森本宏法務省刑事局長

2025年5月15日・第217回国会 参議院 法務委員会 第9号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 92 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 228 発言)

通信傍受にまずつきましては、一定の期間にわたって現に行われている他人間の通信内容を知るため、当該通信の当事者のいずれにも事前に告知しないで行うものであり、継続的、密行的に、憲法の保障する通信の秘密を制約する処分でございます。

こうした通信傍受の性質を踏まえ、通信傍受法におきましては、裁判所が傍受等の処分を取り消す場合において、当該傍受に係る通信が傍受すべき通信等に当たらない場合などには、検察官等に対しその保管する傍受記録の消去を命じることとしているものと考えられます。

これに対し、電磁的記録提供命令は、通信の秘密を制約するとしても、通信傍受とは異なり、処分の一時点において既に存在している電磁的記録の提供を命ずるものにとどまり、先ほど申し上げたような継続的、密行的に通信の秘密を制約する性質の処分ではないことから、電磁的記録提供命令と通信傍受の両制度を単純に比較することはできないと考えております。

その上で、現行刑事訴訟法の下では、捜査機関が証拠等を押収した場合においてその押収処分がその後取り消されたとしても、当該証拠の複製等を廃棄、消去することとはされておらず、直ちに裁判において証拠として利用することはできなくなるともされておりません。

最高裁判例におきましては、令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合に初めて証拠能力が否定されるという取扱いが確立しているところでございまして、したがって、通信傍受と同様の消去の仕組みを設けることは、我が国における刑事法の基本的な考え方と整合しないものであって、相当ではないと考えております。

また、いわゆる撮影新法におきましては、性的な姿態の撮影により生じたものなどが流通、拡散することによって撮影された被害者の権利利益が侵害される危険性を除去するため、特別の手続として検察官が性的な姿態が記録された一定の電磁的記録を消去するなどの措置を講ずることができることとされておりますけれども、今述べましたような趣旨は電磁的記録提供命令により収集される電磁的記録一般に妥当するものではないというふうに考えているところでございます。

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