白井康之京都大学名誉教授

2026年6月12日・第221回国会 衆議院 経済産業委員会 第13号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 8 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 189 発言)

京都大学の白井と申します。

本日は、このような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

私の専門は、電力機器工学、電力工学という分野でございまして、現在、産業構造審議会の保安・消費生活用製品安全分科会で電力安全小委員会の座長を務めさせていただいております。

この委員会では、昨年の三月より議論を深めてまいりまして、今年の三月に、太陽電池発電設備等の発電設備をめぐる保安上の課題と対応の方向性ということについて取りまとめをいたしました。

そこで、今般の電気事業法改正のうち、太陽電池発電設備等の安全性の向上に関わる部分、その論点について意見を申し述べたいと思います。

まず、基本認識でございます。

二〇一〇年代以降、再生可能エネルギーの導入が急速に拡大しまして、十年間で太陽電池発電設備の設備量は約六倍、風力発電の設備の設備量は約二倍ぐらいに増加しているという状況です。

その一方で、事故も増加しておりまして、発電設備における電気事故の件数、これが太陽電池の発電設備が最多になっているという状況です。

また、事故の形態を見ていきますと、火災や設備の飛散というものが多く、敷地全体的に火災が起きたというケースとか、飛散したパネルが民家を傷つけてしまっているというようなケースも確認をされているという状況です。

再生可能エネルギーの導入拡大は大変重要なイシューだと思いますけれども、地域社会と調和を図るという観点からも安全というのは非常に大事だというふうに認識をしております。そのため、こうした事故を防いでいくための対応が重要であるというのが基本認識でございます。

それで、事故実態に基づく具体的な課題について申し上げたいと思います。

委員会で審議を経て、太陽電池発電設備については主に二点の課題が挙がっております。

一点目は、架台や基礎といった支持物の構造安全性に関してです。

例えば、出力五十キロワット以上の設備では、破損事故の約四割を占めておりまして、技術基準で耐性を求めている風圧以下の風で、モジュール、いわゆる太陽パネルですね、太陽光パネル等が飛散し、近隣の建物を損傷するというような事故も発生しております。こうした事故は、設計段階での不備、いわゆる強度不足が一つの原因でありまして、調査を進めましたところ、構造計算書に強度計算が誤っている箇所があったとか、そういう事例も確認されております。この点は極めて重要な課題であります。

それから二点目は、PCS、いわゆるパワーコンディショナーの事故でございます。

破損事故の約六割がPCSに起因しておりまして、内部からの出火によって火災に至るなど、重大事故に発展するケースも確認されております。また、設置者が、原因究明や再発の防止を図るために、詳細な設備情報を持っている製造事業者の協力が十分に得られないで、設置者単独では十分な原因究明に至っていない、再発防止策につなげられないという場合も見受けられます。こうした製造事業者の協力が十分に得られないというような課題、これは風力発電設備などでも共通しておりまして、電気事業法上は設置者に保安責任が課されておりますが、その履行を行える基盤が十分ではないというような課題が浮き彫りになってきているというところであります。

提案しております法案の意義ですけれども、こうした課題を踏まえまして、今回の改正法案は、実効的な保安の確保に向けた重要な一歩であると考えております。

主な意義は二つございます。

一点目は、太陽電池発電設備の構造安全性に関する事前確認制度であります。

工事前段階で第三者機関の確認を求めることにより、設計段階でリスクを排除するということが可能になります。

それから二点目は、関係事業者の協力の確保であります。

事故原因の究明及び再発防止措置の実効性を高めるに当たって、製造事業者や輸入販売事業者、工事業者、そういう関係する事業者の協力が必要である。これは、責任の主体を変更しているものではなくて、設置者が果たすべき保安義務の履行を実質的に担保する、そういう仕組みであると言えると思います。

制度設計に当たっては、留意すべき点がございます。

まず、構造安全性に関する太陽電池発電設備の事前確認制度、これについて四点ほど申し上げます。

一点目は、太陽発電設備の設置件数が年間一万件を超えるという点です。

こうした点を考えると、第三者機関の確認を円滑に行うような工夫が求められるとともに、適切な構造安全性を有する設備に関する民間認証制度とか規格とか、こういうものを活用した標準化などを行って、環境整備を併せて図るということが求められると思います。

それから二点目は、多様な設置形態、これに対する対応です。

例えば、ペロブスカイト太陽電池のような軽量かつ柔軟で多様な設置形態が想定される設備とか、水上の設置型の設備とかの特殊な設置形態の設備については、今後の社会実装、そういうものの状況を見て、構造安全性の確認方法、それからその必要性、それについて検討を深めていくということが必要かなと考えております。

それから三点目は、既に全国に設置されている既存の設備の安全確保です。

こうした既設の設備についても、調査あるいは立入検査、場合によっては補修に関する指導を行うということによって、構造安全性の確保に向けて取り組むことが非常に重要な点だと思います。

最後に四点目ですけれども、行政機関の事故原因の分析能力の向上というのも必要だと思います。

製造事業者や輸入販売事業者といった関係事業者の協力確保については、行政機関においても事故原因の分析能力を高めて、実効性の高い保安施策の展開へとつなげていくということが重要である。

改正法案においても、製造事業者等に対する製品評価技術基盤機構、NITEによる立入検査の実施が盛り込まれております。しかし、再エネ設備というのは、PCSとか太陽光パネルとか、モジュール型の機器の統合体になっておりますので、独立行政法人であるNITEとか民間の専門機関とか、そういうところの更なる協力を得て、個々の機器に対する行政の分析能力、これを向上させていくことが必要であるというふうに考えます。

もっとも、太陽電池発電設備等の安全性の向上に向けては、設置者の保安力の向上とか、それから、スマート保安の促進とかサイバーセキュリティーの確保とか、本法案における措置以外の取組も重要であるというふうに考えております。国や設置者におかれましては、保安力の維持向上に向けた不断の取組を進めていっていただきたいというふうに期待しております。

最後に、電気は、経済、国民生活を支えるものであります。私たちは電気設備を通じて電気の恩恵を享受しております。そのためには、安全に電気が作られ届けられるということが重要であるということです。

今回の改正法案は、事故実態に即して制度を見直して、保安の実効性を高めるというものであります。大きな意義を有するものであると考えておりますが、引き続き、国や設置者などは、電気事故の状況を把握して、また、新しい技術の台頭も見据えて、保安レベルの維持と向上に不断に取り組むことが重要であると考えております。

以上とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

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