窪田哲也 (公明党)

2026年7月17日・第221回国会 参議院 本会議 第30号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 18 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 50 発言)

公明党の窪田哲也です。

会派を代表して、国旗損壊処罰法案に反対の立場から討論いたします。

私は、国旗を心から大切に思う一人です。しかし、国旗を傷つける行為に刑罰を科さねばならないような根拠は乏しく、法案は不要と考えます。本来、人に刑罰を科すような重い法案は、法制審議会で徹底的に議論し、閣法として国会提出され、正常かつ慎重、十分な国会審議を経て成立されるべきものです。

以下、主に十点にわたり、反対理由を述べます。

一、そもそも刑罰は、国家による最も強い権力行使であり、極めて慎重であるべきです。他の手段で利益を守れない場合に限り、最終手段として必要最小限で用いるべきです。法案は国旗を大切に思う国民感情の保護を目的としていますが、法益を保護するために教育を通じて国旗の意義を国民に涵養していくなど、刑罰以外の方法があると考えます。

二、それでもあえて刑罰を設けようとする以上、明白な立法事実が必要なのは言うまでもありません。ところが、今、国旗が損壊される事例がどれほど起きているのでしょう。提案者が示した事例は、いずれも他人所有の国旗の損壊であり、器物損壊罪で罰せられます。立法事実はないのです。

そこで、提案者は、将来に向けた予防的立法事実と説明します。しかし、将来、国旗を損壊する行為が社会に広がるような蓋然性はあるのでしょうか。提案者は、海外で国旗損壊が多発しており、そうした動きがSNSを通じて国内に伝わることを危惧しますが、説得力に乏しいと言わざるを得ません。

四、あらかじめ刑罰を科される犯罪行為を法律で定めておくという罪刑法定主義からも問題があります。人に著しく不快又は嫌悪の情を抱かせるとは何か。不快や嫌悪は極めて主観的な感情であり、何が処罰対象になるのかはっきりしません。条文上、罰則となる対象行為を明確に示せていないのです。

五、国旗損壊に嫌悪感を抱く人は確かに少なくありません。一方で、洋の東西を問わず、政府への抗議を表明するために国旗を燃やすなどの行為が行われてきたのも事実です。それを刑罰で抑え込もうとするのは、憲法が保障する表現の自由や思想、良心の自由に反します。

六、芸術的表現との線引きも明確でありません。例えば、現代アートの世界は、表現として社会問題を扱うケースが多く見られます。表現の自由に対する萎縮効果は否めないのです。

七、国連自由権規約委員会も、表現の自由の観点から、愛国心や国家の象徴に対する冒涜、不快な発言を刑事罰の対象にするのは許されないとの立場です。我が国は自由権規約の批准国ですが、規約の内容と相入れません。

八、国旗・国歌法制定時の尊重義務化をめぐる議論で、当時の小渕政権は、処罰をもって強制することが適当かという根本的な問題があるとの答弁書を閣議決定した経緯があります。法案は、尊重義務化を否定した過去の政府方針にも真っ向から反対するのです。

九、提案者は、外国国章損壊罪はあるが、自国の国旗損壊罪がないことのアンバランス解消を提案理由に挙げます。しかし、外国国章損壊罪の保護法益は我が国の外交上の国益であり、守るべき法益が釣り合っておらず、かつ、本法案は自己所有も処罰対象となるなど、新たなアンバランスを誕生させたことになります。

我が国は、明治四十年以来、刑罰を用いずとも自国国旗を大切にする一方、刑罰を用いてまで外国国旗を大切にしてきた歴史があります。これは、アンバランスどころか、我が国の誇るべき礼節の国柄だと私は感じます。

十、我が国では、これまで、公然と国旗を損壊するような行為は極めて限定的でした。多くの国民は、国旗に親しみを持ち、大切にしてきたのです。ところが、法案によって、国民が自然に尊重してきた対象が、処罰を用いて国民を威嚇する権威の象徴となってしまうのではないでしょうか。

以上が、主な、主な反対理由です。

今、SNSなどを通じて、国旗損壊の限界事例を試すような動きが起きています。本法案が逆に国旗をおとしめるような動きを誘発した事実を重く受け止めるべきであると訴え、国旗損壊処罰法案に対する反対討論とします。

御清聴ありがとうございました。(拍手)

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