馬渡直史最高裁判所事務総局家庭局長

2025年6月13日・第217回国会 衆議院 法務委員会 第23号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 81 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 176 発言)

委員御指摘の部分、これらはいずれも岡部喜代子裁判官の意見が記載されている部分でございますが、このうち、まず、裁判所ホームページ掲載判決文十八ページ七行目「次に、」から二十二行目末尾までを読み上げます。

次に、氏は名との複合によって個人識別の記号とされているのであるが、単なる記号にとどまるものではない。氏は身分関係の変動によって変動することから身分関係に内在する血縁ないし家族、民族、出身地等当該個人の背景や属性等を含むものであり、氏を変更した一方はいわゆるアイデンティティを失ったような喪失感を持つに至ることもあり得るといえる。そして、現実に九六%を超える夫婦が夫の氏を称する婚姻をしているところからすると、近時大きなものとなってきた上記の個人識別機能に対する支障、自己喪失感などの負担は、ほぼ妻について生じているといえる。夫の氏を称することは夫婦となろうとする者双方の協議によるものであるが、九六%もの多数が夫の氏を称することは、女性の社会的経済的な立場の弱さ、家庭生活における立場の弱さ、種々の事実上の圧力など様々な要因のもたらすところであるといえるのであって、夫の氏を称することが妻の意思に基づくものであるとしても、その意思決定の過程に現実の不平等と力関係が作用しているのである。そうすると、その点の配慮をしないまま夫婦同氏に例外を設けないことは、多くの場合妻となった者のみが個人の尊厳の基礎である個人識別機能を損ねられ、また、自己喪失感といった負担を負うこととなり、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した制度とはいえない。

このように記載しております。

また、委員御指摘の部分のうち、判決文十九ページ一行目「そして、」から十行目末尾までを読み上げます。

そして、氏を改めることにより生ずる上記のような個人識別機能への支障、自己喪失感などの負担が大きくなってきているため、現在では、夫婦となろうとする者のいずれかがこれらの不利益を受けることを避けるためにあえて法律上の婚姻をしないという選択をする者を生んでいる。

本件規定は、婚姻の効力の一つとして夫婦が夫又は妻の氏を称することを定めたものである。しかし、婚姻は、戸籍法の定めるところにより、これを届け出ることによってその効力を生ずるとされ(民法七百三十九条一項)、夫婦が称する氏は婚姻届の必要的記載事項である(戸籍法七十四条一号)。したがって、現時点においては、夫婦が称する氏を選択しなければならないことは、婚姻成立に不合理な要件を課したものとして婚姻の自由を制約するものである。

このように記載されております。

最後に、判決文二十ページ八行目「以上の」から十二行目末尾までを読み上げます。

以上のとおりであるから、本件規定は、昭和二十二年の民法改正後、社会の変化とともにその合理性は徐々に揺らぎ、少なくとも現時点においては、夫婦が別の氏を称することを認めないものである点において、個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き、国会の立法裁量の範囲を超える状態に至っており、憲法二十四条に違反するものといわざるを得ない。

以上でございます。

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