ありがとうございます。
まず、財産権の保障の観点から問題があるという点につきましてですけれども、この点はまさにそのとおりだろうと思っております。
私が理解するところでは、先ほども申し上げたところですけれども、損害賠償債権は、契約に基づく契約不適合を理由とする損害賠償債権であり、契約当事者が持つもの、債権者が持つものであります。それを、目的物である所有権という物権を移転したことによって、何の合意もなく当然についていくものではないということになりますので、当然承継は、それを意思に基づかず、強制的に移転させるということになります。
それは、一般論といたしましても、金銭債権を持っている人が、私が反対だと言っても、当然にほかの人に移さなければならない。更に言うと、両当事者が、それはやめましょうと言ってもできないという仕組みを要求するわけですので、それは一般的に、まさに財産権の保障としてどうかということがあります。
本日の御議論を聞きまして、より明確になったように思ったんですけれども、譲受人あるいは旧区分所有権者の財産権を侵害することは問題はない、むしろ修理を実現するためにはそのぐらい踏みつけてもいいんだという御議論だとすると、それはやはり正当化が非常に困難ではないかというふうに思っているところであります。
それから、今回、中野先生が第十六回の議事録を出してくださって非常にありがたいと思いましたけれども、この問題は、むしろ第十四回及び第十五回において非常に多く議論もされておりますので、御紹介としましては、むしろそちらも御覧いただきたいのでございます。
その中において、例えば、譲渡がされる場合というのは様々な場面がございます。典型的には、まだ欠陥なんかが分からない状態で、ちゃんとしたものだとして譲渡をしたところ、実はその後分かった、じゃ、損害賠償債権はどうなるのかというような話のときには非常に分かりやすいと思うんですけれども、そういう場合ばかりではございません。既に欠陥が明らかになって、修理をするのか損害賠償なのかとかいう話になっているところで譲渡をしたということもありますし、さらには、放っておくと危ないのでとにかく補修してしまおうというので補修した後、譲渡するということもございます。そのときに、しかし、損害賠償債権がなくなるわけではございませんので、損害賠償はできるわけであります。
そういう様々な場面がある中で、譲渡契約の当事者の合意に委ねることもなく強制的に移転させるということが本当にいいのかという問題がありますし、さらには、欠陥が分かった段階で売らざるを得ないということであると、果たして、損害賠償債権自体を奪われるだけではなくて、適正に区分所有権を譲渡できるかという、その部分における財産権の問題というのも指摘されております。
ですから、多様な場面を考えて規律を設ける必要があるということでございます。必要性があるという場面があるとしても、それだけを念頭に規律を置くということに対しては慎重であるべきだということになります。
しかし、放っておいていいのかというのは一方で問題で、財産権の侵害になっても、それを上回る政策判断というのがあり得ないのかということでございますけれども、政府案の下におきましても、これは齊藤先生がお話しになったところですけれども、規約で書いておくということは考えられるわけで、別段の意思表示については、別段の意思表示はしないという形で規約を定めれば、後で抜ける人も既に拘束されている状態ですので、及んでいくと考えられます。
それから、損害賠償債権そのものをどうするかという問題がございますけれども、ここは実は解釈の余地があるところではございますけれども、やはり、共有物の管理に関して、管理費をどうするか、修繕の積立金なり修繕費をどうするかという問題がございまして、その原資にこれを充てるというような規約の定めをすることで、管理の問題として引きつけて規定することもできるんじゃないか。
直ちにそれをやればいいというのではなかなか進みませんので、モデルというか、標準管理規約に書いていただければ、こういう形にすればできるんだということが明らかになって、進むのではないかというふうに考えられます。さらに、私、個人的には、区分所有権の譲渡契約のモデルなどについても考えていった方がいいんじゃないかというふうに思っておるところです。
それから、さらに、もしも、しかし、債権があるということで非常に濫用的な行使をする、吹っかけるとか、そういうことに対しては権利濫用という規律もございますので、政府案の下でも一定の配慮は十分される、また、そのための次のステップをこそ取っていただきたいというふうに考えているところでございます。標準管理規約の用意とかということを考えております。
以上でございます。
20
井上貴博(自民)
次に、長友よしひろ君。
この発言のページ
21
長友よしひろ(立憲)
立憲民主党、長友よしひろです。
本日は、参考人の先生方、貴重な御意見ありがとうございました。また、これまでに、今生じている課題について、それぞれのお立場で解決に向けて御尽力いただいてきたこと、私からも謝意を申し上げたいと思います。
そこで、今日、大変貴重な御意見をいただいたわけでございますが、今回の改正案について、我々はこれまで数々提言もしてきたところでありまして、課題や不足部分の一部、これらが補われ、一定の前進が図られるものと、今改正案については期待をし、評価もしている立場でございます。
その上で、本会議での代表質問やこれまでの委員会での質疑でも…
この発言のページ
22齊齊藤広子横浜市立大学国際教養学部教授
大変重要な課題だと思っております。
私、法制審議会の委員として出たときに、管理組合の方が一括してやはりこういうものを請求できるようにというふうに初めは考えたところでございますが、法制審議会の中で私としては丁寧な丁寧な議論を繰り返してきた中で、やはり財産権の問題からこういったことは難しいというふうにおっしゃられました。しかし、国民の皆さん、区分所有者、管理組合のことを考えたら難しいというのだけでは置いていられないので、それでは規約で何とかできないですか、予防のために売買契約で何とかできないですかということで、規約でしっかり対処していきましょうというふうに…
この発言のページ
- (上の発言)
23沖沖野眞已東京大学大学院法学政治学研究科教授
ありがとうございます。
まず、財産権の保障の観点から問題があるという点につきましてですけれども、この点はまさにそのとおりだろうと思っております。
私が理解するところでは、先ほども申し上げたところですけれども、損害賠償債権は、契約に基づく契約不適合を理由とする損害賠償債権であり、契約当事者が持つもの、債権者が持つものであります。それを、目的物である所有権という物権を移転したことによって、何の合意もなく当然についていくものではないということになりますので、当然承継は、それを意思に基づかず、強制的に移転させるということになります。
それは、一般論といたしましても、金銭債権を持っている人が、私が反対だと言っても、当然にほかの人に移さなければならない。更に言うと、両当事者が、それはやめましょうと言ってもできないという仕組みを要求するわけですので、それは一般的に、まさに財産権の保障としてどうかということがあります。
本日の御議論を聞きまして、より明確になったように思ったんですけれども、譲受人あるいは旧区分所有権者の財産権を侵害することは問題はない、むしろ修理を実現するためにはそのぐらい踏みつけてもいいんだという御議論だとすると、それはやはり正当化が非常に困難ではないかというふうに思っているところであります。
それから、今回、中野先生が第十六回の議事録を出してくださって非常にありがたいと思いましたけれども、この問題は、むしろ第十四回及び第十五回において非常に多く議論もされておりますので、御紹介としましては、むしろそちらも御覧いただきたいのでございます。
その中において、例えば、譲渡がされる場合というのは様々な場面がございます。典型的には、まだ欠陥なんかが分からない状態で、ちゃんとしたものだとして譲渡をしたところ、実はその後分かった、じゃ、損害賠償債権はどうなるのかというような話のときには非常に分かりやすいと思うんですけれども、そういう場合ばかりではございません。既に欠陥が明らかになって、修理をするのか損害賠償なのかとかいう話になっているところで譲渡をしたということもありますし、さらには、放っておくと危ないのでとにかく補修してしまおうというので補修した後、譲渡するということもございます。そのときに、しかし、損害賠償債権がなくなるわけではございませんので、損害賠償はできるわけであります。
そういう様々な場面がある中で、譲渡契約の当事者の合意に委ねることもなく強制的に移転させるということが本当にいいのかという問題がありますし、さらには、欠陥が分かった段階で売らざるを得ないということであると、果たして、損害賠償債権自体を奪われるだけではなくて、適正に区分所有権を譲渡できるかという、その部分における財産権の問題というのも指摘されております。
ですから、多様な場面を考えて規律を設ける必要があるということでございます。必要性があるという場面があるとしても、それだけを念頭に規律を置くということに対しては慎重であるべきだということになります。
しかし、放っておいていいのかというのは一方で問題で、財産権の侵害になっても、それを上回る政策判断というのがあり得ないのかということでございますけれども、政府案の下におきましても、これは齊藤先生がお話しになったところですけれども、規約で書いておくということは考えられるわけで、別段の意思表示については、別段の意思表示はしないという形で規約を定めれば、後で抜ける人も既に拘束されている状態ですので、及んでいくと考えられます。
それから、損害賠償債権そのものをどうするかという問題がございますけれども、ここは実は解釈の余地があるところではございますけれども、やはり、共有物の管理に関して、管理費をどうするか、修繕の積立金なり修繕費をどうするかという問題がございまして、その原資にこれを充てるというような規約の定めをすることで、管理の問題として引きつけて規定することもできるんじゃないか。
直ちにそれをやればいいというのではなかなか進みませんので、モデルというか、標準管理規約に書いていただければ、こういう形にすればできるんだということが明らかになって、進むのではないかというふうに考えられます。さらに、私、個人的には、区分所有権の譲渡契約のモデルなどについても考えていった方がいいんじゃないかというふうに思っておるところです。
それから、さらに、もしも、しかし、債権があるということで非常に濫用的な行使をする、吹っかけるとか、そういうことに対しては権利濫用という規律もございますので、政府案の下でも一定の配慮は十分される、また、そのための次のステップをこそ取っていただきたいというふうに考えているところでございます。標準管理規約の用意とかということを考えております。
以上でございます。
24中中野明安丸の内総合法律事務所弁護士
中野でございます。
私が先ほど申し上げました御説明の中の議論の状況の中で、不都合が生じることについての具体的な事例というのは結局出てこなかったという点がございます。
それからもう一つ、これは神崎先生から出された資料の一番最後のところ、「あるべき法改正」の部分にある十五条の一項のところ、これは民法上で言う従物理論という形で、主物に従って従物が処分されていく、これは民法の原則の中にも当然入っているものでございます。そのような処分の仕方ということも従来の民法にも入っているということでございまして、さほど不都合があるものとは考えておりません。
以上でござい…
この発言のページ
25神神崎哲欠陥住宅被害全国連絡協議会幹事長
まず、正当化が困難であって不都合が生じるということなんですけれども、場面が不明であると言わざるを得ません。譲渡人の財産権の保護を言っていると考えられますけれども、具体的にどのような場面で財産権が侵害されるのか、どのような不当な結論が招かれるのかが全く分かりません。
私たちが四月三日に立憲民主党の国交・法務合同委員会でヒアリングを受けた際、法務省の職員が、我々の唱える当然承継案を遡及させると不都合が生じるという旨の発言をされたために、具体的な不都合性についてペーパーを出すように求められていたんですけれども、その後、そのペーパーが出されたという話は聞き及ん…
この発言のページ
26
長友よしひろ(立憲)
ありがとうございました。
ちょっと時間がなくなってしまったので。
今のお話を総合すると、私なりに解釈すると、当然承継を行うことができたならば、それによって、今住んでいる方、現の居住者で困られている方が救われるというような御意見だったというふうに認識しました。逆に、当然承継ということを行うことによって、元々の旧区分所有者の財産権というものが侵害されるおそれがあるということで、現と旧の、ここの差なんだということが明確になったと思います。
そこで、先ほど御意見いただいた中、答弁の中でもあったんですけれども、標準管理規約のことについて聞きたいと思います。
…
この発言のページ