志摩恭臣徳島弁護士会合区問題PT座長/弁護士

2026年4月15日・第221回国会 参議院 憲法審査会 第1号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 26 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 86 発言)

徳島弁護士会の志摩でございます。

この度は、このような機会を与えていただき、ありがとうございます。

私の所属する徳島弁護士会では、昨年四月に参議院議員選挙区選挙の合区制度の早急な解消を求める意見書を発表しました。本日は、その意見書を基礎にお話をさせていただきます。

まず、当会がこの意見書を発表することになった経緯について説明します。

合区制度は、平成二十七年の公職選挙法改正により、一票の較差の是正のため、四県を二合区とし始まりました。合区制度下では、合区対象四県とも、以前よりも有権者の関心が高まりづらくなりました。最高裁判決でも指摘されているように、各県共に、投票率の低下、無効票の増大という有権者の関心離れをうかがわせる結果が出ています。

とりわけ、徳島県においては、過去四回の合区制度での投票率が都道府県別で下から二位、一位、一位、一位と最低を記録し続けています。このような合区制度の弊害に対し、ずっと合区制度に対する違和感を持ち続けていました。徳島・高知合同選挙区では、令和五年十月に補欠選挙がありました。その際の徳島県の投票率は二三・九二%にとどまり、有権者の四分の三が棄権し、国政選挙における過去最低の投票率となりました。これを機に、私は、合区制度の解消に取り組めないかと考えるようになり、当会で合区問題PTを設置し、議論の上、意見書を発表したのです。

当会の意見書は、三つのことを書いてあります。順に説明します。

意見書の第一項には、合区は、合区内有権者の選挙権の行使を制限するものであり、憲法の基本原理である国民主権に抵触し、公務員選定、罷免権を侵害するなど、憲法違反の疑いがあることを訴えています。

国民主権を基礎とする我が国の憲法において、国会議員を選ぶという選挙権は民主政治の根幹であります。この投票する権利に、例えば住む場所により質的に差異があってはなりません。現在の選挙制度においては、衆議院は小選挙区及びブロック別の比例代表で、参議院は都道府県単位の選挙区及び全国一区の比例代表で成されています。基本的に、いずれの選挙制度も各有権者の選挙権の内容は同じはずです。ところが、参議院議員選挙区においては、原則的に都道府県単位の選挙区であるところ、鳥取県、島根県、徳島県、高知県の四県のみ二県で一つの選挙区とされ、他の都道府県単位の選挙区とは明らかに質的に差異が設けられているのです。

合区制度は、一票の較差の解消が目的でした。しかし、識者も指摘しているように、合区対象県においては、参議院議員選挙の投票行動に変化があり、投票率が低下し、無効票が増大しています。

本来、東京都民も鳥取県民も徳島県民も同じ日本国民であるのに、合区対象の四県のみ自分たちの県は一人前に扱われていない、自分たちは二県で一人しか代表を出せないとなりますから、国民がひとしく有する公務員選定、罷免権、国民主権が侵害されていることになります。これは、一票の較差のような量的な問題を超えて、質的に異なる選挙制度を強いられているのです。よって、合区制度が憲法違反の疑いがあります。

また、意見書には明記していませんが、合区制度の内実は、異なった選挙制度の混在ではないかと考えています。参議院選挙制度の改革案にブロック別の選挙区を求める見解があります。用いるブロックの数、概念は、広狭様々あります。

現在、合区制度が導入されている鳥取県と島根県は山陰ブロックと表現できます。徳島県と高知県も南四国ブロックと区分できます。すなわち、現在の合区制度は、他の四十三は都道府県別の選挙区とし、合区四県のみブロック選挙区を導入している、そう解釈できるのです。

そう考えると、参議院の選挙区は統一した基準で区割りをすべきなのに、都道府県別で構成される選挙区、ブロック単位で構成される選挙区という異なった制度が混在していることになります。異なった複数の区割りで選挙区を設定することは、その両者が異質であり、そして国民代表の選出過程に弊害が生じている以上、国民主権の理念に反するのです。

意見の趣旨第二項は、一票の較差の判定についてです。

一票の較差の判定基準は、判例の集積により、一応確立した感があります。しかし、私は、当時の一連の最高裁判決を契機に合区制度が導入された頃から、一票の較差の判定手法に疑問を持っていました。一票の較差の議論の本質は、国民が自分たちの代表たる国会議員を選出する際、その価値の差ができる限り小さくあるべきだというものです。ここで価値が問題になるのは、各国民の、衆議院議員を、参議院議員を選ぶ重みができるだけひとしくあるべきということであり、それぞれの比較対象は、衆議院議員を選ぶこと自体、参議院議員を選ぶこと自体のはずです。

現在の選挙制度は、衆議院選挙も参議院選挙も、各国民二つの投票から成り立っています。そうすると、各国民の衆議院議員を選ぶ重み、参議院議員を選ぶ重みは、それぞれ二つの投票を併せて議論すべきです。ところが、一票の較差は、衆議院、参議院共に選挙区選挙部分についてのみ論じられています。しかし、本当は、衆議院選挙全体、参議院選挙全体を通じて、各国民の国会議員を選ぶ権利が他者に比べ軽んじられているかどうかを議論すべきなのです。

私たちが行っているのは、二枚の投票を通じて一つの参議院議員選挙なのです。そうすると、一票の較差は、選挙区と比例代表を個別に判定することなく、選挙区、比例代表を総合した参議院選挙全体で判定すべきだということになります。実は、この考えは、補足意見ながら最高裁判決にも同種の考えがあります。

さて、仮に選挙区と比例代表を切り離さず総合的に判定すればどの程度の一票の較差になるのか、関心があるのではないかと思われます。昨年の参議院選挙時で合区が解消されたとして、一票の較差を算定した表を資料に添付してあります。これによれば、合区制度を解消したとしても、一票の較差は二・七八倍程度にとどまります。

意見の趣旨第三項は、合区制度解消後の選挙制度の在り方についてです。

合区制度解消後の選挙制度はいろいろ議論されていますが、当会では都道府県単位を維持するのが望ましいとしています。都道府県は明治期から確立した制度であり、一貫して現在の一都一道二府四十三県で安定している制度です。国民も、自分は何々県の出身など、属性把握に普遍的に用いており、我が国を合理的に分割、区分する手法として、また各国民がそれぞれ帰属意識を持ち得る存在として有効に機能していることは疑いがありません。

参議院が一貫して都道府県単位で選挙区としてきたのも、都道府県が歴史的にも、政治的、経済的、社会的、文化的にも地域としてのまとまりを有する行政単位として確立し、それを議員の選出単位とする合理性があったからであり、議員の選出単位として地域的なバランスからもこれに勝るものはありません。

また、各都道府県にはそれぞれの課題、要望等があり、国政ではそれらを効率的、合理的に集約し、反映させる責務を有しているところ、都道府県単位での議員の存在がかかる集約、反映のためにも不可欠です。このことは、災害発生時の対応に地元議員が尽力する例で明らかです。加えて、我が国は、二院制を採用し、二つの議院を有する以上、多様な民意を国政に届けるために両院は異なった選挙制度とすべきです。参議院が都道府県単位を採用しているのは、その観点からも有効です。

憲法四十七条では議員の選挙に関する事項は法律事項とされ、その定め方は、それが合理的である限り、両院制などの基本理念に即している限り、基本的には立法府の裁量に委ねられています。仮に、立法府の合理的な裁量の結果、都道府県単位を選挙区とすることが是となった場合で、仮に一票の価値を同等にしようとすれば、東京都と鳥取県では二十五倍以上の人口較差があることから、鳥取県に一議席を割り当てるために東京都には二十五議席を割り当てなければならず、非現実的です。そうすると、立法府の合理的判断により、参議院で都道府県単位の選挙区を採用することが適当であると認められるのであれば、それを採用する限り、必要な範囲で一票の価値の均衡は制約を受けざるを得ないと考えるべきです。本来投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮すべき他の政策的目的ないしは理由との関連において調和的に実現されるべきものだからです。

なお、合区制度解消と一票の価値均衡を図るため、ブロック制度の導入の意見がありますが、それには消極的です。その理由は、ブロック制度はより広域の選挙区となり、議員と有権者の関係が希薄になりかねないこと、都道府県の中で参議院議員が誰もいないという事態が発生しかねないこと、ブロックは合区制度と同様の弊害があり得るからです。

以上で私の意見陳述を終えます。

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