東野篤子筑波大学教授

2025年3月13日・第217回国会 参議院 予算委員会公聴会 第1号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 187 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 231 発言)

三浦先生、貴重な質問をどうもありがとうございます。

経済、エネルギーでいいますと、やはりこの全面侵攻の前後で何が一番変わったのかという話と、飯田先生の話にも関連するかと思いますけれども、やはりロシア依存、エネルギーのロシア依存の低減、脱ロシア化と言われるですね、そういった現象かというふうに思います。

先生方も御存じでいらっしゃると思いますけれども、戦争が、全面侵略が始まる前のEUは非常にロシアに強いエネルギー上の依存を保っていた。これが、エネルギーの上で非常に厳しいですとか、あるいは、ロシアに単体で依存をするということはEUの経済安全保障上もエネルギー安全保障上も非常に危険だと言われていながらも、例えばその当時のドイツのメルケル首相の考えであれば、経済的な相互依存を強めることによって安全保障上のリスクも低減することができる、だからロシアとの経済的な関係はむしろ強化することによってヨーロッパの安全保障全体を守っていかなければいけないと、信念に近いこういった考え方がおありだったと思います。

ところが、経済的な関係をロシアと強化したところで、二〇一四年のロシアによるクリミアの占領はいずれにしろ起きていたわけですし、ノルドストリームの2の計画はその後に計画されていたものでありますから、経済的な相互依存を強めても、それが結果的には軍事的な抑止力にはならないということがヨーロッパの教訓として残されたのではないかと思います。

そして、現在、ロシアに対して制裁を行い、またロシアからのエネルギーを、まあ一〇〇%とは行かないまでも買わないようにする、あるいは石油にプライスキャップを付けるというような様々な措置を行っていますけれども、今、脱ロシア化、経済の脱ロシア化とかエネルギーの脱ロシア化は不可逆的な形で進んではいるものの、やはりこれをゼロにすることができないという苦しさは非常に大きいのではないかということなんですね。

例えば、それは国によっても違うわけで、よくハンガリーのような国が親ロシア的であるというようなことを言われますけれども、あれはオルバン首相がロシアが好きということ以上に、ハンガリーはロシアからのパイプラインで石油を得ていて、それがなければハンガリーの経済が立ち行かないというような現実もございます。

ハンガリーだけではなくて、例えばスロバキアのような国、あるいは、チェコは大変ロシアに対する厳しい立場を取り、そしてウクライナに対して非常に協力的なんですけれども、そのチェコですらやはりロシアへのエネルギー依存を断ち切ることができないという状況にあります。そのチェコの方々に聞き取りに参りますと、そういうふうにロシアからのエネルギー依存を完全に断ち切ることができないからこそ、その代償としてではないですけれども、その代わりにウクライナ支援をより手厚くやらなければならないというような、非常に苦しい立場もよく表明されている状況でございます。ですので、脱ロシア化は進んだ、しかしそれが一〇〇%ではないということに様々な問題も出ているということであります。

また、対中関係に関しても非常に大きなその含意があったと思います。つまり、その中国との関係に関しては、その戦争が始まる前までは、特に関係を深めたいドイツのような国とそれに対して批判的な国々があったという構図があったわけですけれども、これが、その対立状況がより深まったとも言えるわけですね。

つまり、ヨーロッパとしては、ロシアに対して全面的に今対峙している状況であり、脱ロシア化はどうしても進めなければならない。しかし、そこでロシアとヨーロッパが対峙しているときに中国と対峙することというのは本当にできるのかと。それは経済面であっても二方面が本当にできるのかということで、その中国との関係はむしろ強化していかなければならないという見解と、しかし、中国はロシアの継戦能力を様々な形で支えている、やはり中国も、脱中国しなければ、EUに関しても、中国に関して脱中国化を進めなければならないのではないかということで、大変意見が混乱しています。

なので、古い問題が根強くある一方で、その問題の性質が徐々に変わっていっているという認識を私は持っております。

前後のやりとり

183の発言を見る

191の発言を見る