一橋大学の経済研究所の深尾です。
私の専門は、生産性の計測、マクロ経済学、それから経済史です。今日は、こういった視点から、設備投資促進の意義、今回の法案への期待、留意すべき点等についてお話ししたいと思います。
配付していただいた資料の二ページ目を御覧ください。この図は、日本全体の労働生産性、労働生産性は労働時間当たりどれだけGDPをつくり出したかで測りますが、その上昇とその源泉を表しています。
標準的な経済学によれば、労働生産性の上昇は、スライドの右側に書いたように、三つの要因の和と考えることができます。一つ目は資本装備率、労働時間当たりの資本投入が増えることによる労働生産性の上昇、二番目は熟練の蓄積や教育水準上昇によって労働の質が上昇することによる生産性の上昇、三番目は新技術の導入や資源配分効率化による生産性の上昇。これを全要素生産性の上昇ないしTFPの上昇というふうに呼んでいます。
左側の図に戻りますと、これは、一九七〇年以降、十年ごとに日本の労働生産性がどのように上昇したかを示しています。七〇年代、八〇年代には、それぞれ十年間で労働生産性が約五割上昇しました。失われた三十年と言われる一九九〇年以降、この労働生産性の上昇が急速に低下してきました。
この失われた三十年の間を見ますと、この労働生産性の上昇の低下の要因が大きく異なっていることが分かります。一九九〇年代には、不良債権問題等を背景にTFPの上昇がほとんど喪失しました。一方で、資本蓄積は比較的堅調で、これが労働生産性の上昇を牽引しました。二〇〇〇年代以降は、TFPの上昇は比較的回復したんですが、資本蓄積の方が極めて停滞したために、労働生産性の上昇が更に下がったということになります。
ここから言えることは、近年の停滞は主として資本蓄積減速によると。同時に、労働の質の上昇なんですが、熟練が蓄積されにくい非正規雇用が増えたこともあって、緑の部分、労働の質上昇の寄与もかなり下がった、最近ではマイナスになっているという、人的資本面でも課題があることが分かります。
次の資料、三ページ目の資料を御覧ください。これは国際比較したもので、この図は、国際比較が難しい教育、医療、政府サービスを除いた経済活動を市場経済といいますが、市場経済の経済成長の源泉を二〇〇五年から二〇一八年について主要五か国で比較したものです。
先ほどの三つの要因、資本と労働の質とTFP以外に、総労働時間が増えることでも経済成長が達成できます。日本の市場経済の成長率はこの主要五か国中最低なわけですが、その最低になった原因は、一つは少子高齢化による総労働時間増加の寄与がマイナスで、大きなマイナスであったことですが、もう一つは、黄色い部分、資本サービス投入増加の寄与が五か国中で最小であったということも経済成長の停滞の大きな原因だと言えます。一方で、TFPの上昇、青い部分は、ドイツに次いで二位、アメリカと同率で二位になっています。したがって、TFPの上昇率は二〇〇〇年代以降比較的堅調で、資本の蓄積が何とも少ないということが確認できます。
次のページを御覧ください。四ページ目ですね。これは資本係数、資本ストックをGDPと比べてどれぐらい資本ストックがあるかということを、これ一九四五年から推移を見たものです。
見ていただくと分かるように、二〇〇〇年代以降資本係数が下がるという、日本の経済史でも珍しいことが起きています。こういうことが起きているのは戦後混乱期以来というふうに言えます。青い線が経済全体の資本ストックの対GDP比ですが、赤い方の線は公的固定資産、いわゆるインフラストラクチャーの対GDP比ですが、これも二〇〇〇年代以降下落していることが分かります。資本投資が非常に停滞していますから、企業の生産設備やインフラストラクチャーの老朽化も恐らくこの背後で著しいというふうに考えることができます。
五ページ目を御覧ください。
なぜ二〇〇〇年代半ば以降資本係数が低下したかですが、既存の説明の中には、それだけでは十分に説明できないということが言えます。例えば、人口減少ですが、労働者一人当たりの資本の増加も停滞しているということは説明できません。それから、TFPの停滞ですが、先ほど見ていただいたように、国際比較では日本のTFP上昇というのはそれほど低くないという、最近はですね、ことが言えます。それから、介護など労働集約的産業の拡大ですが、投資の停滞は産業横断的でして、ほとんどの産業で投資が停滞しています。したがって、これも、これだけでも説明できないということになります。
有力な説明としては、一つは製造業の空洞化、工場が海外に移転したということ、それから大企業、中堅企業におけるリストラ中心の生産性の向上策、それから女性労働者の、女性や高齢者の労働参加が拡大したことで労働供給制約が緩和され、企業に省力化投資を急がせる圧力が恐らく弱かったこと、こういったことが指摘できると思います。
ただし、現在はこの投資停滞の前提要因が変化しつつあるということにも注意すべきだと思います。労働不足、賃金上昇が起きています。それから、AI、ロボットなど新技術が進歩し、新しい投資機会が生まれています。また、国際環境が悪化しているために、工場の国内回帰の兆しが見られます。また、設備が老朽化して刷新投資をせざるを得ない状況になりつつあります。
六ページを御覧ください。これは、OECD加盟諸国の時間当たり労働生産性を物価の違いを調整した上で比較しているOECDのデータです。
日本は黄色い棒になりますが、OECDの中でもかなり低い順位に今やなっているということが分かります。国際比較によると、例えば米国との比較によると、この労働生産性格差の最大の原因は資本装備率の違い、二番目にTFPの水準が日本は低いといったことが指摘されています。このことは、労働生産性を引き上げる大きな余地があるというふうに考えることもできます。
経済史の視点から、次の七ページを見ていただきたいんですが、これは、一七〇〇年からという超長期で、技術フロンティア国、技術フロンティア国は、一九〇〇年以前は英国、一九〇〇年以降は米国としていますが、技術フロンティア国と比べて日本の一人当たりGDPが技術フロンティア国の何割ぐらいだったかということを表しています。
一七〇〇年には、英国の大体日本の一人当たりGDPは五〇%でした。過去にその技術フロンティア国から引き離されたことが三回あります。一回目は、幕末期で産業革命に乗り遅れたことです。二番目は、第二次大戦の敗戦です。三番目は、現在起きている、二〇〇〇年、一九九〇年以降ぐらいに起きたことです。過去二回は大きな改革によってキャッチアップを成し遂げたわけですが、現在は第三のキャッチアップ期にあるというふうに考えることもできるかと思います。まあ、入る可能性があるだけで、キャッチアップできるかどうかは、大きな改革をする、投資を促進する、そういったことによって初めて実現できると思います。
最後に、もう一つ経済史の視点から指摘させてください。次のページ、八ページ目の資料を御覧ください。
この図は、機械産業について、一九六九年における工場の分布、工場数の全国の地域別の分布を見ています。これが青と白の棒グラフです。それと、一九六九年から九三年における新規の工場の立地の分布、これも工場数です、を赤い棒で示しています。
見ていただくと分かるように、一九七〇年頃を境に、それまでの工場の分布とそれ以降の新規立地が大きく変化したことが分かります。いわゆる地方の時代が一九七〇年から起きました。大都市圏の人手不足や工場の規制によって、工場の地方進出が急速にこの時期進みました。これは、製造業の労働生産性というのは当時比較的高いので、労働生産性の地域間格差の縮小にこれは寄与しました。しかし、一九九〇年代以降、工場立地は主に海外で行われるようになりました。いわゆる製造業の空洞化です。先ほどお話しした工場の国内回帰の兆しというのは、それをうまく達成できれば新しい地方の時代をもたらす可能性があるというふうに言うことはできると思います。
少し飛んで、十一ページを御覧ください。私の報告の主な分析結果と政策含意です。
近年の日本経済停滞の主因は、TFPの停滞ではなく、資本蓄積の停滞です。資本ストック増加率がGDP成長率を下回り、資本係数が低下しつつあります。国際比較では、日本のTFP上昇率というのはそれほど低いわけではないということが確認できます。
二番目に、投資停滞の前提条件は変化しつつあります。労働不足、賃金上昇、AI、ロボットなど新技術、工場の国内回帰の兆し、設備の老朽化といった点です。
三番目に、日本は第三のキャッチアップ期に入る可能性があるというふうにも言えると思います。ただし、そのためには国内の設備投資や広い意味でのインフラの整備等が重要だろうと思います。
四番目に、地方立地の促進は、地域経済活性化、地方の時代をもう一回もたらす可能性があるということも言えるかと思います。
次のページを御覧ください。
今回の法案への期待ですが、第一に、投資コスト低下によって民間設備投資の促進が期待できます。投資促進税制は、設備の刷新やAI、ロボット、ソフトウェア導入の初期費用を軽減します。また、労働生産性向上に資する投資を後押しします。
二番目に、産業用地整備による国内、地方投資の促進が期待できます。これは、製造業の国内回帰や地域間経済格差の縮小に寄与します。また、地方の生活基盤維持は、担い手である労働者の確保の観点からも重要です。
三番目に、今回の法案は、特定企業、産業への過度な集中を避ける設計になっており、これも効率的な投資の促進を進める上でプラスの要因だというふうに思います。
最後の十三ページを御覧ください。
ただし、留意すべき点もあります。
第一に、政策効果の検証が重要です。投資量が増えるかどうかだけではなくて、労働生産性向上や新技術の普及につながるかを継続的に検証していく必要があると思います。
二番目に、投資のボトルネックの解消です。報道されているように、建設コストが急騰し、建設の遅延が起きています。それから、安定的かつ競争力のある電力供給への配慮も必要です。
三番目に、ハードだけでなく制度の改革も必要です。労働移動の地域間、企業間での移動の促進、人材の育成、リスキリング、規制改革、デジタル基盤整備等が重要だと思います。
私の結論です。
日本経済の問題は、近年では生産性向上能力そのものの欠如というより、資本蓄積停滞にあった可能性が高いと思います。現在は、労働不足、AI、ロボット技術の進歩、製造業の国内回帰の兆しなどにより、長く続いた投資停滞の前提条件が変化しつつあります。今重要なことは、この潮目の変化を一時的な投資ブームで終わらせず、持続的な生産性向上と地方活性化につなげることであると考えます。
ありがとうございました。
6浜浜口誠(国民)
御異議ないと認め、さよう決定いたします。
速記を止めてください。
〔速記中止〕
この発言のページ
7浜浜口誠(国民)
速記を起こしてください。
─────────────
この発言のページ
8浜浜口誠(国民)
経済社会情勢の変化を踏まえた企業の事業活動の持続的な発展を図るための産業競争力強化法等の一部を改正する法律案を議題とし、参考人の皆様から御意見を伺います。
この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ御出席をいただき、誠にありがとうございます。
皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、深尾参考人、今村参考人、木村参考人の順にお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただき…
この発言のページ
- (上の発言)
9深深尾京司一橋大学経済研究所特命教授
一橋大学の経済研究所の深尾です。
私の専門は、生産性の計測、マクロ経済学、それから経済史です。今日は、こういった視点から、設備投資促進の意義、今回の法案への期待、留意すべき点等についてお話ししたいと思います。
配付していただいた資料の二ページ目を御覧ください。この図は、日本全体の労働生産性、労働生産性は労働時間当たりどれだけGDPをつくり出したかで測りますが、その上昇とその源泉を表しています。
標準的な経済学によれば、労働生産性の上昇は、スライドの右側に書いたように、三つの要因の和と考えることができます。一つ目は資本装備率、労働時間当たりの資本投入が増えることによる労働生産性の上昇、二番目は熟練の蓄積や教育水準上昇によって労働の質が上昇することによる生産性の上昇、三番目は新技術の導入や資源配分効率化による生産性の上昇。これを全要素生産性の上昇ないしTFPの上昇というふうに呼んでいます。
左側の図に戻りますと、これは、一九七〇年以降、十年ごとに日本の労働生産性がどのように上昇したかを示しています。七〇年代、八〇年代には、それぞれ十年間で労働生産性が約五割上昇しました。失われた三十年と言われる一九九〇年以降、この労働生産性の上昇が急速に低下してきました。
この失われた三十年の間を見ますと、この労働生産性の上昇の低下の要因が大きく異なっていることが分かります。一九九〇年代には、不良債権問題等を背景にTFPの上昇がほとんど喪失しました。一方で、資本蓄積は比較的堅調で、これが労働生産性の上昇を牽引しました。二〇〇〇年代以降は、TFPの上昇は比較的回復したんですが、資本蓄積の方が極めて停滞したために、労働生産性の上昇が更に下がったということになります。
ここから言えることは、近年の停滞は主として資本蓄積減速によると。同時に、労働の質の上昇なんですが、熟練が蓄積されにくい非正規雇用が増えたこともあって、緑の部分、労働の質上昇の寄与もかなり下がった、最近ではマイナスになっているという、人的資本面でも課題があることが分かります。
次の資料、三ページ目の資料を御覧ください。これは国際比較したもので、この図は、国際比較が難しい教育、医療、政府サービスを除いた経済活動を市場経済といいますが、市場経済の経済成長の源泉を二〇〇五年から二〇一八年について主要五か国で比較したものです。
先ほどの三つの要因、資本と労働の質とTFP以外に、総労働時間が増えることでも経済成長が達成できます。日本の市場経済の成長率はこの主要五か国中最低なわけですが、その最低になった原因は、一つは少子高齢化による総労働時間増加の寄与がマイナスで、大きなマイナスであったことですが、もう一つは、黄色い部分、資本サービス投入増加の寄与が五か国中で最小であったということも経済成長の停滞の大きな原因だと言えます。一方で、TFPの上昇、青い部分は、ドイツに次いで二位、アメリカと同率で二位になっています。したがって、TFPの上昇率は二〇〇〇年代以降比較的堅調で、資本の蓄積が何とも少ないということが確認できます。
次のページを御覧ください。四ページ目ですね。これは資本係数、資本ストックをGDPと比べてどれぐらい資本ストックがあるかということを、これ一九四五年から推移を見たものです。
見ていただくと分かるように、二〇〇〇年代以降資本係数が下がるという、日本の経済史でも珍しいことが起きています。こういうことが起きているのは戦後混乱期以来というふうに言えます。青い線が経済全体の資本ストックの対GDP比ですが、赤い方の線は公的固定資産、いわゆるインフラストラクチャーの対GDP比ですが、これも二〇〇〇年代以降下落していることが分かります。資本投資が非常に停滞していますから、企業の生産設備やインフラストラクチャーの老朽化も恐らくこの背後で著しいというふうに考えることができます。
五ページ目を御覧ください。
なぜ二〇〇〇年代半ば以降資本係数が低下したかですが、既存の説明の中には、それだけでは十分に説明できないということが言えます。例えば、人口減少ですが、労働者一人当たりの資本の増加も停滞しているということは説明できません。それから、TFPの停滞ですが、先ほど見ていただいたように、国際比較では日本のTFP上昇というのはそれほど低くないという、最近はですね、ことが言えます。それから、介護など労働集約的産業の拡大ですが、投資の停滞は産業横断的でして、ほとんどの産業で投資が停滞しています。したがって、これも、これだけでも説明できないということになります。
有力な説明としては、一つは製造業の空洞化、工場が海外に移転したということ、それから大企業、中堅企業におけるリストラ中心の生産性の向上策、それから女性労働者の、女性や高齢者の労働参加が拡大したことで労働供給制約が緩和され、企業に省力化投資を急がせる圧力が恐らく弱かったこと、こういったことが指摘できると思います。
ただし、現在はこの投資停滞の前提要因が変化しつつあるということにも注意すべきだと思います。労働不足、賃金上昇が起きています。それから、AI、ロボットなど新技術が進歩し、新しい投資機会が生まれています。また、国際環境が悪化しているために、工場の国内回帰の兆しが見られます。また、設備が老朽化して刷新投資をせざるを得ない状況になりつつあります。
六ページを御覧ください。これは、OECD加盟諸国の時間当たり労働生産性を物価の違いを調整した上で比較しているOECDのデータです。
日本は黄色い棒になりますが、OECDの中でもかなり低い順位に今やなっているということが分かります。国際比較によると、例えば米国との比較によると、この労働生産性格差の最大の原因は資本装備率の違い、二番目にTFPの水準が日本は低いといったことが指摘されています。このことは、労働生産性を引き上げる大きな余地があるというふうに考えることもできます。
経済史の視点から、次の七ページを見ていただきたいんですが、これは、一七〇〇年からという超長期で、技術フロンティア国、技術フロンティア国は、一九〇〇年以前は英国、一九〇〇年以降は米国としていますが、技術フロンティア国と比べて日本の一人当たりGDPが技術フロンティア国の何割ぐらいだったかということを表しています。
一七〇〇年には、英国の大体日本の一人当たりGDPは五〇%でした。過去にその技術フロンティア国から引き離されたことが三回あります。一回目は、幕末期で産業革命に乗り遅れたことです。二番目は、第二次大戦の敗戦です。三番目は、現在起きている、二〇〇〇年、一九九〇年以降ぐらいに起きたことです。過去二回は大きな改革によってキャッチアップを成し遂げたわけですが、現在は第三のキャッチアップ期にあるというふうに考えることもできるかと思います。まあ、入る可能性があるだけで、キャッチアップできるかどうかは、大きな改革をする、投資を促進する、そういったことによって初めて実現できると思います。
最後に、もう一つ経済史の視点から指摘させてください。次のページ、八ページ目の資料を御覧ください。
この図は、機械産業について、一九六九年における工場の分布、工場数の全国の地域別の分布を見ています。これが青と白の棒グラフです。それと、一九六九年から九三年における新規の工場の立地の分布、これも工場数です、を赤い棒で示しています。
見ていただくと分かるように、一九七〇年頃を境に、それまでの工場の分布とそれ以降の新規立地が大きく変化したことが分かります。いわゆる地方の時代が一九七〇年から起きました。大都市圏の人手不足や工場の規制によって、工場の地方進出が急速にこの時期進みました。これは、製造業の労働生産性というのは当時比較的高いので、労働生産性の地域間格差の縮小にこれは寄与しました。しかし、一九九〇年代以降、工場立地は主に海外で行われるようになりました。いわゆる製造業の空洞化です。先ほどお話しした工場の国内回帰の兆しというのは、それをうまく達成できれば新しい地方の時代をもたらす可能性があるというふうに言うことはできると思います。
少し飛んで、十一ページを御覧ください。私の報告の主な分析結果と政策含意です。
近年の日本経済停滞の主因は、TFPの停滞ではなく、資本蓄積の停滞です。資本ストック増加率がGDP成長率を下回り、資本係数が低下しつつあります。国際比較では、日本のTFP上昇率というのはそれほど低いわけではないということが確認できます。
二番目に、投資停滞の前提条件は変化しつつあります。労働不足、賃金上昇、AI、ロボットなど新技術、工場の国内回帰の兆し、設備の老朽化といった点です。
三番目に、日本は第三のキャッチアップ期に入る可能性があるというふうにも言えると思います。ただし、そのためには国内の設備投資や広い意味でのインフラの整備等が重要だろうと思います。
四番目に、地方立地の促進は、地域経済活性化、地方の時代をもう一回もたらす可能性があるということも言えるかと思います。
次のページを御覧ください。
今回の法案への期待ですが、第一に、投資コスト低下によって民間設備投資の促進が期待できます。投資促進税制は、設備の刷新やAI、ロボット、ソフトウェア導入の初期費用を軽減します。また、労働生産性向上に資する投資を後押しします。
二番目に、産業用地整備による国内、地方投資の促進が期待できます。これは、製造業の国内回帰や地域間経済格差の縮小に寄与します。また、地方の生活基盤維持は、担い手である労働者の確保の観点からも重要です。
三番目に、今回の法案は、特定企業、産業への過度な集中を避ける設計になっており、これも効率的な投資の促進を進める上でプラスの要因だというふうに思います。
最後の十三ページを御覧ください。
ただし、留意すべき点もあります。
第一に、政策効果の検証が重要です。投資量が増えるかどうかだけではなくて、労働生産性向上や新技術の普及につながるかを継続的に検証していく必要があると思います。
二番目に、投資のボトルネックの解消です。報道されているように、建設コストが急騰し、建設の遅延が起きています。それから、安定的かつ競争力のある電力供給への配慮も必要です。
三番目に、ハードだけでなく制度の改革も必要です。労働移動の地域間、企業間での移動の促進、人材の育成、リスキリング、規制改革、デジタル基盤整備等が重要だと思います。
私の結論です。
日本経済の問題は、近年では生産性向上能力そのものの欠如というより、資本蓄積停滞にあった可能性が高いと思います。現在は、労働不足、AI、ロボット技術の進歩、製造業の国内回帰の兆しなどにより、長く続いた投資停滞の前提条件が変化しつつあります。今重要なことは、この潮目の変化を一時的な投資ブームで終わらせず、持続的な生産性向上と地方活性化につなげることであると考えます。
ありがとうございました。
10浜浜口誠(国民)
ありがとうございました。
次に、今村参考人、お願いをいたします。今村参考人。
この発言のページ
11今今村卓株式会社丸紅経済研究所代表取締役社長
本日は、大変貴重な機会をいただき、ありがとうございます。丸紅経済研究所社長の今村でございます。
私は、我が国と世界で貿易投資を行っております丸紅のシンクタンクを率いまして、世界情勢、世界経済、国際金融などの分析を日々行っております。中でもアメリカの政治経済の分析あるいは日米経済の関係が専門でございます。
本日は、この議題の中でも、本邦企業の供給網の強靱化への対応として、貿易保険法の改正につきまして意見を述べたいと思います。そして、前提となっています必要な外国政府との取決めということで想定されています日米政府の戦略的投資イニシアティブ、これにつきまして…
この発言のページ
12浜浜口誠(国民)
ありがとうございました。
次に、木村参考人、お願いいたします。木村参考人。
この発言のページ