宮出千慧 (参政党)

2026年6月5日・第221回国会 参議院 本会議 第19号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 12 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 18 発言)

参政党の宮出千慧です。

私は、会派を代表し、政府提出の令和八年度一般会計補正予算二案について、反対の立場から討論いたします。

まず冒頭、高市政権の積極財政について申し述べます。

我が党は、そもそも当初予算が小さ過ぎるという点をかねてより指摘してまいりました。政府は、プライマリーバランスの黒字化を成果として誇示しておりますが、これは裏を返せば、国民の暮らしよりも財政規律を優先した事実上の緊縮財政にほかなりません。

さらに、今回の補正予算の財源は全額赤字国債でありながら、政府は、前年度に予定していた赤字国債の減額分があるため実質の国債発行額は増加しないとして、さも財政規律を守ったという誇らしげな印象を受けました。しかし、これは枠の付け替えにすぎません。

こうした姿勢を見る限り、積極財政への真の政策転換は期待できないということが今回の補正予算ではっきり示されたと言わざるを得ません。

高市政権は、責任ある積極財政を掲げながら、しかし実態は、マーケットの信認を過度に意識する余り、必要な国債の発行すらちゅうちょしているように見えます。責任あるという言葉が、積極財政に踏み出せないことへの言い訳になっていないでしょうか。

マーケットの信認を得ることは重要です。しかし、その結果として国民の生活が行き詰まってしまったとすれば、それこそ本末転倒ではないでしょうか。政治が守るべき信認は、まず国民の信認であるはずです。

我が党は、必要な局面においては、新規国債の発行によって真の積極財政を実現するよう強く求めております。今、国がなすべきことは、減税によって国民の暮らしを直接助け、そして投資によって経済を活性化し、国民を豊かにすることです。

今回の補正予算は中東情勢の不透明さによるリスクを最小化するためということですが、予備費を積み増ししているにすぎず、何をするのか明確に見えてくるものがありません。中東情勢への対応というならば、まずは現場の切実な声を聞き、対応すべきではないでしょうか。

中東情勢の緊張を背景に、ナフサの不足が深刻化し、国内の様々な産業に影響が出ております。私自身、建設業に従事した経験がございますので、その現場のお話をいたしますが、現在、資材の価格高騰のみならず、入荷停止や納期遅延により、塗料がない、塩ビ管がない、断熱材がない、仕事をしたくても材料そのものが手に入らない。多くの業者が、今まさにこのような状態に追い込まれております。

更に深刻なのは、コロナ禍の際に受けた融資の返済時期と重なっていることであります。売上げがゼロに近い状態で、固定費と返済だけが積み重なっていく。政府は、相談窓口を設置し、低金利融資の制度も整えているから対応できると説明されますが、仕事ができない状態で融資を重ねることが本当に事業者の救済になるのでしょうか。借金の上に借金を積み上げるだけでは、あと何か月持ちこたえられるか分かりません。

今必要なのは、雇用調整助成金の拡充、そして休業補償、所得補償の実施であります。働きたくても働けない事業者と、その雇用を守るために、政府は今すぐ直接的な支援に踏み切る検討に入るべきではないでしょうか。

また、補正予算を組むのであれば、例えば、戦略十七分野や公共事業への投資、そしてエッセンシャルワーカーの賃上げのための予算も盛り込むべきだったのではないでしょうか。

全国各地で上下水道管の老朽化が急速に進んでおりますが、どこの自治体も財政難と人手不足に苦しんでおり、補助金を必要としております。しかし、下水道の改築のための交付金の交付を受けるためにはウォーターPPPの導入が決定済みであることが条件となっております。これは補助金をてこにした民営化への誘導ではないでしょうか。水道は、国民の命に直結する基幹インフラであります。国が責任を持って維持更新を担うべきと考えます。

さらに、国立病院の約八割が赤字という現実もございます。民間病院では負えないリスクを取って周産期医療や救急医療を担うことで、地域の基盤を支えてくれている公立病院に対する支援が足りていないのではないでしょうか。

また、医療、介護、保育などの現場で働く方々の賃金は、依然として上がらない状況が続いております。とりわけ、介護分野では深刻な人手不足が叫ばれておりますが、報酬改定を重ねても、なお全産業平均と比べて約八万円程度低い水準にとどまっております。人手が足りないと嘆き、外国人に選んでもらえる国を目指す前に、まず全産業平均に見合う処遇を実現することが先決ではないでしょうか。それを実現させて初めて人材確保の議論が成り立つということを申し上げます。

次に、先日、二〇二五年の日本人の子供の出生数が六十七万一千二百三十六人であったと公表されました。政府は、二〇三〇年が少子化対策のラストチャンスと繰り返し述べてこられましたが、そのラストチャンスは今まさに目の前に迫っております。

この日本の緊急事態とも言える少子化に対し、今やるべきことは既に明確ではないでしょうか。年収が低い男性は結婚ができません。やるべきことは賃上げです。積極財政でGDPを押し上げ、日本をもう一度希望のある国にすることです。

こども家庭庁が二〇二三年に、日本、アメリカ、ドイツ、フランス、スウェーデンの五か国で、十三歳から二十九歳の若者を対象に実施した調査があります。あなたの国の将来は明るいと思うかという問いに対し、明るいと答えた日本の若者は僅か四・四%、どちらかといえば明るいを合わせても二三・一%にとどまります。対して、ドイツでは両者を合わせると六一・八%に上ります。

更に深刻なのは、あなたが四十歳になったとき子供を育てているかという問いについては、そう思う、どちらかといえばそう思うと答えた日本の若者は僅か四二・八%、ほかの国は六〇%以上あり、スウェーデンでは七五・八%でありました。

この数字が示しているのは何か。日本の若者だけが自分の未来に希望を持てずにいるという厳然たる事実であります。

にもかかわらず、今政府が少子化対策の一環として推し進めようとしているのは家事支援サービスの拡充であります。もちろん、それを必要とする人がいることは理解いたします。しかし、税金を使ってそれをスタンダードにすることで、家庭そのものを解体するようなことがあってはなりません。問題の本質は、子育ての手間ではなく、子育てを選べない経済的不安にあるのです。

予言の自己成就という概念があります。結婚を望む若者はまだ八割以上おり、結婚した夫婦のうち約八割から九割は子供を持ちます。しかし、経済的な不安の中で、自分には無理かもしれないという思いが芽生えてしまう。思考が諦めモードに入ると、行動もそれに従ってしまい、結果として、自らの行動により、結婚もしない、子供も持たない未来を実現してしまいます。

今回の補正予算における中東情勢への対応は必須であります。ただ、我が国の未来を見据えたとき、最大の懸念事項は少子化です。今回の予備費の積み上げでは、誰がどのように救済されるかが分からず、国民の将来への不安がますます増大し、少子化が更に進むことになりかねません。

結婚し、子供を産み、家族とともに生きる。かつて我が国ではそれが当たり前でありました。しかし、今、その選択肢が多くの若者にとって夢のまた夢になりつつあります。結婚、出産、子育てを再び幸福な選択肢として国民の手に取り戻さなければなりません。

経済学者の宇沢弘文氏は、経済学は人間を考えるところから始めなければならないという趣旨を述べ、社会的共通資本の重要性を説かれました。政治もまた同じではないでしょうか。予算の数字の向こう側に、国民一人一人の暮らしがあり、不安があり、願いがあります。今、私たち政治家にその顔が見えているのかが問われております。

どうか、この国の未来を信じて汗を流し、日々懸命に努力する国民にもっと目を向けてください。国民が本当に何に困っているのかに目を向け、政府が今こそ支出をすべきときです。それを切に願い、補正予算案への反対討論といたします。

御清聴ありがとうございました。(拍手)

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