小泉悠東京大学先端科学技術研究センター准教授

2025年2月19日・第217回国会 参議院 外交・安全保障に関する調査会 第2号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 24 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 90 発言)

ヤルタ二・〇という言葉は多分にはやり言葉ではありますけれども、要するに、冷戦後にロシアが言ってきた多極世界という話がいよいよ実現しつつあるという手応えは持っていると思うんですね。ただ、多極世界というのは、要するに、アメリカ中心世界を解体して何か別の世界をつくるということなんですよ。それ自体はとてもいい話だと思うんですけど、その多極世界というのは、無極世界とはロシアは言わないんですよね。幾つかの極、グレートパワー、ロシア語で言えばデルジャーヴァがいて、それがそれぞれの地域を取り仕切る、その地域を取り仕切っている極同士はけんかしないという世界なので、どちらかというとこれは勢力圏分割構想みたいなものに近かったわけです。少なくともプーチン政権下ではそういう話にどんどん変わっていってしまったと。

今、そのヤルタ二・〇というのは、だから、結局、その勢力圏分割をするメンバーを変えて同じようなことをしましょうと、さっき広瀬先生がおっしゃった第二次世界大戦後の勢力圏分割をもう一回やりましょうというふうにロシア側からは見えているんだろうと思います。そのときに、当然のことながら、旧ソ連地域はロシアのものですよねと。

あと、もう一個忘れてはいけないのは、二〇二一年の十二月にロシアは具体的な提案をNATO本部とアメリカ政府両方に対して送っていますよね。特に、あの中のアメリカ向け条約案の中では非常に具体的なことを言っていて、旧ソ連にはNATOを拡大しないと約束しろと言っているし、それから東ヨーロッパのNATO加盟国からは米軍を撤退させろと、合同軍事演習もするなと。つまり、東ヨーロッパは緩衝地帯にしろと、NATOは西ヨーロッパ以降でやりなさいという話なんですよね。そういうような形のヤルタ二・〇というのをロシアは多分構想しているだろうと思います。

ただ、そこに中国が、当然もうアジアは中国のものでいいやってロシアは思っているわけですけど、今のウクライナ戦争そのものの具体的な停戦プロセスに中国が入ってきそうかというと、余りロシア語圏から見た情報の中ではそういう期待論というのはない気がしますね。

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