吉田忠智 (立憲民主党)

2026年5月20日・第221回国会 参議院 憲法審査会 第3号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 4 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 18 発言)

立憲民主・無所属の吉田忠智です。

参議院議員選挙における一票の較差について、会派を代表して意見を申し上げます。

まず、参議院選挙の在り方について、我が会派は、参議院はより多様な立場の民意を反映させる院と捉えた上で、職域単位と地域単位という現行制度の枠組みを基本にすべきと考えます。そして、地域単位での民意の集約は、歴史的、政治経済的、文化的な観点や住民のアイデンティティーなどの観点から、都道府県単位が最も合理的であり、また国民にも広く定着しているところです。

他方、合区については、投票率の低下、無効投票、白紙投票の増加など民主制の根幹に関わる弊害が明らかとなるなど、制度として限界に至っており、その不合理は解消されるべきと考えます。

そして、我が会派は、そのための取組として、憲法改正の手段にはよらず、歴代の最高裁判決が繰り返し示している一票の較差と国会裁量に関する基本論理に基づき、まずは参議院が国民のために果たすべき衆議院とは異なる独自の機能や役割、すなわち参議院の在り方論の検討を求め、議長の下の参議院の改革協議会ではその実施が決定されているところです。

我が会派は、今後の参議院の役割として、高齢化や人口減などの地方問題への対処や緊急集会の機能強化を含む広域災害への対処、六年という固定、長期の任期も活用した行政評価機能の拡充などを提案しており、改革協議会においては、これらの事項の有識者ヒアリングは今週の二十二日より開催されます。

一方で、合区の解消のための憲法改正については、十四条の投票価値の平等という国民の基本的人権を著しく損ね、国民主権、議会制民主主義や四十三条の全国民の代表制との矛盾、さらには我が国として連邦制を採用していないことなどから、憲法の基本原理等に照らして強い疑念を呈さざるを得ず、立憲民主党として明確に反対をいたします。

さて、高市総理の改憲ありきの言動とともに、参議院における合区問題の取組の大きな妨げになっているものに、参議院の緊急集会の権能や機能を不当におとしめる憲法違反の解釈に基づく衆院憲法審査会における国会議員の任期延長改憲の議論があります。改革協議会の参議院の在り方論の検討項目には緊急集会の機能強化が明記されていますが、その緊急集会について、衆院憲法審では、二〇二二年の通常国会から常態化した毎週開催の下で、あろうことか、平時の制度、七十日間限定、衆議院の優越事項は権限外などの暴論が繰り広げられてきました。

こうした状況に対処するために、二〇二二年の臨時会を経て二〇二三年の通常国会より本格的に講じられた本審査会での立憲会派の論戦によって緊急集会の正しい憲法解釈が共有されることになり、その結果、任期延長改憲を唱える政党においては衆参で緊急集会をめぐる見解が分裂するなどの事態が生じ、自民党におかれては、二〇二四年八月に、現在の衆議院憲法審査会長である古屋憲法改正実現本部長の下で、七十日間限定説など全て否定した正しい党見解がまとめられるに至っているところです。

ところが、先週の五月十四日には、衆議院の憲法審査会において緊急事態条項のイメージ案の説明が衆議院法制局によって行われました。この中には、緊急集会を定めた五十四条の改憲条文案や緊急集会と議員任期特例などとのすみ分けなるものの見解などが示されていますが、会議録を精査すると、相変わらずの七十日間限定説などを根拠とするとともに、このイメージ案全てを通じて、緊急集会が日本国憲法の中に創設されたその立法事実や根本趣旨が何ら顧みられていないものであると推察されるところです。

すなわち、緊急集会は、ナショナルエマージェンシーという大震災等の深刻な国家緊急事態にも対処する有事の制度として制定され、任期延長の間に太平洋戦争が開戦される等の戦前の権力の濫用の反省を根本趣旨とするものであって、議員任期特例とのすみ分けを考えること自体が緊急集会そのものの否定であり、いかなるときにも民主政治を徹底するために国民代表である参議院議員に緊急集会を担わせるとした金森徳次郎大臣の憲法制定議会での答弁を、我々参議院議員は深く胸に刻む必要があります。

さて、こうした中、立憲民主党が昨日十九日に開催した党の憲法調査会において、衆議院法制局より当該イメージ案の説明を受け入れられないという事態が生じました。本件については、さきの幹事会での自民党中西筆頭の説明だけでは、衆議院憲法審の新藤筆頭幹事が止めたのか、衆議院法制局が立憲民主党への説明を行わないことを新藤筆頭らが追認したのか、なおその真相は明らかでないと考えていますが、いずれにしても、公党である立憲民主党が、衆議院憲法審で衆議院法制局が説明し、衆議院憲法審のホームページでも公開されている資料の内容説明を受けられないという事態は断じてあってはならないものです。

憲法制定議会において、金森大臣は、緊急集会の制度趣旨などを説明する中で、そもそも二院制を採用した目的、すなわち参議院を創設した目的について、専制の排除、慎重審議の確保、国民のための世論の実現など、三つを掲げています。憲法は、憲法問題の調査審議や憲法改正の議論も二院制の下で行うことを定めています。

憲法改正の議論を衆院憲法審だけで行う、あるいは特定の公党を排除して行うことは専制そのものであり、それは慎重審議を喪失させ、国民のための世論の実現を阻むものであることは明々白々です。ましてや、任期延長改憲が、緊急集会の根本趣旨や、その権能や権限をめぐる議論と切り離せないものである以上、我々参議院議員がその内容を確認しないわけにはまいりません。

また、先ほどの参院の立憲民主党の論戦による衆議院憲法審の改憲議論への影響に加えて、二〇二三年五月に衆院憲法審査会に提出された衆議院法制局の緊急集会に関する資料においては緊急集会の立法事実の根幹を詳細に表した当時の日本政府とGHQとの交渉記録の箇所がなぜか記載されていないなど不可解な箇所が三点あったものを、立憲民主党の参議院議員による憲法調査会などの指摘によって、そのうちの二点が改善された補訂版が二〇二五年三月に衆院憲法審に再提出された事実は極めて重要です。

なお、残りの一点の、多くの憲法学者が七十日間限定説などを採用しているという衆院資料における学説整理については、昨年四月十六日の本審査会における川崎参議院法制局長の答弁によっても明確に否定されているところです。

さらには、さきの総選挙まで立憲民主党の議員として衆院憲法審に所属していた者からは、任期延長改憲の根幹に関する複数の批判意見が全く反映されていないイメージ案となっているとして、その中立的かつ専門的な立場からの整理、作成という説明に疑問を呈する意見も示されており、立憲民主党としてこれらの意見に対する一定の責任も有するものです。

また、同じ五月十四日の衆院憲法審では、維新の馬場委員より、参議院が国会の権限を一身に担う事態まで想定して参議院選挙で投票する有権者はほぼ皆無などと、参議院の存在やこの間の参議院での緊急集会に関する真摯な議論を否定し、何よりも国民、有権者を愚弄する複数の暴言がなされています。馬場議員は、会議録を拝見する限り、二〇二三年以降の参院憲法審での緊急集会に関する議論に対して具体的かつ論理的な反論を行うこともなく、一貫して七十日間限定説などを唱え続けた挙げ句、こうした暴言に及んでいますが、そうした姿勢は改めるべきであるとともに、十四日の発言について国民及び参議院への謝罪と撤回を行うべきと考えます。

結びに、いかなる立場であっても、憲法に関する議論は正々堂々と、事実と論理をもって立憲主義と法の支配の原理に基づいて行うべきこと、そのための良識の府、参院の果たすべき役割の重要性を申し上げ、私の意見とさせていただきます。

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