御紹介いただきました筑波大学長永田と申します。
本日、提案されている新しい日本学術会議の法案に対して、賛成の立場から、以下、意見を陳述させていただきます。
その前に、学術会議とはどのような組織であるかということを考えなければなりませんし、それに至っては、学術とは一体何なのかということを一回考え直してみたいと思います。
学術は、基本的には人文社会系、理工系、生物系、その他複合的な領域、幅広い領域における研究者の独創的でそれからオリジナルな知的活動とその成果のことを指しているということです。
研究者は、これらの幅広い領域で、おのずから自分の知的好奇心と自由な発想に基づいて、個人で、あるいは他者と、他者というのは、他の研究者であったり、産業界であったり、時には官庁であったり、そういったところと協働して、基礎研究、応用研究、開発研究、その類いにいそしんで、真理の探求及び価値の創造につなげる試みをなしているというわけであります。
研究者の知的な活動からは、当然ながら、知的好奇心が満足されるということもありますけれども、それ以上に、技術開発はやがて社会を変革するものにつながる場合がたくさんあります。それは、産業の発展であったり、経済の成長であったり、生活の質の向上や、はたまた文化的な変容にまで及ぶ場合があるということであります。AIの例を取っていただければ非常に分かりやすいかと思いますが、それが現実に今もう起こっているということです。
学術には国境がありません。この成果は世界全体に波及し得る人類全体の財産であるということです。それから、研究者の仲間は世界中にいるわけであって、その中では、競争と共創、これはコンペティションとコラボレーションという意味ですが、その中で日々これをなしていくということであります。
現在、インテグリティー、セキュリティーという難しい問題がありますけれども、研究者は、それに鑑みながら、その成果を生み出して、国の在り方あるいは社会、社会の課題の解決、生活の質の向上に資するような研究を続けているということですし、目的は、さっき言ったように、国はもとより世界の人々のウェルビーイングに資するような課題を解決しようともしていると考えて間違いないと思います。
本法案では、ここは読ませていただきますが、学術会議の基本理念を、「学術に関する知見が人類共有の知的資源であるとともに経済社会の健全な発展の基盤となるものであることに鑑み、世界の学界と連携協力して学術の向上発達及び学術に関する知見の活用の推進を図り、もって人類社会の持続的な発展及び国民の福祉の向上に貢献するものとする。」と規定しています。まさに、去年の十二月二十日に有識者会議から出てきた最終報告書の冒頭にあるわけですが、「世界最高のナショナルアカデミーを目指して」という理念を持って書かれております。私としてはこの理念に大いに賛同するところです。
次に、四点ほど、この法案の中身について懸念されていると仄聞していることについて、私なりの考えを申し上げます。
まず第一は、今次の法案では、学術会議の独立性が確保されていない、ナショナルアカデミーとしての活動に制約があるのではないかという御意見があるかと思います。
これは、一番の大本は、現行の第三条、独立して云々の職務を行うという規定が新しい法案にはないということに端を発していると思いますが、それはなくて当然でありまして、現行の学術会議は国の機関として置かれているためこういう文言があります。したがって、特殊法人となる今次の法案では、国から独立した法人格を持つ法人として職務を行うということを逆に明確にしているということだと思います。
諸外国のナショナルアカデミーが、二つの機能がありまして、多くの場合は提言機能と顕彰機能というのがあります。残念ながら、日本の学術会議には、提言機能はありますが顕彰機能がありません。それも、顕彰機能は、JST、JSPS、それから日本学士院に今付与されているわけであります。
にもかかわらず、第一条で、「我が国の科学者の内外に対する代表機関」として規定してナショナルアカデミーであるというふうに位置づけていて、ついでに、第二条第二項では、国は、学術会議の「運営における自主性及び自律性に常に配慮しなければならない。」となっています。
したがって、本法案は、学術会議がナショナルアカデミーとして独立して活動することを尊重しているというふうに読み取ることができます。
最後に、この同じラインで、提言ということを申し上げたので申し上げておくと、法文の後ろの方に勧告という言葉が出てきますが、この勧告という言葉が若干この法文にふさわしくないと思っております。勧告というのは、行政府が他の組織あるいは他の行政府に対して行う権限でありまして、今般、これが政府の機関でなくなるということですから、勧告を行うということができるかどうか、皆さんで御議論を是非いただきたいと思います。
第二に、学術会議の会員の選任方法です。
法案では、会員の選任が、会員から選ばれる会員候補者選定委員会が分野別の業績審査委員会等を経て会員候補者を絞っていって、総会の議決で決定するとなっております。これは、現行法の内閣総理大臣が任命という手続でありますけれども、これを外したものでありまして、より学術会議による会員選任の自主性、自律性が高まっていると考えてよいかと思います。
ただし、学術会議の会員にはあらゆる意味でのダイバーシティーが必要であり、それを多分担保するものとして会員候補者選定委員会があるんだと思われます。会員、大学、研究機関、学会、経済団体、あるいは地域、民間の企業、そういったものに、もちろんジェンダーも含めてですが、含めて幅広に推薦者を選んでいくというプロセスに必要な組織であると思っております。
次に、第三点ですが、内閣府に設置され、会員以外の者で構成される学術評価委員会、これが政府の管理につながるのではないかということでありますが、よく読んでみると、その内容はそうとは読み取れません。
明快に申し上げて、中間的な活動計画とその報告をするというのはどこでも当たり前なんですけれども、必要があると認めたときに学術会議に意見を述べることができるとなっておりまして、それは当たり前のことでしょう。改善は他者からの批判を受けてするものでありますし、自己批判も当然のことながらある中で、それを助長する、助けるという役目があります。政府が管理するというほど強い権限を、ここには表現されていません。
それから、学術会議は国から独立した特殊法人となりますから、経営がほとんど国の支援によるというのが尋常ではない。多くの諸外国のナショナルアカデミーが自前で財源を確保しているという点、これに鑑みますと、ちょっと違う状況のナショナルアカデミーになります。
しかし、外国のアカデミーも、ある事象ごとによっては引き受けるという形で、仕事の対価としてお金を国からいただいているという現状もあるので、それを鑑みて、今般、今次の法案では国が一定の費用を措置するという今条件になっているかと思いますが、できれば将来、国からは離れて、研究者の集団として、独立した自主自律の下の会議に育っていっていただきたいと思っております。
最後に、監事について、独立性を損なうのではないかという御意見があることを仄聞しております。
学術会議の会議等が適正に行われているかいないかということを、公正中立に行われているかどうかということを、監事というのは学術会議からは独立した形で見るものであって、そういう専門知識を持った者がやるべきものである。これは多くの会社や法人組織において当然のことであって、第三者としての監事の設置というのは非常に重要なものであります。一般の企業や国立大学法人でも通例のことですし、今次、内閣総理大臣が監事の任命をするということは、学術会議から独立して監事業務が行える権限と資格を与えるものです。
一言苦言を呈せば、任命者が監事を通じて学術会議に影響を及ぼすという懸念が正しい、学術会議から出ている懸念ですが、だとすれば、学術会議が選んだ監事は自由に操れるというふうに読み取ることができます。これは大変いけないことでありまして、監事は、物が適正に行われているかを見る役割であって、内容についてコメントするのは忌避されるべきものであるということであります。
以上、私から四点述べさせていただきました。
どうもありがとうございました。(拍手)
2
大岡敏孝(自民)
御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
引き続き、理事の補欠選任についてお諮りいたします。
ただいまの理事辞任に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
この発言のページ
3
大岡敏孝(自民)
御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
それでは、理事に市村浩一郎君を指名いたします。
――――◇―――――
この発言のページ
4
大岡敏孝(自民)
内閣提出、日本学術会議法案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人として、筑波大学長永田恭介君、東京大学卓越教授、元日本学術会議会長(第25期)梶田隆章君、政策研究大学院大学客員教授、国際学術会議フェロー有本建男君、弁護士、日本弁護士連合会憲法問題対策本部副本部長福田護君、以上四名の方々から御意見を承ることにいたしております。
この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、本当にお忙しい中、このように委員会にお運びくださいまして、ありがとうございました。
本日、先生方の忌憚のない御意見は、私たちの審議の重要な参考にさせていた…
この発言のページ
- (上の発言)
5永永田恭介筑波大学長
御紹介いただきました筑波大学長永田と申します。
本日、提案されている新しい日本学術会議の法案に対して、賛成の立場から、以下、意見を陳述させていただきます。
その前に、学術会議とはどのような組織であるかということを考えなければなりませんし、それに至っては、学術とは一体何なのかということを一回考え直してみたいと思います。
学術は、基本的には人文社会系、理工系、生物系、その他複合的な領域、幅広い領域における研究者の独創的でそれからオリジナルな知的活動とその成果のことを指しているということです。
研究者は、これらの幅広い領域で、おのずから自分の知的好奇心と自由な発想に基づいて、個人で、あるいは他者と、他者というのは、他の研究者であったり、産業界であったり、時には官庁であったり、そういったところと協働して、基礎研究、応用研究、開発研究、その類いにいそしんで、真理の探求及び価値の創造につなげる試みをなしているというわけであります。
研究者の知的な活動からは、当然ながら、知的好奇心が満足されるということもありますけれども、それ以上に、技術開発はやがて社会を変革するものにつながる場合がたくさんあります。それは、産業の発展であったり、経済の成長であったり、生活の質の向上や、はたまた文化的な変容にまで及ぶ場合があるということであります。AIの例を取っていただければ非常に分かりやすいかと思いますが、それが現実に今もう起こっているということです。
学術には国境がありません。この成果は世界全体に波及し得る人類全体の財産であるということです。それから、研究者の仲間は世界中にいるわけであって、その中では、競争と共創、これはコンペティションとコラボレーションという意味ですが、その中で日々これをなしていくということであります。
現在、インテグリティー、セキュリティーという難しい問題がありますけれども、研究者は、それに鑑みながら、その成果を生み出して、国の在り方あるいは社会、社会の課題の解決、生活の質の向上に資するような研究を続けているということですし、目的は、さっき言ったように、国はもとより世界の人々のウェルビーイングに資するような課題を解決しようともしていると考えて間違いないと思います。
本法案では、ここは読ませていただきますが、学術会議の基本理念を、「学術に関する知見が人類共有の知的資源であるとともに経済社会の健全な発展の基盤となるものであることに鑑み、世界の学界と連携協力して学術の向上発達及び学術に関する知見の活用の推進を図り、もって人類社会の持続的な発展及び国民の福祉の向上に貢献するものとする。」と規定しています。まさに、去年の十二月二十日に有識者会議から出てきた最終報告書の冒頭にあるわけですが、「世界最高のナショナルアカデミーを目指して」という理念を持って書かれております。私としてはこの理念に大いに賛同するところです。
次に、四点ほど、この法案の中身について懸念されていると仄聞していることについて、私なりの考えを申し上げます。
まず第一は、今次の法案では、学術会議の独立性が確保されていない、ナショナルアカデミーとしての活動に制約があるのではないかという御意見があるかと思います。
これは、一番の大本は、現行の第三条、独立して云々の職務を行うという規定が新しい法案にはないということに端を発していると思いますが、それはなくて当然でありまして、現行の学術会議は国の機関として置かれているためこういう文言があります。したがって、特殊法人となる今次の法案では、国から独立した法人格を持つ法人として職務を行うということを逆に明確にしているということだと思います。
諸外国のナショナルアカデミーが、二つの機能がありまして、多くの場合は提言機能と顕彰機能というのがあります。残念ながら、日本の学術会議には、提言機能はありますが顕彰機能がありません。それも、顕彰機能は、JST、JSPS、それから日本学士院に今付与されているわけであります。
にもかかわらず、第一条で、「我が国の科学者の内外に対する代表機関」として規定してナショナルアカデミーであるというふうに位置づけていて、ついでに、第二条第二項では、国は、学術会議の「運営における自主性及び自律性に常に配慮しなければならない。」となっています。
したがって、本法案は、学術会議がナショナルアカデミーとして独立して活動することを尊重しているというふうに読み取ることができます。
最後に、この同じラインで、提言ということを申し上げたので申し上げておくと、法文の後ろの方に勧告という言葉が出てきますが、この勧告という言葉が若干この法文にふさわしくないと思っております。勧告というのは、行政府が他の組織あるいは他の行政府に対して行う権限でありまして、今般、これが政府の機関でなくなるということですから、勧告を行うということができるかどうか、皆さんで御議論を是非いただきたいと思います。
第二に、学術会議の会員の選任方法です。
法案では、会員の選任が、会員から選ばれる会員候補者選定委員会が分野別の業績審査委員会等を経て会員候補者を絞っていって、総会の議決で決定するとなっております。これは、現行法の内閣総理大臣が任命という手続でありますけれども、これを外したものでありまして、より学術会議による会員選任の自主性、自律性が高まっていると考えてよいかと思います。
ただし、学術会議の会員にはあらゆる意味でのダイバーシティーが必要であり、それを多分担保するものとして会員候補者選定委員会があるんだと思われます。会員、大学、研究機関、学会、経済団体、あるいは地域、民間の企業、そういったものに、もちろんジェンダーも含めてですが、含めて幅広に推薦者を選んでいくというプロセスに必要な組織であると思っております。
次に、第三点ですが、内閣府に設置され、会員以外の者で構成される学術評価委員会、これが政府の管理につながるのではないかということでありますが、よく読んでみると、その内容はそうとは読み取れません。
明快に申し上げて、中間的な活動計画とその報告をするというのはどこでも当たり前なんですけれども、必要があると認めたときに学術会議に意見を述べることができるとなっておりまして、それは当たり前のことでしょう。改善は他者からの批判を受けてするものでありますし、自己批判も当然のことながらある中で、それを助長する、助けるという役目があります。政府が管理するというほど強い権限を、ここには表現されていません。
それから、学術会議は国から独立した特殊法人となりますから、経営がほとんど国の支援によるというのが尋常ではない。多くの諸外国のナショナルアカデミーが自前で財源を確保しているという点、これに鑑みますと、ちょっと違う状況のナショナルアカデミーになります。
しかし、外国のアカデミーも、ある事象ごとによっては引き受けるという形で、仕事の対価としてお金を国からいただいているという現状もあるので、それを鑑みて、今般、今次の法案では国が一定の費用を措置するという今条件になっているかと思いますが、できれば将来、国からは離れて、研究者の集団として、独立した自主自律の下の会議に育っていっていただきたいと思っております。
最後に、監事について、独立性を損なうのではないかという御意見があることを仄聞しております。
学術会議の会議等が適正に行われているかいないかということを、公正中立に行われているかどうかということを、監事というのは学術会議からは独立した形で見るものであって、そういう専門知識を持った者がやるべきものである。これは多くの会社や法人組織において当然のことであって、第三者としての監事の設置というのは非常に重要なものであります。一般の企業や国立大学法人でも通例のことですし、今次、内閣総理大臣が監事の任命をするということは、学術会議から独立して監事業務が行える権限と資格を与えるものです。
一言苦言を呈せば、任命者が監事を通じて学術会議に影響を及ぼすという懸念が正しい、学術会議から出ている懸念ですが、だとすれば、学術会議が選んだ監事は自由に操れるというふうに読み取ることができます。これは大変いけないことでありまして、監事は、物が適正に行われているかを見る役割であって、内容についてコメントするのは忌避されるべきものであるということであります。
以上、私から四点述べさせていただきました。
どうもありがとうございました。(拍手)
6
大岡敏孝(自民)
ありがとうございました。
次に、梶田参考人にお願いいたします。
この発言のページ
7梶梶田隆章東京大学卓越教授/元日本学術会議会長(第25期)
よろしくお願いいたします。
それでは、あらかじめ提出してあります資料に基づきまして発言をさせていただきます。
私の方では、学術会議法案への懸念ということでお話しいたします。
まず、二ページ目ですけれども、日本学術会議と各国のナショナルアカデミーという観点で見ていきたいと思います。
十七世紀以降、各国でアカデミーが設立されて以降、独立と自律を旨とする営みとしての学術を社会の中に備えてまいりました。政府などから独立し、自律的に発展する学術がもたらす多様な見解によって、我々の社会や世界の理解が豊かになり、そのことを通じて人類の福利への貢献が期待できる。…
この発言のページ
8
大岡敏孝(自民)
ありがとうございました。
次に、有本参考人にお願いいたします。
この発言のページ