大澤淳公益財団法人中曽根康弘世界平和研究所上席研究員

2026年4月16日・第221回国会 衆議院 内閣委員会 第5号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 6 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 113 発言)

おはようございます。中曽根平和研究所の大澤と申します。

本日は、参考人として意見を表明する機会をいただきましたこと、心より感謝申し上げます。

本日は、国家情報会議設置法案につき、法案に賛成の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。

その前に、サイバー安全保障政策の実務及び研究に携わってきた者といたしまして、我が国のインテリジェンス機能の抜本的強化に資する本法案の策定に際しまして、御担当の木原官房長官並びに政府・与党関係者の皆様の御尽力に心より敬意と感謝を申し上げます。

本日は、本法案につきまして、立法事実の観点から、法案の必要性について三点お話を申し上げた上で、法案成立後に積み残された課題について指摘をしたいというふうに思います。

最初に、法案の立法事実について、まず簡単に三点申し上げます。

第一に、国際情勢の変化によるインテリジェンス能力の重要性の増大がございます。

お手元の資料一のアにございますけれども、現在の国際情勢は、ロシア、中国を始めとした権威主義国家対日本を含む民主主義、自由主義経済の国々の体制間競争による新冷戦の様相を呈しております。このような国際情勢下では、専門家の間でDIMEというふうに言っておりますけれども、外交、情報・インテリジェンス、軍事、経済の全ての分野の政策を総動員して安全保障の確保をすることが必要不可欠になっております。

我が国では、情勢の変化に対応いたしまして、二〇一三年以降、お手元の資料にございますように、外交、軍事、経済面での安全保障体制の強化がなされてきておりますけれども、情報・インテリジェンスの能力強化については手つかずになってございます。本法案による体制強化が、国際情勢の変化に対応する上で必要不可欠と考えております。

第二に、ここのところが恐らく今回の法案の立法事実としては最も重要な部分というふうに思っておりますけれども、デジタル空間の安全保障領域化に伴いまして、我が国への影響工作が行われております。国民の認知領域を守ることが急務になっているという現実がございます。

資料二ページ目にございますけれども、現代戦はハイブリッド戦争と言われておりまして、相手国民の認知領域を対象に、国家意思決定をゆがめる目的で、情報戦、影響工作が行われております。SNSが世論形成に大きな影響を与えることになった昨今、各国でSNS空間が影響工作に悪用されるようになってきてございます。

我が国でも、昨年七月の参議院選挙でロシアからと見られる影響工作が指摘をされておりますし、本年二月の衆議院議員選挙では、お手元に実際に影響工作に使われたポンチ絵をお配りしておりますけれども、中国からと見られる影響工作を観測をしております。その中では、高市首相に関する偽情報の流布や、社会不安をあおる情報の拡散、台湾有事と戦争を結びつけた言説の意図的な流布が行われております。

このような民主主義の選挙に対する影響工作は情報戦の一環としてなされておりまして、我が国の健全な民主主義及び安全保障を確保するためには、平時からこのような影響工作に対する情報収集、分析、対処を行うことが急務となっております。そのため、本法案の外国情報活動への対処の強化、これは緊急の必要性があるというふうに考えております。

第三は、お手元の資料三ページにございますけれども、デジタル時代となりまして、膨大な情報が生成されるようになってきております。データ量はギガ、テラを超えてゼタバイトという領域に入っております。ここの領域になりますと既に人間の処理量を超えておりまして、インテリジェンス機能を確保するためには、膨大な情報を統合し、AI等を用いて解析する能力の強化が不可欠となっております。

米国では、我が国に先立ちまして、二〇〇一年の九・一一テロ、これが、省庁間がばらばらに情報を持っていたということがございましてテロの発生を防げなかったという反省から、テロ事件以後、収集したデータを、公開、機密情報を問わず統合データベースに格納して分析できる体制を取っております。

我が国では、各省庁が収集、分析したデータがばらばらに保管されておりますけれども、これではデジタル時代への対応は困難というふうに考えております。そのため、本法案七条による情報提供義務による情報の集約というのは、我が国安全保障確保の上でも必要と考えております。

次に、資料四ページになりますけれども、本法案成立後に積み残された課題について三点指摘をいたします。

第一は、先ほど申し上げましたけれども、膨大なデータを収集、蓄積、分析する能力の構築でございます。

現在のインテリジェンス活動では、公開情報、オシントが重要とされておりまして、一説には、インテリジェンス先進国でも九割がオシントと言われております。オシント能力には、膨大な公開情報の収集、蓄積、AIを用いた処理が不可欠になっておりまして、そのため、ソブリンクラウドを用いたデータの蓄積を行った上で、AIを用いた情報処理と解析が必要となります。

我が国では、諸外国に比べてこれらの能力構築が著しく遅れております。そのため、法案成立後にインテリジェンス機能を十分発揮するためには、相当の予算を確保した上で、統合データベース運用に必要なソブリンクラウドの構築、データ分析を行うAI処理機能の整備が必要となると考えております。

第二の課題は、迅速なインテリジェンスサイクルの確立でございます。

インテリジェンスサイクルは、カスタマーと言われる政治指導者や政策当局者から情報要求を受け、情報収集を行い分析した結果のインテリジェンスをカスタマーに返すという一連のプロセスになりますけれども、デジタル時代に入りまして、安全保障状況の変化が劇的に速くなっております。特に、サイバー攻撃ですとか影響工作への対処、これは一刻を争うことになっておりますので、迅速なインテリジェンスサイクルの確立、こういったものが法案成立後は求められるというふうに考えております。

第三でございますけれども、法案成立後、対外インテリジェンス機関が設置される場合には、活動の透明性と説明責任を果たすために、情報収集やインテリジェンス活動の根拠法と監査機関の設置が必要と考えております。

監査機関は、組織の内部の監査制度、行政府による監査制度、立法府による監査制度がございますけれども、このうち重要なのが立法府による監査制度の設置というふうに考えております。既に国会では、特定秘密保護法を監査いたします情報監視審査会、これがございますけれども、この発展的拡充も先生方には御考慮いただきたいというふうに考えております。

最後に、私自身、もう二十年以上前になりますけれども、二〇〇三年から二〇〇六年まで、若い頃、外務省の情報統括官組織でこういったインテリジェンスの分析の仕事をしておりました。また、二〇一四年から一六年までは国家安全保障局で、実際、サイバーの政策、事案の分析等を仕事として現場におりました。

そのときの経験から、日本の省庁では、重要な情報を他省庁に対してやはり秘密にした方がよい、総理に自分たちが直接報告した方がよい、こういった空気がいまだに存在しているというふうに感じております。しかし、国際情勢や安全保障環境は、こういった内々の競争や争いを許す余地がないほど悪化をしてきております。

特に、デジタル空間では、地理的な制約を受けることなく、容易に国境を越えて、外国の攻撃主体が我が国の中に入れる特性がございます。デジタル時代に入り、以前とは異なりまして、外国が直接日本国民の認知領域に影響を与える、世論をゆがめる、こういったことが現実になりつつあります。

インテリジェンス機能の強化につきましては、一部の方々から御懸念があるというのは理解をいたしておりますけれども、我が国が置かれました安全保障環境の厳しい状況に鑑みまして、本法案は必要不可欠というふうに考えております。先生方におかれましては、このような観点から、本法案につきまして慎重に御審議をいただきまして、法案の成立に御尽力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

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