神戸大学の濱口伸明と申します。本日はよろしくお願いいたします。
事前提出資料はございません。
私の専門は、空間経済学という分野です。個人や企業がそれぞれの利益を最大にするように場所を選択していくときに、国全体の経済活動の空間配置がどのように構成されていくのか、また、その結果が非効率性を示しているのであれば、それを改善するためにどのように政策が実施されるべきかというようなことを研究しております。また、私は、産業構造審議会地域経済産業分科会の分科会長、その下の工場立地法検討小委員会及び地域生活維持政策小委員会の委員長も務めております。こういった場を通じまして実務的にも地域産業政策の形成に関わってきたという立場から、本改正案に関わる論点について意見を述べさせていただきます。
本改正案の中で私が関係するのは、産業用地とエッセンシャルサービスの二つです。二つの事柄を産業競争力強化の観点から取り上げるのには、共通の背景があります。
余り報じられていませんが、法人企業統計調査によれば、金融業を除く国内投資は年間約六十兆円と、現在、バブル期以降最高の水準にあります。経団連におかれましては二〇四〇年に二百兆円となる設備投資見通しを表明しており、更に投資の伸長が続くことが期待されます。
その背景にあるのは、低成長期に先延ばしにされてきた老朽化した設備の更新が進んでいること、DXやGXといった新しい技術への対応が進んでいること、経済安全保障への政策的支援効果の直接間接の波及、円安基調の定着に伴う製造業の国内回帰、さらに、米国関税政策に対応して今後計画される対米投資をサプライチェーンで支援するための国内生産拡充の必要性などです。
このように設備投資の機運が高まっていますが、生産拠点となることが期待される地方には労働力と産業用地の両方が不足する懸念があり、対応が求められています。
労働力不足の原因は多面的ですが、若年人口が大都市に流出していることに注目する必要があると私は考えています。その原因は大きく二つあって、一つ目は、質の高い雇用の不足にあることは言うまでもありません。もう一つは、生活の質の低下であり、いわゆるエッセンシャルサービスの供給不足がその一因と考えられます。
例えば、地域公共交通、典型的には鉄道地方路線やバスですが、これらが次々に廃止されていると伝えられています。地域公共交通は朝夕の高校生の通学の足です。これがなくなってしまうと通学が困難になります。子供によりよい教育を受けさせたい若い親が子の高校進学を機に都市に出てしまうと、若年層の人口流出は親子二世代で起こります。
若者世代において、地元志向が強い人は少なくありません。エッセンシャルサービスの供給が維持されて生活の質が保たれれば、若年層が意に沿わない移住をする必要がなく、よい仕事を得て住みたい場所に住み続ける選択肢を提供することができます。
これまでエッセンシャルサービスの供給維持は移動可能性が低い高齢者の生活改善という視点で語られることが多く、その視点はもちろん引き続き重要です。加えて、日本全体で設備投資が上向きに転じたことを潮目の変化と捉えて、移動可能性が高い若者の選択肢を増やして労働力不足のボトルネックを緩和するという産業政策としての視点を加えてエッセンシャルサービスの供給維持を支援することに、本改正案の意義があるのではないかと思います。
なお、人口が少ない地域でエッセンシャルサービスの供給を維持するには、より少ない人員で商品、役務を提供するという省力化の視点が不可欠です。審議会では、事業を多角化、広域化する等の組織革新、DXを取り入れた技術革新、働く人が多様な役割を担う多能職化等の方向性が各地域において検討されてまいりました。加えて、地域の実情を踏まえて様々な工夫を凝らした取組がボトムアップで提案されることを期待して、一定の基準を満たす取組を認証する制度を新たに取り入れることを検討してまいりました。認証された事業者には、補助金や融資保証等の公的な支援、金融機関からの新たな資金調達、ほかの事業体とのアライアンスなどに取り組みやすくなる効果があると期待されます。
なお、地元に残る若者がよい職を得て働き続けるためには、技能を習得し発展させる機会が必要です。そのためには、地域の中で人材交流の機会があることや、対面、オンラインの両方を通じて地域の外の人との知識交流が行われることが重要だと考えます。
エッセンシャルサービスの供給維持等で地方からの若年層人口の流出に歯止めをかけることも重要ですが、若者のモチベーションを高めるような人材育成を併せて行うことをお願いしたいと思います。
次に、地方において不足が懸念される産業用地について申し上げます。
経済産業省が自治体を調査したところ、五年以内に八割の自治体で産業用地が不足するとのことでした。
地方が今後の設備投資の受皿になるためには、この状況を打開するために、できることを全てやる必要があります。
そのうちの一つは産業団地を新規に造成することですが、翻って、一九九〇年代以降、工場の海外移転が続く中で、新規の産業団地の造成はほとんど行われてきていません。地域経済産業分科会の報告書は、この三十年ほどの期間の空白によって、自治体では産業用地提供を担う人材とノウハウが失われてきたと指摘しています。
したがって、この間に海外で産業団地の経営の実績を積んできた民間企業の参加が必要ではないかと思われますが、土地の売却益への課税に、売却先が自治体と民間企業の場合で課税に差があるため、民間の参入が進まないことが指摘されています。民間企業が不利な扱いを受けないような制度設計が必要だと考えます。
仮に新規に産業用地を造成することが難しい場合でも、やれることはあります。
工場立地法で、敷地面積が九千平方メートル、これは百メートルの正方形よりもやや狭く、サッカーコートの約一・三倍に当たりますけれども、この面積以上の工場に対して、敷地面積の二〇%以上を緑地にする緑地面積率規制が課されています。
本改正案は、この規制を自治体が指定する条件に合致する工場において緩和することを規定しており、そうすることによって、既存の工場の建屋を広げて生産設備を拡張することができたり、新規に建造する工場に必要な敷地面積を少なくして投資コストを抑制したりすることができます。
ただし、この政策を進めるに当たって、工場立地法の原則、すなわち、工場立地が環境の保全を図りながら行われなければならないという理念に立ち返り、規制の緩和が周辺住民の居住の快適さを損ねることがないように十分な配慮が必要なことは言うまでもありません。
こうした観点から、国が一律の基準で規制緩和を推し進めるのではなく、住民に対して直接説明責任を負う自治体が、国が設定する一定の枠組みの下で、規制緩和が可能な区域と規制を緩和する工場を指定し、緩和の程度を決定する裁量を持つことが適切だと考えます。
立地政策に関して、本改正案の関連で二つの点を追加させていただきます。
第一に、既に社会のインフラに位置づけられているデータセンターについては、リスク分散の観点から様々な地域への立地が検討されていると聞いております。データセンターの排熱問題に効率的な水冷方式が検討されているところ、工場ではないデータセンターへの工業用水の供給が渇水時に劣後する可能性があります。このため、データセンターにも工業用水の供給を義務づけるよう制度を改めることによって、現在未利用地のある工業団地にデータセンターの立地を促すことは、産業基盤を整備する上で重要です。
第二に、企業立地獲得競争になりますと、財政力の弱い自治体は産業用地の供給や企業誘致政策としての固定資産税の減免を実施することができず、自治体間の格差が更に拡大する懸念があります。産業用地整備のための制度融資や企業誘致で生じる財源損失を補填するなどの国が実施する制度において、財政力の弱い自治体への国の支援をより手厚くする配慮は必要だと思います。このような施策は、格差是正という意味合いもありますが、より広い範囲で産業用地の供給を増やすという観点からも意味があると考えます。
本日述べた人材と産業用地について必要な政策が講じられない場合に、今後計画される設備投資が海外に流出する懸念があること、若年層が本来望まない形で都市に流出せざるを得ない状況が続けば、東京一極集中や少子化の是正が更に困難になることを最後につけ加えさせていただきます。
本日は、このような機会をいただきまして、ありがとうございました。(拍手)
5
工藤彰三(自民)
ありがとうございました。
次に、峯村参考人にお願いいたします。
この発言のページ
6峯峯村健司一般財団法人キヤノングローバル戦略研究所上席研究員/北海道大学公共政策大学院客員教授
皆さん、おはようございます。峯村です。よろしくお願いいたします。
私は、十年以上にわたり、ジャーナリストとしてワシントン、北京で最先端で取材をしてまいりました。そして、今はシンクタンクの方で米中関係を研究しております。こうした知見を基に、本日は、米中関係の現状、そして日本が取るべき戦略とは何かという辺りの私見を述べさせていただきたいと思っております。
まず、米中関係の簡単なおさらいで、今この一枚目の資料をちょっと見ていただければと思います。これは、特に対立を軸に、フォーカスに、ちょっとおさらいをしているものです。
どうしても、対中強硬のアメリカの政…
この発言のページ
7
工藤彰三(自民)
ありがとうございました。
次に、濱口参考人にお願いいたします。
この発言のページ
- (上の発言)
8濱濱口伸明神戸大学経済経営研究所教授
神戸大学の濱口伸明と申します。本日はよろしくお願いいたします。
事前提出資料はございません。
私の専門は、空間経済学という分野です。個人や企業がそれぞれの利益を最大にするように場所を選択していくときに、国全体の経済活動の空間配置がどのように構成されていくのか、また、その結果が非効率性を示しているのであれば、それを改善するためにどのように政策が実施されるべきかというようなことを研究しております。また、私は、産業構造審議会地域経済産業分科会の分科会長、その下の工場立地法検討小委員会及び地域生活維持政策小委員会の委員長も務めております。こういった場を通じまして実務的にも地域産業政策の形成に関わってきたという立場から、本改正案に関わる論点について意見を述べさせていただきます。
本改正案の中で私が関係するのは、産業用地とエッセンシャルサービスの二つです。二つの事柄を産業競争力強化の観点から取り上げるのには、共通の背景があります。
余り報じられていませんが、法人企業統計調査によれば、金融業を除く国内投資は年間約六十兆円と、現在、バブル期以降最高の水準にあります。経団連におかれましては二〇四〇年に二百兆円となる設備投資見通しを表明しており、更に投資の伸長が続くことが期待されます。
その背景にあるのは、低成長期に先延ばしにされてきた老朽化した設備の更新が進んでいること、DXやGXといった新しい技術への対応が進んでいること、経済安全保障への政策的支援効果の直接間接の波及、円安基調の定着に伴う製造業の国内回帰、さらに、米国関税政策に対応して今後計画される対米投資をサプライチェーンで支援するための国内生産拡充の必要性などです。
このように設備投資の機運が高まっていますが、生産拠点となることが期待される地方には労働力と産業用地の両方が不足する懸念があり、対応が求められています。
労働力不足の原因は多面的ですが、若年人口が大都市に流出していることに注目する必要があると私は考えています。その原因は大きく二つあって、一つ目は、質の高い雇用の不足にあることは言うまでもありません。もう一つは、生活の質の低下であり、いわゆるエッセンシャルサービスの供給不足がその一因と考えられます。
例えば、地域公共交通、典型的には鉄道地方路線やバスですが、これらが次々に廃止されていると伝えられています。地域公共交通は朝夕の高校生の通学の足です。これがなくなってしまうと通学が困難になります。子供によりよい教育を受けさせたい若い親が子の高校進学を機に都市に出てしまうと、若年層の人口流出は親子二世代で起こります。
若者世代において、地元志向が強い人は少なくありません。エッセンシャルサービスの供給が維持されて生活の質が保たれれば、若年層が意に沿わない移住をする必要がなく、よい仕事を得て住みたい場所に住み続ける選択肢を提供することができます。
これまでエッセンシャルサービスの供給維持は移動可能性が低い高齢者の生活改善という視点で語られることが多く、その視点はもちろん引き続き重要です。加えて、日本全体で設備投資が上向きに転じたことを潮目の変化と捉えて、移動可能性が高い若者の選択肢を増やして労働力不足のボトルネックを緩和するという産業政策としての視点を加えてエッセンシャルサービスの供給維持を支援することに、本改正案の意義があるのではないかと思います。
なお、人口が少ない地域でエッセンシャルサービスの供給を維持するには、より少ない人員で商品、役務を提供するという省力化の視点が不可欠です。審議会では、事業を多角化、広域化する等の組織革新、DXを取り入れた技術革新、働く人が多様な役割を担う多能職化等の方向性が各地域において検討されてまいりました。加えて、地域の実情を踏まえて様々な工夫を凝らした取組がボトムアップで提案されることを期待して、一定の基準を満たす取組を認証する制度を新たに取り入れることを検討してまいりました。認証された事業者には、補助金や融資保証等の公的な支援、金融機関からの新たな資金調達、ほかの事業体とのアライアンスなどに取り組みやすくなる効果があると期待されます。
なお、地元に残る若者がよい職を得て働き続けるためには、技能を習得し発展させる機会が必要です。そのためには、地域の中で人材交流の機会があることや、対面、オンラインの両方を通じて地域の外の人との知識交流が行われることが重要だと考えます。
エッセンシャルサービスの供給維持等で地方からの若年層人口の流出に歯止めをかけることも重要ですが、若者のモチベーションを高めるような人材育成を併せて行うことをお願いしたいと思います。
次に、地方において不足が懸念される産業用地について申し上げます。
経済産業省が自治体を調査したところ、五年以内に八割の自治体で産業用地が不足するとのことでした。
地方が今後の設備投資の受皿になるためには、この状況を打開するために、できることを全てやる必要があります。
そのうちの一つは産業団地を新規に造成することですが、翻って、一九九〇年代以降、工場の海外移転が続く中で、新規の産業団地の造成はほとんど行われてきていません。地域経済産業分科会の報告書は、この三十年ほどの期間の空白によって、自治体では産業用地提供を担う人材とノウハウが失われてきたと指摘しています。
したがって、この間に海外で産業団地の経営の実績を積んできた民間企業の参加が必要ではないかと思われますが、土地の売却益への課税に、売却先が自治体と民間企業の場合で課税に差があるため、民間の参入が進まないことが指摘されています。民間企業が不利な扱いを受けないような制度設計が必要だと考えます。
仮に新規に産業用地を造成することが難しい場合でも、やれることはあります。
工場立地法で、敷地面積が九千平方メートル、これは百メートルの正方形よりもやや狭く、サッカーコートの約一・三倍に当たりますけれども、この面積以上の工場に対して、敷地面積の二〇%以上を緑地にする緑地面積率規制が課されています。
本改正案は、この規制を自治体が指定する条件に合致する工場において緩和することを規定しており、そうすることによって、既存の工場の建屋を広げて生産設備を拡張することができたり、新規に建造する工場に必要な敷地面積を少なくして投資コストを抑制したりすることができます。
ただし、この政策を進めるに当たって、工場立地法の原則、すなわち、工場立地が環境の保全を図りながら行われなければならないという理念に立ち返り、規制の緩和が周辺住民の居住の快適さを損ねることがないように十分な配慮が必要なことは言うまでもありません。
こうした観点から、国が一律の基準で規制緩和を推し進めるのではなく、住民に対して直接説明責任を負う自治体が、国が設定する一定の枠組みの下で、規制緩和が可能な区域と規制を緩和する工場を指定し、緩和の程度を決定する裁量を持つことが適切だと考えます。
立地政策に関して、本改正案の関連で二つの点を追加させていただきます。
第一に、既に社会のインフラに位置づけられているデータセンターについては、リスク分散の観点から様々な地域への立地が検討されていると聞いております。データセンターの排熱問題に効率的な水冷方式が検討されているところ、工場ではないデータセンターへの工業用水の供給が渇水時に劣後する可能性があります。このため、データセンターにも工業用水の供給を義務づけるよう制度を改めることによって、現在未利用地のある工業団地にデータセンターの立地を促すことは、産業基盤を整備する上で重要です。
第二に、企業立地獲得競争になりますと、財政力の弱い自治体は産業用地の供給や企業誘致政策としての固定資産税の減免を実施することができず、自治体間の格差が更に拡大する懸念があります。産業用地整備のための制度融資や企業誘致で生じる財源損失を補填するなどの国が実施する制度において、財政力の弱い自治体への国の支援をより手厚くする配慮は必要だと思います。このような施策は、格差是正という意味合いもありますが、より広い範囲で産業用地の供給を増やすという観点からも意味があると考えます。
本日述べた人材と産業用地について必要な政策が講じられない場合に、今後計画される設備投資が海外に流出する懸念があること、若年層が本来望まない形で都市に流出せざるを得ない状況が続けば、東京一極集中や少子化の是正が更に困難になることを最後につけ加えさせていただきます。
本日は、このような機会をいただきまして、ありがとうございました。(拍手)
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工藤彰三(自民)
ありがとうございました。
次に、宮澤参考人にお願いいたします。
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10宮宮澤伸日本商工会議所産業政策第一部長
ただいま御紹介いただきました日本商工会議所の宮澤でございます。
平素より、経済産業委員会の皆様におかれましては、中小企業に多大なる御支援を賜っておりますことを、この場をかりて御礼を申し上げたいと思います。また、このような御説明の機会をいただいたことも併せて御礼申し上げたいと思います。
私ども商工会議所は、御案内の方もいらっしゃるかと思いますが、全国五百十六か所に設置されておりまして、地域の小さな企業からまさに地域経済を牽引する中堅・中小企業の皆さんも多く御加盟いただいておりまして、本日はその立場から、本改正法案、大いに期待するという立場で御説明をした…
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工藤彰三(自民)
ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
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