中央大学法学部の中北浩爾です。本日はよろしくお願いいたします。
本委員会では、これまでも何度か参考人として発言する機会をいただきました。解散・総選挙を経て、新しい委員の方もおられますので、繰り返しになるとは思いますけれども、改めて私の基本的な考えをまず述べさせていただきたいと思います。
私が考える現在の日本の政治資金制度の最大の問題点は、税金丸抱えの国営政党化です。政治学では、市民社会の中から生まれてきた政党が、国民ではなく国家からの資金に依存するようになってきたことなどを指して、カルテル政党化という言葉が使われております。そして、既存政党が一般の人々との結びつきを弱めていることを背景に、世界各国で反エリート主義的なポピュリズムが台頭しております。
お手元の図表を見ていただきたいのですが、企業・団体献金の総額は、平成の政治改革で規制が強化されたことを受けて、一九九四年の五百七十七億円から、二〇二四年には九十億円と、約七分の一に減少しています。まず、この事実を十分に踏まえていただきたいと思います。パーティー収入も、百四十一億円から九十五億円に減っています。個人献金が増えているのかというと、そうではなく、四百四億円から二百七十四億円に落ち込んでいます。
結局、一九九四年の政治改革で導入された年間三百十五億円の政党交付金が、受取を拒否している共産党を除いて、各政党の財政を支えています。自民、立憲、維新、国民といった主要政党の党本部の収入は、実に七から八割が政党交付金です。
現状のまま安易に企業・団体献金を禁止したり規制を一層強化したりすれば、国営政党化がますます進み、政党の有権者からの遊離、ポピュリズムの台頭に拍車がかかってしまうでしょう。平成の政治改革から令和の政治改革にギアチェンジすべきときだと考えます。
そもそも、一昨年に大きな問題になった事案は、自民党の派閥による政治資金収支報告書への不記載です。これを捉えて、企業・団体献金の禁止や規制強化を行うのは、立法事実に乏しいと言わざるを得ません。
しばしば、企業・団体献金によって政治がねじ曲げられるという批判が行われます。しかし、全体主義ではない自由な民主主義体制の下では、多様な個人、団体が政治に参加して自由な競争を行い、特定の政党を応援するなどして、政策決定に影響力を及ぼそうとします。政治学では、これを多元主義と呼びます。そこでは、団体間のチェック・アンド・バランスなどが働けば、公共の利益が実現すると考えられます。企業・団体献金によって政治がねじ曲げられることは問題ではありません。相互にねじ曲げ合った結果、著しく公共の福祉が損なわれた状態が生まれているかどうかが問題なのです。
もちろん、企業・団体献金が具体的な職務上の便宜と結びつけば、贈収賄となり、刑事責任を問われます。
また、しばしば、抜け穴が生じるといった指摘がなされます。しかし、これについても違和感がございます。
政治資金制度は、抜け穴を塞ごうとして規制を強化し、新たな抜け穴を見つけるイタチごっこの歴史です。企業・団体献金を禁止しても、個人献金や政治団体の献金が抜け穴になる可能性は否定できませんし、政党の機関紙などへの企業広告の形を取るかもしれません。その結果、かえって実態が見えにくくなるおそれがあります。
したがって、抜け穴を塞ごうとすることよりも、当面、可能な限り公開性、透明性を高めて、有権者が選挙で適切に判断できるようにするのがよいと考えます。
以上の理由から、私は、参政党とチームみらいが提出している企業・団体献金の禁止法案には賛成できません。スウェーデンの民主主義・選挙支援国際研究所のデータベースによると、政党への企業献金を禁止しているのは百八十一か国中四十七か国、二五・九%、候補者への企業献金を禁止しているのは四十一か国、二二・六%にすぎません。
また、中道改革連合と国民民主党の企業・団体献金の規制強化法案についても賛成し難いところです。
企業、団体が特定の支部に交付することを前提に都道府県組織に寄附を行った場合、迂回献金とみなされて虚偽記載に当たる可能性が高いと言えます。そうした使途特定寄附を認めていない以上、この法案は市民社会との接点となる政党の支部の活動を抑制しかねません。
さらに、個人献金を促進するための税制上の措置には賛成ですが、政党法を制定することには、政治活動の自由の観点から慎重たるべきです。なお、ドイツの例を見ても、政党法と関係づけるのであれば、この法案のような企業・団体献金ではなく、政党交付金の方だと考えます。
公開性や透明性という点から見て、私が大いに評価する法案は、自民党が第二百十九回国会で自ら修正した企業・団体献金の公開強化法案であります。
企業・団体献金を受け取れる支部をあらかじめ指定し、指定支部について収支報告書のオンライン提出を義務づけ、データベースに載せる、また、総務大臣が年間合計五万円超まで企業、団体の名称や寄附額を公表するといったものであり、企業・団体献金について最大限と言っていいほどガラス張りにするものであります。
解散・総選挙を経て、議席を大きく増やした自民党がこの修正公開強化法案を提出しなかったことは、私としても非常に残念でございます。ただし、野党にも責任があると言わざるを得ません。前回この場に参考人として参りました際、自民党と実務者合意を行った公明党と国民民主党に対して、修正公開強化法案に賛成すべきだと主張させていただきましたけれども、聞いてはいただけませんでした。
現在、自民、維新から成る与党は、衆議院では圧倒的な議席を占めていますけれども、参議院では過半数を欠いております。このままですと、企業・団体献金について今国会でも何も決まらないということになるかもしれません。是非、修正公開強化法案で与野党が歩み寄ることを期待いたします。
最後に、自民、維新が提出している第三者機関の設置法案についてですけれども、これについては賛成の意見を述べさせていただきたいと思います。
第一に、さきに述べましたように、平成の政治改革は、政官業の癒着を断ち切るために、企業・団体献金の規制を強化する一方で、政党助成制度を設けるという内容でした。それが一定の成果を上げたことは事実ですけれども、それを一因として政党、政治家と市民社会の接点が減り、反エリート主義的なポピュリズムが台頭しているという問題が起きています。どうやったら有権者の政治参加を高め、政治不信を抑制していけるのか、これが令和の政治改革の課題だと考えます。
企業・団体献金の在り方もそうですが、個人献金の促進策、政党助成制度の見直しなどを含めてトータルに考えていくべき局面であります。そのために第三者機関を設置して検討を行うことは望ましいと考えます。
このうち政党交付金について、私は、議員数割の一部を女性議員数割に変えることで女性議員を増やしていくインセンティブにすることをこれまでも主張してまいりました。ジェンダー平等を重視する野党におかれましては、企業・団体献金をたたくだけではなく、是非、前向きの改革案も提示していただきたい、このように考えております。
第二に、これまで政治資金については、政党本部や国会議員に即して議論がなされてきた結果、政党の地方組織や地方政治家については、実態を含めて十分な検討がなされてきませんでした。一部の野党は、政党助成制度を導入した見合いで企業・団体献金を廃止すべきであったと主張していますけれども、政党交付金は、衆参両院の議員数割と得票数割で配分するにすぎません。このような主張は地方政治が等閑視されてきたことを如実に示している、このように考えております。
したがって、第三者機関を設置して、そこに地方議員や政党の地方組織の責任者を呼び、意見を聴取しながら、国、地方にわたって政治資金の収入の在り方をトータルに考えていく必要があると考えております。
第三に、いまだに誤った過去の理解に基づいて企業・団体献金の禁止が主張されていることでございます。
一九九四年の細川護熙首相と河野洋平自民党総裁のトップ会談で、政党助成制度を導入する代わりに企業・団体献金の禁止が合意されたという主張が、今なお一部の野党から行われております。何度も言いますが、そのような事実はございません。
とはいえ、こうした主張が存在し、この場でも堂々と語られている以上、第三者機関を設置して、過去の正しい理解に基づく提案がなされる必要があろうかと考えます。本委員会の前回の会合で議論がなされたように、政治資金監視委員会をもってこの第三者機関として位置づけることもあり得るかと思います。
いずれにいたしましても、二〇二五年三月末に企業・団体献金の禁止法案について結論を得るという本委員会の理事会の申合せがある以上、早期の設置がこの第三者機関についても求められるということを強調しておきたいと思います。
私からは以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
0会会議録情報政府参考人など
令和八年六月二十二日(月曜日)
午後一時六分開議
出席委員
委員長 美延 映夫君
理事 大野敬太郎君 理事 勝目 康君
理事 国定 勇人君 理事 塩崎 彰久君
理事 長谷川淳二君 理事 落合 貴之君
理事 浦野 靖人君 理事 臼木 秀剛君
浅田眞澄美君 石坂 太君
井出 庸生君 稲葉 大輔君
井原 隆君 今岡 植君
岩崎 比菜君 上原 正裕君
内山 こう君 衛藤 博昭君
岡本 康宏君 長田紘一郎君
尾花 瑛仁君 鹿嶋 祐介君
加藤 貴弘君 加藤 大博君
金澤 結衣君 …
この発言のページ
1美美延映夫(維新)
これより会議を開きます。
長谷川淳二君外十名提出、政党等の政治資金の収入に関する制度の在り方に係る措置に関する法律案、落合貴之君外四名提出、政治資金規正法の一部を改正する法律案及び和田政宗君外三名提出、政治資金規正法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
本日は、各案審査のため、参考人として中央大学法学部教授中北浩爾君及び東京大学教授谷口将紀君に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。
本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、そ…
この発言のページ
- (上の発言)
2中中北浩爾中央大学法学部教授
中央大学法学部の中北浩爾です。本日はよろしくお願いいたします。
本委員会では、これまでも何度か参考人として発言する機会をいただきました。解散・総選挙を経て、新しい委員の方もおられますので、繰り返しになるとは思いますけれども、改めて私の基本的な考えをまず述べさせていただきたいと思います。
私が考える現在の日本の政治資金制度の最大の問題点は、税金丸抱えの国営政党化です。政治学では、市民社会の中から生まれてきた政党が、国民ではなく国家からの資金に依存するようになってきたことなどを指して、カルテル政党化という言葉が使われております。そして、既存政党が一般の人々との結びつきを弱めていることを背景に、世界各国で反エリート主義的なポピュリズムが台頭しております。
お手元の図表を見ていただきたいのですが、企業・団体献金の総額は、平成の政治改革で規制が強化されたことを受けて、一九九四年の五百七十七億円から、二〇二四年には九十億円と、約七分の一に減少しています。まず、この事実を十分に踏まえていただきたいと思います。パーティー収入も、百四十一億円から九十五億円に減っています。個人献金が増えているのかというと、そうではなく、四百四億円から二百七十四億円に落ち込んでいます。
結局、一九九四年の政治改革で導入された年間三百十五億円の政党交付金が、受取を拒否している共産党を除いて、各政党の財政を支えています。自民、立憲、維新、国民といった主要政党の党本部の収入は、実に七から八割が政党交付金です。
現状のまま安易に企業・団体献金を禁止したり規制を一層強化したりすれば、国営政党化がますます進み、政党の有権者からの遊離、ポピュリズムの台頭に拍車がかかってしまうでしょう。平成の政治改革から令和の政治改革にギアチェンジすべきときだと考えます。
そもそも、一昨年に大きな問題になった事案は、自民党の派閥による政治資金収支報告書への不記載です。これを捉えて、企業・団体献金の禁止や規制強化を行うのは、立法事実に乏しいと言わざるを得ません。
しばしば、企業・団体献金によって政治がねじ曲げられるという批判が行われます。しかし、全体主義ではない自由な民主主義体制の下では、多様な個人、団体が政治に参加して自由な競争を行い、特定の政党を応援するなどして、政策決定に影響力を及ぼそうとします。政治学では、これを多元主義と呼びます。そこでは、団体間のチェック・アンド・バランスなどが働けば、公共の利益が実現すると考えられます。企業・団体献金によって政治がねじ曲げられることは問題ではありません。相互にねじ曲げ合った結果、著しく公共の福祉が損なわれた状態が生まれているかどうかが問題なのです。
もちろん、企業・団体献金が具体的な職務上の便宜と結びつけば、贈収賄となり、刑事責任を問われます。
また、しばしば、抜け穴が生じるといった指摘がなされます。しかし、これについても違和感がございます。
政治資金制度は、抜け穴を塞ごうとして規制を強化し、新たな抜け穴を見つけるイタチごっこの歴史です。企業・団体献金を禁止しても、個人献金や政治団体の献金が抜け穴になる可能性は否定できませんし、政党の機関紙などへの企業広告の形を取るかもしれません。その結果、かえって実態が見えにくくなるおそれがあります。
したがって、抜け穴を塞ごうとすることよりも、当面、可能な限り公開性、透明性を高めて、有権者が選挙で適切に判断できるようにするのがよいと考えます。
以上の理由から、私は、参政党とチームみらいが提出している企業・団体献金の禁止法案には賛成できません。スウェーデンの民主主義・選挙支援国際研究所のデータベースによると、政党への企業献金を禁止しているのは百八十一か国中四十七か国、二五・九%、候補者への企業献金を禁止しているのは四十一か国、二二・六%にすぎません。
また、中道改革連合と国民民主党の企業・団体献金の規制強化法案についても賛成し難いところです。
企業、団体が特定の支部に交付することを前提に都道府県組織に寄附を行った場合、迂回献金とみなされて虚偽記載に当たる可能性が高いと言えます。そうした使途特定寄附を認めていない以上、この法案は市民社会との接点となる政党の支部の活動を抑制しかねません。
さらに、個人献金を促進するための税制上の措置には賛成ですが、政党法を制定することには、政治活動の自由の観点から慎重たるべきです。なお、ドイツの例を見ても、政党法と関係づけるのであれば、この法案のような企業・団体献金ではなく、政党交付金の方だと考えます。
公開性や透明性という点から見て、私が大いに評価する法案は、自民党が第二百十九回国会で自ら修正した企業・団体献金の公開強化法案であります。
企業・団体献金を受け取れる支部をあらかじめ指定し、指定支部について収支報告書のオンライン提出を義務づけ、データベースに載せる、また、総務大臣が年間合計五万円超まで企業、団体の名称や寄附額を公表するといったものであり、企業・団体献金について最大限と言っていいほどガラス張りにするものであります。
解散・総選挙を経て、議席を大きく増やした自民党がこの修正公開強化法案を提出しなかったことは、私としても非常に残念でございます。ただし、野党にも責任があると言わざるを得ません。前回この場に参考人として参りました際、自民党と実務者合意を行った公明党と国民民主党に対して、修正公開強化法案に賛成すべきだと主張させていただきましたけれども、聞いてはいただけませんでした。
現在、自民、維新から成る与党は、衆議院では圧倒的な議席を占めていますけれども、参議院では過半数を欠いております。このままですと、企業・団体献金について今国会でも何も決まらないということになるかもしれません。是非、修正公開強化法案で与野党が歩み寄ることを期待いたします。
最後に、自民、維新が提出している第三者機関の設置法案についてですけれども、これについては賛成の意見を述べさせていただきたいと思います。
第一に、さきに述べましたように、平成の政治改革は、政官業の癒着を断ち切るために、企業・団体献金の規制を強化する一方で、政党助成制度を設けるという内容でした。それが一定の成果を上げたことは事実ですけれども、それを一因として政党、政治家と市民社会の接点が減り、反エリート主義的なポピュリズムが台頭しているという問題が起きています。どうやったら有権者の政治参加を高め、政治不信を抑制していけるのか、これが令和の政治改革の課題だと考えます。
企業・団体献金の在り方もそうですが、個人献金の促進策、政党助成制度の見直しなどを含めてトータルに考えていくべき局面であります。そのために第三者機関を設置して検討を行うことは望ましいと考えます。
このうち政党交付金について、私は、議員数割の一部を女性議員数割に変えることで女性議員を増やしていくインセンティブにすることをこれまでも主張してまいりました。ジェンダー平等を重視する野党におかれましては、企業・団体献金をたたくだけではなく、是非、前向きの改革案も提示していただきたい、このように考えております。
第二に、これまで政治資金については、政党本部や国会議員に即して議論がなされてきた結果、政党の地方組織や地方政治家については、実態を含めて十分な検討がなされてきませんでした。一部の野党は、政党助成制度を導入した見合いで企業・団体献金を廃止すべきであったと主張していますけれども、政党交付金は、衆参両院の議員数割と得票数割で配分するにすぎません。このような主張は地方政治が等閑視されてきたことを如実に示している、このように考えております。
したがって、第三者機関を設置して、そこに地方議員や政党の地方組織の責任者を呼び、意見を聴取しながら、国、地方にわたって政治資金の収入の在り方をトータルに考えていく必要があると考えております。
第三に、いまだに誤った過去の理解に基づいて企業・団体献金の禁止が主張されていることでございます。
一九九四年の細川護熙首相と河野洋平自民党総裁のトップ会談で、政党助成制度を導入する代わりに企業・団体献金の禁止が合意されたという主張が、今なお一部の野党から行われております。何度も言いますが、そのような事実はございません。
とはいえ、こうした主張が存在し、この場でも堂々と語られている以上、第三者機関を設置して、過去の正しい理解に基づく提案がなされる必要があろうかと考えます。本委員会の前回の会合で議論がなされたように、政治資金監視委員会をもってこの第三者機関として位置づけることもあり得るかと思います。
いずれにいたしましても、二〇二五年三月末に企業・団体献金の禁止法案について結論を得るという本委員会の理事会の申合せがある以上、早期の設置がこの第三者機関についても求められるということを強調しておきたいと思います。
私からは以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
3美美延映夫(維新)
ありがとうございました。
次に、谷口参考人にお願いいたします。
この発言のページ
4谷谷口将紀東京大学教授
この度は、意見陳述の機会をお与えいただき、誠にありがとうございます。
本日は、主に企業・団体献金の受皿規制の論点について意見を述べさせていただきます。
前提として、政治資金制度は、選挙制度と並ぶ我が国民主政治の基盤を成す制度でございまして、全会一致とまではいかなくても、与野党の幅広い合意の下で進めることが肝要でございます。
そのためには、まずもって、与党は謙虚であらねばいけません。
衆法第一二号は、数年にわたり議論を重ねてきたにもかかわらず、国会として結論を得ることができず、この期に至って学識経験者による合議制の組織に検討を委ねようとするものであ…
この発言のページ
5美美延映夫(維新)
ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
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