本日は、大変貴重な機会をいただき、ありがとうございます。丸紅経済研究所社長の今村でございます。
私は、我が国と世界で貿易投資を行っております丸紅のシンクタンクを率いまして、世界情勢、世界経済、国際金融などの分析を日々行っております。中でもアメリカの政治経済の分析あるいは日米経済の関係が専門でございます。
本日は、この議題の中でも、本邦企業の供給網の強靱化への対応として、貿易保険法の改正につきまして意見を述べたいと思います。そして、前提となっています必要な外国政府との取決めということで想定されています日米政府の戦略的投資イニシアティブ、これにつきましてもより詳しく御説明したいと思います。
私自身は、このイニシアティブは、うまく運用、適切な運用ができれば、日米関係それから日本経済、日本企業にとって中長期的に十分な恩恵をもたらし得ると考えております。
具体的に御説明させていただきます。
最初に、アメリカの優位性といいますか、日本にとって投資すべき対象であるということの御説明でございます。
アメリカは、引き続き世界最大の経済大国であり続けると思います。IMFの世界経済見通しによれば、二〇三一年のアメリカの名目GDPは約三十九兆ドルと見込まれ、日本の約八倍に達する見通しです。そして、そのアメリカは、先進国では数少ない人口増加が続く国でございます。人口は、二〇二五年の三億五千万人から二〇五〇年までに三億七千万人まで増える見通しでございます。実質経済成長率も、この間、二〇五〇年まで年平均一・七%が見込まれると、非常に安定成長ができる国でありまして、しかもそれが内需主導でございます。日本企業から見れば、世界で最も進出して事業と収益を伸ばしやすい国がアメリカでございます。
経済規模と成長率で見れば、アメリカに次ぐ大国として中国がございます。しかし、中国は、これだけ発展を遂げてきてもなお、輸出主導であり、供給過剰の経済であります。これは恐らく今後も相当変わらないと思われます。アメリカとは経済発展のモデルが極めて異なっておりまして、日本企業にとっては、この中国への投資を通じて収益を上げ、拡大していくということは非常に難しいということが言えると思います。
一方で、日本国内でございますけれども、今回の法案ですね、この産業競争力強化法の一部改正等につきましても、やっぱり国内投資の促進ということが強く示されておりまして、私もこの投資の拡大は十分可能であると思いますし、また必要であると思います。ただ一方で、人口減少等の日本固有のやっぱりこの制約を考えますと、日本企業としましては、国内投資と海外投資、とりわけアメリカへの投資の両輪で成長を続けていくことが大事であり、それが日本経済の繁栄の持続にも必要であると考えております。
そして、その日本企業でございますが、既にアメリカへの投資では近年勝ち筋を見出しつつあります。アメリカの発表によりますと、二〇一九年以降、日本企業はアメリカへ年平均四百億ドル近い投資を行い続けてきており、直接投資を続けてきております。二四年末の最新のデータによりますと、投資残高も八千百九十二億ドル、約百三十兆円に達しまして、これはアメリカに投資する国としては世界最大になっております。
その対米投資から得られる収益も着実に増え続けておりまして、最近は年間三百五十億ドル近くに達しております。直接投資の収益はその多くが実際にはアメリカでの再投資に回っているのが現実でございますが、そうはいっても、近年は配当などで日本に還流される金額も非常に多くなってきております。積極的にアメリカに投資する企業が日本でも株主還元という形で増やしておりまして、日本での株価の上昇にもつながっているということで、十分波及する良い好循環が生まれつつあるのが現実でございます。
かつて、日本とアメリカの経済関係は貿易、中でも輸出が中心、日本からの輸出が中心でございましたし、対米貿易の黒字の多さがアメリカでアメリカの雇用を奪っているなどと批判を浴び続けてきた経緯がございます。
かつて、アメリカの貿易戦争の相手も日本だった時期がございます。日本企業は、この経験を教訓として、八〇年代からアメリカとの経済関係を貿易から雇用創出、アメリカで雇用を創出する投資への転換を進めてまいりました。自由貿易の観点からはやや疑念というものもございましたけれども。
しかし、その後でございます。二〇〇〇年代から中国がアメリカに対して巨額の、過去の日本をはるかに上回る輸出と貿易黒字を記録するようになってきております。競争に敗れたアメリカの製造業の雇用が大きく失われ、チャイナ・ショックという言葉がアメリカで広がっております。保護主義がアメリカで超党派で支持され、自由貿易がアメリカの国益に反するという見方が広がっております。対中強硬姿勢をそして唱えたトランプ氏が二〇一六年の大統領選で勝利し、その後も、米中の貿易戦争、それから昨年のトランプ第二次政権によります高関税政策につながっているという経緯もございます。これを振り返れば、日本企業の貿易から投資への転換は正しい判断であったと思われます。
そして、ただ、その投資が海外に開放されているアメリカ、非常にオープンなアメリカとはいえ、実際には外国企業がアメリカに投資をして安定した収益を得られるようになり、しかも、更にその規模を拡大していくということは実は容易なことではございません。日本も一年当たりの投資収益が今三百億ドルを超えるようになったのは二〇二〇年代に入ってからでございます。同水準の投資収益を得ている国も、日本以外ではカナダ、ドイツ、イギリスぐらいでございまして、いずれも日本に匹敵する投資残高のある国であります。
アメリカでのこの投資の成功には、アメリカでの競争環境、市場の特性、雇用慣行ですとか法規制、それから社会との共生など、熟知することが必要でございまして、やはり経験が必要でございます。アメリカで、あるいはこのアメリカよりも強い製造業ですとかサービス業が自国にあるということも大事でございまして、こうした国のみが着実に投資を伸ばしているのだと思います。
実際、アジアの中国、ベトナム、韓国、台湾などは、対米輸出、それから貿易黒字も多いんでありますが、直接投資の残高は一千億ドルに達しておりません。やはり、まだまだ対米投資を伸ばし得る条件がそろっていないのが現実でございまして、韓国、台湾は今このこうしたアメリカ向けの投資を増やそうとしておりますけれども、まだまだ苦戦が続くと思われます。そして、今後も投資を伸ばし得るのが、これを、条件をクリアしております日本であるということになります。
とはいえ、日本企業の対米投資にもやはり限度がございます。投資を行いますのは個社でございまして、一件当たりの規模はどうしても限られます。各社厳しいやはり投資基準を設定しておりまして、対象が絞り込まれております。必然的に大型、特にある意味リスクの大きい挑戦的な案件というのはどうしても少なくなるものが実態でございます。
そして、そうした下で具体的に例えばこれがどのような弊害を生んでいるかというと、例えばアメリカの先端産業でございます。日本企業の投資が伸びる対象とはちょっと異なる可能性が高いと思われます。
例えば、現在、アメリカで大手テック企業が、激しい競争を通じて、極めて積極的にAI関連あるいはデータセンター等への投資を続けております。これが実は今のアメリカ経済の成長を支えている面もございますけれども、ここに直接挑む日本企業は極めて少ないと思われます。投資規模が非常に大き過ぎますし、日本企業が決して業界内で優位な立場を確保しているわけではございません。投資対象としては、この分野、非常に有望ではありますが、見送る企業が多いのが大半になってくると思います。さらに、アメリカの国内企業だけでも、アメリカで投資機会がありながら、なかなか実現しないといったインフラ等の分野もたくさんございます。
そうした個社の投資の限界を超えて日本の対米投資の新境地を切り開く、あるいは日米関係を新たなレベルまで深化させる可能性を有しておりますのが今回のこの日米政府の戦略的投資イニシアティブであると思います。
この両政府間の投資に関する共同ファクトシートに記されておりますエネルギー、AI向け電源開発やAIインフラ、重要鉱物等の分野、もう発表されたこの第一陣、第二陣のプロジェクトを見ましても、いずれもやっぱり個社の直接投資では手が届かない、このイニシアティブが向いているということを示している内容になっていると思います。
そして、この日本の投資法人とアメリカの現物出資で組成されます特別目的事業体によるプロジェクトでございますけれども、これ一種のGOCOですか、国有施設の民間操業スキームでございます。JBICと民間金融機関からの融資、それからJBICの出資とアメリカからの現物出資というものを組み合わせたこの事業体が、民間事業体、者に事業運営を委託する役割分担もやはり今回は必要になってくるというふうに見ております。
個社のこの対米直接投資の多くは、やはり日本の一定規模以上の企業にしかできない、そうしたことも実は今回のこのイニシアティブの特に魅力といったものを示していると思います。
このイニシアティブは、プロジェクトに参加する企業、金融機関の役割、リスク負担が限定され、融資、プロジェクト運営、製品供給、これ輸出も含みます、日本からの、それからこの製品を引き取るオフテーカーといった機能に日本企業が参加する機会が多くなります。個社の直接投資よりもはるかに多くの企業、それから大企業から中小企業まで、スタートアップまでも関与が可能になるスキームでございまして、日米の経済関係、それから日米をつなぐサプライチェーンに参加できる企業の数も増えてくることが期待できます。幅も広がると思います。アメリカにとっても、このイニシアティブなしでは実現しなかった案件が十分あり得るということでございまして、大きな成果になってくると思います。
実際、この発表済みのプロジェクトを見ましても、関連機器等の供給とオフテーカーとしての関与というところから、日本企業が多く関心を示しております。一方で、この関心を示す日本企業でありますが、よく見れば、実はアメリカで投資済みの経験が多い企業もやっぱりこの中で多く占めているということでございまして、やはりアメリカでしっかり投資と事業の経験がある日本だからこそ、このイニシアティブをしっかり回していけるというところも、やはりこの可能性を既に示唆しているというところかと思います。
そして、このイニシアティブを支えますのは日本からの融資でございます、金額的にも特に大きいのはですね。とりわけ過半を占めると予想されます民間金融機関の融資でございます。
各金融機関は、もちろんアメリカでのファイナンスの経験は豊富でございますが、従来のファイナンス手法では、独自のプロジェクトの各行によります検証あるいはデューデリジェンスといったものが不可欠でございまして、これどうしても相当の時間とコストが必要になってしまいます。イニシアティブの資金の規模も、従来のファイナンス方法では各金融機関を圧迫するリスクもあります。NEXIの保証付きの融資は、この民間金融機関のリスクをカバーする形になり、イニシアティブとプロジェクトの制約を取り払い、円滑な運用をするという意味で重要な意味を持っていると思います。
一方で、このイニシアティブの資金の規模の大きさが、貿易保険法の改正を通じたNEXIの特定引受業務の創設と財務基盤の強化を必要としていると思います。イニシアティブの着実な履行、日米経済関係の深化、日本企業のアメリカに関わる事業と収益の拡大、日米関係の一層の安定の鍵も握っているというふうに思っております。
そして一方で、このNEXIの保証によりまして個々のプロジェクトのリスクがもちろん消えるわけではございません。全ての案件がバンカブル、いわゆる銀行融資が可能であること、それからフィージブル、プロジェクトに関わる企業が収益を持続的に確保できることがもちろん必要でございまして、期限やイニシアティブの目標規模の達成が優先され、案件の精査が不足するということはあってはならないと思っております。この点がこのイニシアティブのリスクであり、懸念というところではちょっと本質になってくるかと思います。
しかし、この案件の失敗は、日本だけでなく、アメリカにも実は多大な損失をもたらします。アメリカにとっては、案件実現が勝利ではなく、事業継続までしっかり確立しなければ、やがてその事業は撤退、そして雇用の減少ですとかということがなり、結果としてアメリカにまた新たな産業の衰退地域、ラストベルトを生み出してしまうことになりかねないということであります。日本だけが損失を被り、アメリカは得をするという組合せにはないということも、やはり私は思っているところでございます。
そして、この案件の収益性や持続性の確立というところでは、分散された役割を担う企業、金融機関、政府がそれぞれリスクを洗い出し、取り除いていくことがもちろん大事でございます。
イニシアティブでは、日米両国で構成いたします協議委員会、投資委員会の厳格な判断がとりわけ重要になります。中でも、日本政府、JBIC、NEXI等が、協議委員会やその前段階での案件審査、不適格案件の拒否が、しっかりやっていくことが必要になってくるわけでございまして、イニシアティブの成否もこのスキームでは協議委員会に大きく懸かってくるかと考えております。
JBICとNEXIに損失が生じれば、これ国民負担の増大ということになってしまうわけでございまして、イニシアティブそのものを揺るがすことになりかねません。そうしたところから、やっぱり、案件審査に、だからこそ深く関わり、リスク解消に、例えばNEXIがその機能を十分発揮していくためにも、この貿易保険法の改正が重要であると思います。
ファイナンスは、事業の進捗に応じて、今回このスキームでは段階的に実行する仕組みになっています。それでもイニシアティブの規模の大きさがありますので、民間金融機関のドル調達ですとか融資余力などの懸念はどうしても残ってしまう部分はあります。そこはいろいろ日本以外の金融機関の関与を必要に応じて求めていく、あるいはプロジェクトを成功に導く優れた事業主体そのものの確保といったことも重要になってまいります。
こうしたことを併せてしっかりと進めていくことが大事でございまして、改めて、さらに、今後でありますけれども、日米政府のこのイニシアティブを構成項目とした日米関税合意がそもそもございました。その後のアメリカの高関税政策の、実は変化しているわけでございまして、前提が大きく変わってきている。そして、具体的なプロジェクトや案件の進捗も通じてイニシアティブと、日米の意味も変わってきているということでございまして、そうしたものも踏まえて、日米政府間でしっかりこうしたもの、このイニシアティブはどれが一番具体的に今良いのかということをしっかりその都度やはり協議していくことが大事かと思います。
そして、今、日本だけがこうしたことをしっかり行えている、湾岸諸国ですとかEU、韓国とも似たプロジェクトやイニシアティブをつくっておりますけれども、なかなか投資が増えていないという現実を踏まえて、日本がしっかり行えているということをしっかりアメリカに訴え、そしてこのイニシアティブの重要性を両政府が共有していくということ、そしてそのためにもやっぱり貿易保険法の改正が必要であるということを申し上げたいと思います。
以上でございます。
8浜浜口誠(国民)
経済社会情勢の変化を踏まえた企業の事業活動の持続的な発展を図るための産業競争力強化法等の一部を改正する法律案を議題とし、参考人の皆様から御意見を伺います。
この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ御出席をいただき、誠にありがとうございます。
皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、深尾参考人、今村参考人、木村参考人の順にお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただき…
この発言のページ
9深深尾京司一橋大学経済研究所特命教授
一橋大学の経済研究所の深尾です。
私の専門は、生産性の計測、マクロ経済学、それから経済史です。今日は、こういった視点から、設備投資促進の意義、今回の法案への期待、留意すべき点等についてお話ししたいと思います。
配付していただいた資料の二ページ目を御覧ください。この図は、日本全体の労働生産性、労働生産性は労働時間当たりどれだけGDPをつくり出したかで測りますが、その上昇とその源泉を表しています。
標準的な経済学によれば、労働生産性の上昇は、スライドの右側に書いたように、三つの要因の和と考えることができます。一つ目は資本装備率、労働時間当たりの資本投入…
この発言のページ
10浜浜口誠(国民)
ありがとうございました。
次に、今村参考人、お願いをいたします。今村参考人。
この発言のページ
- (上の発言)
11今今村卓株式会社丸紅経済研究所代表取締役社長
本日は、大変貴重な機会をいただき、ありがとうございます。丸紅経済研究所社長の今村でございます。
私は、我が国と世界で貿易投資を行っております丸紅のシンクタンクを率いまして、世界情勢、世界経済、国際金融などの分析を日々行っております。中でもアメリカの政治経済の分析あるいは日米経済の関係が専門でございます。
本日は、この議題の中でも、本邦企業の供給網の強靱化への対応として、貿易保険法の改正につきまして意見を述べたいと思います。そして、前提となっています必要な外国政府との取決めということで想定されています日米政府の戦略的投資イニシアティブ、これにつきましてもより詳しく御説明したいと思います。
私自身は、このイニシアティブは、うまく運用、適切な運用ができれば、日米関係それから日本経済、日本企業にとって中長期的に十分な恩恵をもたらし得ると考えております。
具体的に御説明させていただきます。
最初に、アメリカの優位性といいますか、日本にとって投資すべき対象であるということの御説明でございます。
アメリカは、引き続き世界最大の経済大国であり続けると思います。IMFの世界経済見通しによれば、二〇三一年のアメリカの名目GDPは約三十九兆ドルと見込まれ、日本の約八倍に達する見通しです。そして、そのアメリカは、先進国では数少ない人口増加が続く国でございます。人口は、二〇二五年の三億五千万人から二〇五〇年までに三億七千万人まで増える見通しでございます。実質経済成長率も、この間、二〇五〇年まで年平均一・七%が見込まれると、非常に安定成長ができる国でありまして、しかもそれが内需主導でございます。日本企業から見れば、世界で最も進出して事業と収益を伸ばしやすい国がアメリカでございます。
経済規模と成長率で見れば、アメリカに次ぐ大国として中国がございます。しかし、中国は、これだけ発展を遂げてきてもなお、輸出主導であり、供給過剰の経済であります。これは恐らく今後も相当変わらないと思われます。アメリカとは経済発展のモデルが極めて異なっておりまして、日本企業にとっては、この中国への投資を通じて収益を上げ、拡大していくということは非常に難しいということが言えると思います。
一方で、日本国内でございますけれども、今回の法案ですね、この産業競争力強化法の一部改正等につきましても、やっぱり国内投資の促進ということが強く示されておりまして、私もこの投資の拡大は十分可能であると思いますし、また必要であると思います。ただ一方で、人口減少等の日本固有のやっぱりこの制約を考えますと、日本企業としましては、国内投資と海外投資、とりわけアメリカへの投資の両輪で成長を続けていくことが大事であり、それが日本経済の繁栄の持続にも必要であると考えております。
そして、その日本企業でございますが、既にアメリカへの投資では近年勝ち筋を見出しつつあります。アメリカの発表によりますと、二〇一九年以降、日本企業はアメリカへ年平均四百億ドル近い投資を行い続けてきており、直接投資を続けてきております。二四年末の最新のデータによりますと、投資残高も八千百九十二億ドル、約百三十兆円に達しまして、これはアメリカに投資する国としては世界最大になっております。
その対米投資から得られる収益も着実に増え続けておりまして、最近は年間三百五十億ドル近くに達しております。直接投資の収益はその多くが実際にはアメリカでの再投資に回っているのが現実でございますが、そうはいっても、近年は配当などで日本に還流される金額も非常に多くなってきております。積極的にアメリカに投資する企業が日本でも株主還元という形で増やしておりまして、日本での株価の上昇にもつながっているということで、十分波及する良い好循環が生まれつつあるのが現実でございます。
かつて、日本とアメリカの経済関係は貿易、中でも輸出が中心、日本からの輸出が中心でございましたし、対米貿易の黒字の多さがアメリカでアメリカの雇用を奪っているなどと批判を浴び続けてきた経緯がございます。
かつて、アメリカの貿易戦争の相手も日本だった時期がございます。日本企業は、この経験を教訓として、八〇年代からアメリカとの経済関係を貿易から雇用創出、アメリカで雇用を創出する投資への転換を進めてまいりました。自由貿易の観点からはやや疑念というものもございましたけれども。
しかし、その後でございます。二〇〇〇年代から中国がアメリカに対して巨額の、過去の日本をはるかに上回る輸出と貿易黒字を記録するようになってきております。競争に敗れたアメリカの製造業の雇用が大きく失われ、チャイナ・ショックという言葉がアメリカで広がっております。保護主義がアメリカで超党派で支持され、自由貿易がアメリカの国益に反するという見方が広がっております。対中強硬姿勢をそして唱えたトランプ氏が二〇一六年の大統領選で勝利し、その後も、米中の貿易戦争、それから昨年のトランプ第二次政権によります高関税政策につながっているという経緯もございます。これを振り返れば、日本企業の貿易から投資への転換は正しい判断であったと思われます。
そして、ただ、その投資が海外に開放されているアメリカ、非常にオープンなアメリカとはいえ、実際には外国企業がアメリカに投資をして安定した収益を得られるようになり、しかも、更にその規模を拡大していくということは実は容易なことではございません。日本も一年当たりの投資収益が今三百億ドルを超えるようになったのは二〇二〇年代に入ってからでございます。同水準の投資収益を得ている国も、日本以外ではカナダ、ドイツ、イギリスぐらいでございまして、いずれも日本に匹敵する投資残高のある国であります。
アメリカでのこの投資の成功には、アメリカでの競争環境、市場の特性、雇用慣行ですとか法規制、それから社会との共生など、熟知することが必要でございまして、やはり経験が必要でございます。アメリカで、あるいはこのアメリカよりも強い製造業ですとかサービス業が自国にあるということも大事でございまして、こうした国のみが着実に投資を伸ばしているのだと思います。
実際、アジアの中国、ベトナム、韓国、台湾などは、対米輸出、それから貿易黒字も多いんでありますが、直接投資の残高は一千億ドルに達しておりません。やはり、まだまだ対米投資を伸ばし得る条件がそろっていないのが現実でございまして、韓国、台湾は今このこうしたアメリカ向けの投資を増やそうとしておりますけれども、まだまだ苦戦が続くと思われます。そして、今後も投資を伸ばし得るのが、これを、条件をクリアしております日本であるということになります。
とはいえ、日本企業の対米投資にもやはり限度がございます。投資を行いますのは個社でございまして、一件当たりの規模はどうしても限られます。各社厳しいやはり投資基準を設定しておりまして、対象が絞り込まれております。必然的に大型、特にある意味リスクの大きい挑戦的な案件というのはどうしても少なくなるものが実態でございます。
そして、そうした下で具体的に例えばこれがどのような弊害を生んでいるかというと、例えばアメリカの先端産業でございます。日本企業の投資が伸びる対象とはちょっと異なる可能性が高いと思われます。
例えば、現在、アメリカで大手テック企業が、激しい競争を通じて、極めて積極的にAI関連あるいはデータセンター等への投資を続けております。これが実は今のアメリカ経済の成長を支えている面もございますけれども、ここに直接挑む日本企業は極めて少ないと思われます。投資規模が非常に大き過ぎますし、日本企業が決して業界内で優位な立場を確保しているわけではございません。投資対象としては、この分野、非常に有望ではありますが、見送る企業が多いのが大半になってくると思います。さらに、アメリカの国内企業だけでも、アメリカで投資機会がありながら、なかなか実現しないといったインフラ等の分野もたくさんございます。
そうした個社の投資の限界を超えて日本の対米投資の新境地を切り開く、あるいは日米関係を新たなレベルまで深化させる可能性を有しておりますのが今回のこの日米政府の戦略的投資イニシアティブであると思います。
この両政府間の投資に関する共同ファクトシートに記されておりますエネルギー、AI向け電源開発やAIインフラ、重要鉱物等の分野、もう発表されたこの第一陣、第二陣のプロジェクトを見ましても、いずれもやっぱり個社の直接投資では手が届かない、このイニシアティブが向いているということを示している内容になっていると思います。
そして、この日本の投資法人とアメリカの現物出資で組成されます特別目的事業体によるプロジェクトでございますけれども、これ一種のGOCOですか、国有施設の民間操業スキームでございます。JBICと民間金融機関からの融資、それからJBICの出資とアメリカからの現物出資というものを組み合わせたこの事業体が、民間事業体、者に事業運営を委託する役割分担もやはり今回は必要になってくるというふうに見ております。
個社のこの対米直接投資の多くは、やはり日本の一定規模以上の企業にしかできない、そうしたことも実は今回のこのイニシアティブの特に魅力といったものを示していると思います。
このイニシアティブは、プロジェクトに参加する企業、金融機関の役割、リスク負担が限定され、融資、プロジェクト運営、製品供給、これ輸出も含みます、日本からの、それからこの製品を引き取るオフテーカーといった機能に日本企業が参加する機会が多くなります。個社の直接投資よりもはるかに多くの企業、それから大企業から中小企業まで、スタートアップまでも関与が可能になるスキームでございまして、日米の経済関係、それから日米をつなぐサプライチェーンに参加できる企業の数も増えてくることが期待できます。幅も広がると思います。アメリカにとっても、このイニシアティブなしでは実現しなかった案件が十分あり得るということでございまして、大きな成果になってくると思います。
実際、この発表済みのプロジェクトを見ましても、関連機器等の供給とオフテーカーとしての関与というところから、日本企業が多く関心を示しております。一方で、この関心を示す日本企業でありますが、よく見れば、実はアメリカで投資済みの経験が多い企業もやっぱりこの中で多く占めているということでございまして、やはりアメリカでしっかり投資と事業の経験がある日本だからこそ、このイニシアティブをしっかり回していけるというところも、やはりこの可能性を既に示唆しているというところかと思います。
そして、このイニシアティブを支えますのは日本からの融資でございます、金額的にも特に大きいのはですね。とりわけ過半を占めると予想されます民間金融機関の融資でございます。
各金融機関は、もちろんアメリカでのファイナンスの経験は豊富でございますが、従来のファイナンス手法では、独自のプロジェクトの各行によります検証あるいはデューデリジェンスといったものが不可欠でございまして、これどうしても相当の時間とコストが必要になってしまいます。イニシアティブの資金の規模も、従来のファイナンス方法では各金融機関を圧迫するリスクもあります。NEXIの保証付きの融資は、この民間金融機関のリスクをカバーする形になり、イニシアティブとプロジェクトの制約を取り払い、円滑な運用をするという意味で重要な意味を持っていると思います。
一方で、このイニシアティブの資金の規模の大きさが、貿易保険法の改正を通じたNEXIの特定引受業務の創設と財務基盤の強化を必要としていると思います。イニシアティブの着実な履行、日米経済関係の深化、日本企業のアメリカに関わる事業と収益の拡大、日米関係の一層の安定の鍵も握っているというふうに思っております。
そして一方で、このNEXIの保証によりまして個々のプロジェクトのリスクがもちろん消えるわけではございません。全ての案件がバンカブル、いわゆる銀行融資が可能であること、それからフィージブル、プロジェクトに関わる企業が収益を持続的に確保できることがもちろん必要でございまして、期限やイニシアティブの目標規模の達成が優先され、案件の精査が不足するということはあってはならないと思っております。この点がこのイニシアティブのリスクであり、懸念というところではちょっと本質になってくるかと思います。
しかし、この案件の失敗は、日本だけでなく、アメリカにも実は多大な損失をもたらします。アメリカにとっては、案件実現が勝利ではなく、事業継続までしっかり確立しなければ、やがてその事業は撤退、そして雇用の減少ですとかということがなり、結果としてアメリカにまた新たな産業の衰退地域、ラストベルトを生み出してしまうことになりかねないということであります。日本だけが損失を被り、アメリカは得をするという組合せにはないということも、やはり私は思っているところでございます。
そして、この案件の収益性や持続性の確立というところでは、分散された役割を担う企業、金融機関、政府がそれぞれリスクを洗い出し、取り除いていくことがもちろん大事でございます。
イニシアティブでは、日米両国で構成いたします協議委員会、投資委員会の厳格な判断がとりわけ重要になります。中でも、日本政府、JBIC、NEXI等が、協議委員会やその前段階での案件審査、不適格案件の拒否が、しっかりやっていくことが必要になってくるわけでございまして、イニシアティブの成否もこのスキームでは協議委員会に大きく懸かってくるかと考えております。
JBICとNEXIに損失が生じれば、これ国民負担の増大ということになってしまうわけでございまして、イニシアティブそのものを揺るがすことになりかねません。そうしたところから、やっぱり、案件審査に、だからこそ深く関わり、リスク解消に、例えばNEXIがその機能を十分発揮していくためにも、この貿易保険法の改正が重要であると思います。
ファイナンスは、事業の進捗に応じて、今回このスキームでは段階的に実行する仕組みになっています。それでもイニシアティブの規模の大きさがありますので、民間金融機関のドル調達ですとか融資余力などの懸念はどうしても残ってしまう部分はあります。そこはいろいろ日本以外の金融機関の関与を必要に応じて求めていく、あるいはプロジェクトを成功に導く優れた事業主体そのものの確保といったことも重要になってまいります。
こうしたことを併せてしっかりと進めていくことが大事でございまして、改めて、さらに、今後でありますけれども、日米政府のこのイニシアティブを構成項目とした日米関税合意がそもそもございました。その後のアメリカの高関税政策の、実は変化しているわけでございまして、前提が大きく変わってきている。そして、具体的なプロジェクトや案件の進捗も通じてイニシアティブと、日米の意味も変わってきているということでございまして、そうしたものも踏まえて、日米政府間でしっかりこうしたもの、このイニシアティブはどれが一番具体的に今良いのかということをしっかりその都度やはり協議していくことが大事かと思います。
そして、今、日本だけがこうしたことをしっかり行えている、湾岸諸国ですとかEU、韓国とも似たプロジェクトやイニシアティブをつくっておりますけれども、なかなか投資が増えていないという現実を踏まえて、日本がしっかり行えているということをしっかりアメリカに訴え、そしてこのイニシアティブの重要性を両政府が共有していくということ、そしてそのためにもやっぱり貿易保険法の改正が必要であるということを申し上げたいと思います。
以上でございます。
12浜浜口誠(国民)
ありがとうございました。
次に、木村参考人、お願いいたします。木村参考人。
この発言のページ
13木木村敬熊本県知事
熊本県知事の木村敬でございます。
議員各位におかれましては、平素より熊本県に格別の御支援を賜りまして、誠にありがとうございます。
とりわけ、先月は熊本地震の発生から十年という節目の年を迎えました。我が国観測史上初めての震度七が二度、前震、本震と二度襲った熊本地震、多くの尊い命が失われ、被害総額も、推計ではありますが、官民合わせて約三・八兆円という熊本県経済過去にない深い痛手を負いましたが、それから十年間、国の本当に総力を挙げた力強い御支援をいただきまして、熊本県は今、半導体分野を中心に我が国の経済安全保障の一翼を担うにまで至りました。熊本地震の甚大な…
この発言のページ
14浜浜口誠(国民)
ありがとうございました。
以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
質疑のある方は順次御発言願います。
この発言のページ