事例について慎重な検討をすることもなく変革することは、かえってその機能を損ねる、弱める可能性もあるのではないかと思っております。

インテリジェンス機能を強化すべきという命題についてはもちろん賛同するものでありますけれども、しかし、今回の改革でインテリジェンス機能がそもそも強化されるかどうか分からない、そういう視点もきちんと考えなければならないだろうと思います。

次が、スライドの三に関連してでございます。

二〇〇四年、アメリカでは、インテリジェンス機関の統合などを目指し、二〇〇四年IC改編法が成立し、国家情報長官が創設されたわけです。この背景には、インテリジェンスコミュニティーが九・一一事件を予期できなかったとか様々な問題が背景にあったわけですけれども、やはりインテリジェンス機能についての議論は、このようにアメリカでなされたように、立法事実をきちんと検討した上でなされるべきだというふうに考えております。

スライド四でございます。

本法案は、スパイ対策も目的としております。

ボガチョンコフ事件など、二〇〇〇年代初頭にスパイによる情報漏えいはございましたけれども、それ以降は、防衛省について、スパイによる情報漏えいは報告されていないというふうに考えております。

ボガチョンコフ事件を受けて、防衛省の方では、防衛庁ですかね、各国駐在武官等との接触要領の制度化などの対策が講じられ、以降、防衛省におきましてスパイによる情報漏えいというのは報告されていないというふうに認識しております。情報漏えいはございますけれども、ほぼ防衛省職員の規範意識の鈍麻によるものでありまして、スパイは関係ない事案だろうと思っております。

日本はスパイ天国で機密情報を取られっ放しというイメージが一部あるわけですけれども、防衛省の方ではスパイ対策というのはそれなりにやっておられる。そういう努力を過小評価することは、してはいけないんだろうと思っております。

スパイはたくさんいるんだろうと、いるとは思いますけれども、しかし、スパイによる重要情報の漏えいというものは発生していない、少なくとも報告されていないわけですから、スパイ対策という観点の立法が本当に必要かは疑問がございます。

スライド五、六でございます。

これは、インテリジェンス機関による違法行為を認定した裁判例などを紹介しております。

四月八日に、政府も、このような違法行為があったことは認めているわけでございます。大川原化工機事件も、インテリジェンス機関が思い込みに基づき暴走し得ること、そして、それを内部統制する仕組みが不十分なこと、人権に対する軽視があることを示しております。

四月八日の政府答弁で、各省庁は、このような違法行為が明らかになったことを踏まえて教育などをしっかりしているんだというような答弁をされていました。しかし、例えば、じゃ、自衛隊において、保全隊が自衛隊員ではない一般市民の市民運動を監視するのをやめましたとか、そういう答弁は全くなかったわけですね。違法な調査によって得られた個人情報を破棄しました、こういう答弁もなかったわけです。そうであれば、全くインテリジェンス機関は変わっていないというふうに言わざるを得ません。それにもかかわらず、今回の法案を成立させることには問題があると思っております。

スライド七の関連でございます、最高裁判決と新潟地裁判決。

最高裁判決は、個人情報の一元的管理の有無を人権侵害かどうかの判断要素としているものです。新潟地裁判決は、行政内部、これは防衛庁の内部での個人情報の移転自体をプライバシー侵害としているものであります。

木原長官は、今回の法案はインテリジェンス機関に新たな情報収集の権能を与えるものではないというふうにしているわけです。しかし、個人情報を集約する、個人情報を組織内部で移転すること自体が人権侵害になり得るわけでございます。そうであれば、やはり人権侵害を防止するための仕組みを考えなければならないというふうに思っております。

ほかのスライドはちょっと省きますけれども、第三者機関をきちんと設けて、人権侵害が発生しないようにする、それを抑止する、そういう仕組みがなければならないんだろうというふうに考えております。

御清聴ありがとうございました。(拍手)

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